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Genesis of Deicide  作者: キキ
第二章 神格継承戦争/Deicide-Game
27/60

構文廃棄層より叫ぶ者たち

「語ることが許されなかったこの喉で、

俺たちは、語られた世界に殴りこむ」


選抜戦・第四戦域開帳。

語義候補たちが次なる構文試練に備えるそのとき、

異常座標から未登録の演算波形が割り込む。


【強制干渉:構文廃棄層より演算波形逆流】

【候補認定外存在:識別コード不明/語義未記録】

【対象分類:《廃語群》】


現れたのは、語義未所持者たち――

選抜前に語る資格を剥奪され、構文記録から削除された者たちだった。

廃棄処理されたはずの者たち。

だが彼らは演算空間へ侵入し、語義候補たちへ牙を剥く。


先頭に立つ男が叫ぶ。


「語られなかった理由なんて、どうでもいい。

俺たちは“語る前に拒絶された痛み”で構文を燃やしてやる――!」


構文省、混乱。

制御不能の構文波形が第四戦域で暴発し、周囲の構文座標を“意味圧壊”させていく。

エルヴィアが崩れかけた波形を必死に補強。

ルクスが構文跳躍で後退させるも、敵は“語義がないぶん定義されない”ため、攻撃が通らない。


そのとき。

ナオが踏み出した。

《シル・サプレッサ》展開。

沈黙の白が、廃語者の咆哮ごと包み込む。

敵の拳がナオの頬を裂く。

だがナオは、殴り返さない。

ただ、その拳を“語らないまま”受け続ける。


「……語られなかったのは、お前のせいじゃない」


彼は、そう言わなかった。

でも、沈黙のなかでその手が、廃語者の拳をそっと握った。

揺らいだ。

廃語者の肩が。

かすかに――震えた。


それは怒りでも、恐怖でもなかった。

ただ、自分の拳が初めて“拒絶されなかった”という感覚が、

脳の奥に、知らない言葉みたいに響いた衝撃だった。

もう一発、拳を振るえるはずだった。

なのに――腕が上がらない。

拳の奥が軋んでいた。

それは痛みじゃない。

“振るわなかった場合の自分”に触れてしまった動揺だった。


ナオはその拳を、拒絶せずに受け止めたまま、

ほんの少しだけ、指を伸ばす。

相手の手首に、静かに触れた。

それだけで、廃語者の呼吸が止まりかける。


「……なんで……語らねぇんだよ……」


掠れた声が漏れる。


「語ってくれよ……拒絶してくれよ……

そうじゃなきゃ、“語れなかった俺”のやり場が、どこにもなくなるだろ……!」


沈黙のなかで、ナオの瞳が静かに揺れた。

語られなかった叫びが、ようやく“ぶつける以外の場所”に向かっていた。


――語られなかったという事実に、

「語らない」という形で向き合われたとき、

その痛みは、初めて“語らなくても許されるもの”になる。


構文波形の凪が、広がる。

語義を与えなかった者たちに、語らずに触れられたとき――

その“叫び”が初めて、誰かに届いた。


――語る資格を失った者が、

語らない者に出会ったとき、

やっと「語りの入口」に立てるのかもしれない。




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