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Genesis of Deicide  作者: キキ
第一章 語られぬ者たちの序列/Lexical-Hierarchy
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構文制圧戦

「語られてしまった者は、もう“世界の一部”だ。

だから奴を黙らせろ――“語る前に、消せ”」


構文視塔の語義爆裂事件から2時間後。

理文省直属の制圧部隊《ミュート=ゼロ》が構内に潜入した。

任務名は明確だった:


【対象:ナオ=ミカド】

【危険構文区分:発語・未定義神性】

【抹消優先順位:最上位】


「……あのクソが本気で来やがったのか」


ミールが端末越しに制圧ログを読みながら舌打ちする。


「“語る側に移行する兆候”って……どんな理屈で生徒を処理対象にすんだよ」


イーリスは構文帯を展開しながら小さく呟く。


「ナオは、“語ってしまった”から、もう“彼らにとっての世界”じゃないんだ」




ナオは地下の構文隔離室にいた。

言葉を口にすれば、また空間が軋む。

でも黙っていても、“誰かの記述”が内側で疼いていた。


『来るよ。僕を……いや、“君を神にしたくない者たち”が』


「……もう、逃げない」


自分のせいで誰かが“語られすぎた”のなら――

自分の言葉で、それを止めてやる。


瞬間、構文室の天井が爆裂する。

金属装束に包まれた“白の制圧者”たちが降下してきた。


【発語即刻拘束】

【構文抑制術式:語源遮断装置 起動】


術式が空間に展開される

ナオの口が開かれる前に、“語彙ごと封印”する構文の網。


だがその網を、誰かの火線が焼き崩した。


「誰が語らせるかは、あんたらじゃないでしょ――」


イーリス=カーラ、構文詠唱ゼロで接触型炎槍を放つ。

背後からはヴァルクスの重力波、ミールの時間遅延。

特別演習班が、彼の前に立ちはだかった。


「ナオ、俺たちで“世界の聞き分けの悪さ”を叩き込んでやろうぜ」



敵の構文隊は語彙遮断/空間交差/黙示連結式――

あらゆる術式で“語りの力”を封じに来る。

だがそれは、言葉を道具としか見ていない連中の攻撃だった。

ナオの中で、言葉が震える。


(語りたいわけじゃない。だけど――)

(“黙っていても守れない”なら……)


手を掲げる。


「……俺の語る“空白”を、聞け」


瞬間、制圧官の術式がすべて沈黙した。


【反発構文:Null Wave(言語基底相殺)】

【対象:“定義された語彙”のみ】

【解除結果:語彙術式56%崩壊】


「語られてる側で止まる気はねぇ」

「俺は“語る前提で黙ってた”んだよ――!」



イドの影が、ナオの背に立った気がした。

でも、何も言わなかった。

ただ、ほんの少しだけ――**“安心したような沈黙”**を残していた。


制圧部隊は撤退。

マリエルは端末にこう記した。


【観測結果:語彙使用あり】

【未覚醒区分 → 半自律言語構文】

【状態:“神格の手前”】


――この世界では、“語る”ことが始まりであり、終わりでもある。

ナオはその扉に手をかけた。

今度こそ、“自分の言葉”として。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回で一章最終話です。

よろしくお願いします。

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