15 再会
過去編、始まります☺️
「エニフィール様・・・」
はっ。
ここは・・・。
私は薄暗い部屋の中で目を覚ました。
見覚えのある天井・・・ここは、私の部屋だわ。
でも確かに先程までエニフィール様といた気がするのよね・・・。
彼が私を過去に・・・。
そうよ!
私はベッドから飛び起きて、カーテンを開け放った。
すると、桜の木が朝焼けに照らされて、満開の花びらがゆらゆらと風で揺れていた。
私、戻って来たんだわ・・・。
過去に戻れたのよ!
「ティナ!ティナ!」
「お嬢様、今日はどうなさったんですか?朝からお騒ぎになって」
「ごめんなさい。何だか気持ちが昂ってしまったのよ」
先程ティナを叩き起こした私は、湯あみをして身支度を整えてもらっていた。
「昨日はスレイン様とお会いするなんておっしゃってなかったですけど、お約束はされてるんですか?」
「いいえ。約束はしてないわ」
「えぇ??急に行って大丈夫なんですか??」
「大丈夫・・・だと思うわ」
だって約束なんてしてたらいつ会えるかわからないもの。
「一ヶ月後にはご結婚されて、毎日一緒に過ごせますのに・・・」
ティナは目を細めながら鏡越しに私を見た。
「仕方ないでしょう?お会いしたいんだから」
「ふふっ。お熱いことで」
ティナは腕によりをかけて私の髪を編み込んでくれた。
支度を終えた私は馬車に乗り、開城の時刻に合わせて城を訪れた。
「ミリア!急にどうしたんだ??」
スレイン様が慌てた様子で応接室に入って来た。
生きてらっしゃるわ・・・。
彼の姿を見た途端、私の瞳からとめどなく涙がこぼれた。
「ミリア!どうしたんだ??何かあったのか??」
「いえ・・・なんでも、ありません」
「なんでもないことないだろう??」
スレイン様は私の涙を拭って優しく抱きしめてくれた。
「怖い夢を、見たんです。殿下が、いなくなってしまう夢を・・・」
「私はここにいるだろう・・・。何だか今日の君は子供みたいだな」
そんなスレイン様の優しい笑顔を見たら、余計に涙が止まらなくなって。
「ミリア、本当にどうしたんだ??」
困惑しながらも、スレイン様は私の涙が枯れるまで背中を摩ってくれた。
「少しは落ち着いたか?」
「はい。もう大丈夫です」
「君にこんな一面があったとはな」
「取り乱してすみませんでした・・・」
「いや、たまには恐ろしく現実的な夢を見てしまうものだ・・・」
「はい・・・」
「もしかして君は、この結婚に不安でもあるのか?」
「そ、そんなことはありません!私は殿下との結婚を心待ちにしております」
「そうか・・・それならいいんだ」
でも不安がないと言えば嘘になる。
このままでは私は結婚式当日に意識不明になってしまうから。
でも今それを伝えたところで、きっと信じてもらえないわよね。
スレイン様に相談出来ないことがこんなに苦しいだなんて思わなかったわ。
「殿下、突然来てすみませんでした。私はこれで失礼します」
「ミリア、なぜ君は先程から私を殿下と呼ぶんだ?」
「あ・・・」
あちらの世界でスレイン様の義姉になったと知って、名前で呼ぶのをやめてしまったのよね。
あれが私のせめてもの反抗だった・・・。
「すみません。何だか混乱してしまっていて」
「いつもみたいに呼んでくれ」
「はい。スレイン様・・・」
スレイン様は馬車まで私のことを見送りに来てくださった。
「では気をつけて帰ってくれ。時間があれば連絡する」
「はい。お待ちしております」
自宅に戻った私は、腕輪を落札する資金を借りるためにお父様の執務室を訪ねた。
すぐに5000万レギンが必要なことを伝えると、お父様はしばらく考えた後で了承してくださった。
第一王子の妃になるのだから、そのぐらいは投資しよう、とおっしゃって。
お父様らしい返答ね。
これであとは腕輪を落札すればいいのだけれど。
実はここからが問題なのよね!
オークション会場には20歳からしか入場出来ないのだから・・・。
これから変装のためのドレスを新調して、ウィッグも用意しないといけないわ。
はぁ。
本当に成功するかしら・・・。
それから5日後、王都にあるオークション会場に、私は一人で出向いたのだった。