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愛はひとつではないから  作者: ぽーりー


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38/46

36 それぞれの想い



ミヒル視点


  ↓


スレイン視点






サハルは広間を見渡してため息を吐いた。


「もぬけの殻ですね」

「一足遅かったか・・・」


俺たちは夕刻にキーフランドのテネスの屯所に到着し、ミリアを見たという者に会った。

馬車が通過したのは真夜中で、フードを被った若い青年と、ドレス姿で眠っているいかにも高貴な女性が乗っていたという。

どこへ向かったのかはわからないと言うので、俺たちはこの地域の詳細な地図をもらって辺りを捜索していた。

先程この山の麓に住んでいた老夫婦に話を聞くと、この屋敷は20年ほど前に持ち主が亡くなり、それからは空き家になっていると言うので、拠点に使われる可能性が高いと見込んでここを訪れていた。


「今朝まではここにいたのかもしれませんね・・。もう夜も遅いですし、今夜はここに泊まりましょう」


サハルはそう言うと、テーブルの上にあった残飯をテキパキと片付け始めた。

俺は外で待っていた傭兵たちを一階に呼び入れ、各自で適当に休むように言った。

俺がホールに立っていると、二階を確認しに行ったサハルが上から声をかけて来た。


「ミヒル様、来てください」

「どうした?」


二階に上がると、廊下側に後付けの鍵が取り付けられた部屋があった。

もしかして、ここにミリアを監禁していたのか?

中に入ると、古いベッドが置かれているだけの粗末な部屋だった。


「ミヒル様これを」


サハルがベッド脇に落ちていた細長い紐を拾った。

ランプを近づけると、紐にはうっすらと血が滲んでいた。


「これでミリアを縛っていたようだな」


女相手に酷いことを・・・。

テーブルに置いてあった皿やフォークの数からしても誘拐犯は少なくても四人はいたに違いない。

ミリアは不安と恐怖に震えていたはずだ・・・。


「ミヒル様、明日はここから北方にあるマリノという街に行ってみましょう。そこからさらに北に行くとしても、ここで休憩や補給を行なっている可能性があります」

「そうだな・・・」

「今日は早めにお休みになってください」

「あぁ」

「では私はお茶を淹れて来ます」


サハルが部屋を出て行くと、俺はベッドに仰向けになった。

ここにミリアも寝ていたのかもしれないな・・・。

今あいつがどんな状況なのか、考えただけでも恐ろしくてたまらない。

ミリアのことを思うと、俺は今日も眠れる気がしなかった。








グラスの中の氷が溶ける様子をただぼんやりと眺めていた。

部屋に戻っても眠れる気がしない私は、就寝時間が過ぎても執務室に留まっていた。

マッシュの報告によると、ミリアを乗せていたと思われる黒塗りの馬車は、王都を北に駆け抜けて行ったという。

すぐに北方にある5都市に伝書鳩を飛ばし、目撃情報がないか調べるよう指示を出したが、これと言った情報は上がって来なかった。

そして極め付けには、モニカに付けていた調査員からも、昨日から彼女の行方がわからないとの連絡があった。

常に屋敷を見張っていたが、いつの間にかいなくなっていたというのだ。

そしておかしなことに、昨日から今日の正午あたりまでの記憶がなくなっているという。

彼女が何らかの魔道具を使って屋敷を抜け出したに違いない。

私は彼女の執念を甘く見ていた。

今回の誘拐にモニカが関わっているのかと思うと吐き気がした。

もうこれ以上彼女のことを看過することは出来ない。

私はもう何度も頭の中で彼女のことを断頭台に立たせていた。

たとえミリアが無事に戻ったとしても、私はもう彼女を許すことはないだろう。




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