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Genesis of Deicide  作者: キキ
第一章 語られぬ者たちの序列/Lexical-Hierarchy
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神性継承階層《ゼロ=レイン》

「この世界における“神性”とは、

語られた記録の上に重ねられた、記述の亡骸である」


構文反応監視ログ《U-Vault》に、異常通知が走る。


【階層記録コード:ゼロ=レイン】

【神性残響:再起動兆候】

【関連タグ:NULL/Narrator】


理文省観測官マリエルはモニタを閉じると、誰にも聞こえない声で呟いた。


「動き出したわね……“言葉を持たない神性”が」


その頃、ナオ=ミカドは講義室を抜けて、資料塔の屋上にいた。

高層構文層に沈む夕焼けが、人工演算空で深く燃えている。

誰にも話しかけられていない。ただ、空だけが、

構文構成のざらついた静電気みたいな熱を伝えていた。


「……最近さ、よく夢を見るんだ」


ぽつりと隣に立ったミール=レフが言う。


「“神が死んだ階層”っていう変な場所で。

神性構文が崩れて、そのあと何にも残ってないんだ。

なのに、誰かがそこで笑ってる」


ナオは何も言わなかったが、胸のどこかに引っかかりだけが残った。


「ま、ただの夢だよな」


その日の晩。

特別演習班に1件の通知が届く。


【任務名:神性継承階層ゼロ=レインの視察演習】

【目的:神性演算帯の定期安定化/再構文防止】

【特記事項:観測記録者にナオ=ミカドを指定】


「また俺か……」


不満はなかった。ただ、自分の関わる場所ばかりが“動き始めている”気がしていた。


夜、微睡の中で――また“風景”が浮かぶ。

構文で積み上げられた塔の最下層。そこは静かで、冷たくて、

沈んだ言葉の亡骸が漂っていた。

遠くに誰かが座っている。だがその背中はぼやけていて、

ただ空っぽな白紙みたいだった。


『言葉は燃えすぎると、灰になる。

それでも、ずっと語り続けてる奴もいるけどね』


「……お前、誰だよ」


声をかけようとした瞬間、

ナオの手から何かがするりと零れ落ちた。


翌朝、机の上に置かれていたメモ。


【構文起動:記録未定義】

【発信元不明/Null構文断片:1件】


『あそこは静かでいい場所だったよ。

語りの声が、ぜんぶ遠くに消えていくからね』



――静かな何かが、構文世界の最深で目を覚まそうとしていた。

それは“今”ではなく、“かつて”を引きずる気配だった。




最後まで読んでくださりありがとうございます。

構文って難しいですね。

次回もよろしくお願いします

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