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Genesis of Deicide  作者: キキ
第二章 神格継承戦争/Deicide-Game
16/60

語義候補《プレ=ナレータ》

二章です。

二章も毎日17時に2話,3話か4話ずつ投稿していきます。

頑張って語っていくのでよろしくお願いします。

「この椅子に座りたがる奴ばかり見てきた。

けど――“誰も座ってほしくない奴”に、ようやく出会った気がする」


構文記述省・中央語義層。

第七観測中枢には、封印指定が解除されたばかりの記録が一枚だけ表示されていた。


【記録名:空位神格構文 - Chair_0】

【状態:構文中核ログ 発生中】

【招集対象:語義候補(プレ=ナレータ)候補者7名】


理文省の観測官たちは無言だった。

中央指令官はただこう呟いた。


「“語った者”が誕生してしまった。……ならばこの椅子は、再び誰かを選びはじめる」


その頃――

構文学園ケイオス・レイズの構文塔から、演習班は一時解散していた。

構文制圧との直接戦闘後から、ナオの中で“語義震”は続いていた。

発話せずとも、世界が言語のように軋む。

黙って歩くだけで、構文帯の空気がざらつく。


「……俺、何か変なんだと思う」


ミールにそう漏らすと、彼は笑って言った。


「変じゃなかったら、あの神の構文領域を破れないだろ」


「でも、あれは――語りたくて語ったんじゃなくて……」


イーリスが横から静かに言葉を差し込む。


「……語って“しまった”んじゃない。

ナオ、お前は――“語らせたくなかったもの”を語ってしまったんだよ」






その翌日、選抜通知が届いた。


【対象:ナオ=ミカド】

【内容:構文位階《語義候補(プレ=ナレータ)》への招集】

【参加条件:語義戦域選定試験(ディサイド・ゲーム)への応答義務】

【開催地:神格構文準封印区】


ナオは首を傾げながら読み進めた。


(プレ=ナレータ……?語義候補……?)


ただ、その下に添えられた一文が、彼の思考を射抜いた。


「神の椅子に、誰かが座らなければ、世界は語られなくなる」


封印区、語義戦域“α座”。

そこに集められたのは、ナオを含む7人の“語り手候補”。

内訳は、圧倒的な構文戦能力を持つ精鋭や、かつての神格降下実験体たち。

ナオは場違いそのものの存在に見えた。


「お前が“語義爆裂”の起点?」


そう声をかけてきたのは、候補の一人――セルナ・ヴィルデ。

全身に浮かぶ構文式の刺青が、その“語りたがる性質”を物語っていた。


「アンタさ、“語る”ってどう思ってんの? あたしはね、語るたびに誰かが震えるのが好きなんだよ」


ナオは答えなかった。けれど、胸の奥でなにかがざわめいた。

(語って、誰かを震わせる。それって――)


(本当に()()ってことなのか?)




その夜、再び白の空間が夢に現れた。

中央に椅子が一つ。誰も座っていない。

でもその椅子には――小さな傷跡が残っていた。

“誰かがかつて、そこで立ち上がろうとした痕”。


『その椅子は、語りたい奴のための椅子じゃない。

“語らせたくなかった者”のためにあるんだよ』


かつてのイドの声が、ほんの一瞬だけ脳裏に滲んで消えた。




翌朝、ナオは誰よりも早く戦域に向かった。

誰かの語りを止めるためじゃない。

ただ――語る前に震えていた自分を、置き去りにしないために。

椅子が選ぶのではない。

語った者が“椅子の必要性そのもの”を問えるかどうかだ。






――第二章、開幕。

世界が再び“語られること”を望むとき、

最初に沈黙した者が、その語源を叩き潰す。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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