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五芒星の魔女  作者: 南無三
金生水の章〜邂逅
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救済の旅(宗賀視点)

「しかし、救済の旅というのはいったいどのような目的で行うものなのだろうな?」

「ん〜?」


 始めの目的地である【狩取(かるどり)】を目指して都を出たは良いものの、この旅の目的を正しく理解していなかったことを思い出した俺は、巫女へと質問を投げかけることにした。


「知らな〜い♪」

「なぬ!?」

「あはは、うそうそ。

 というかそがっち、目的もわからないのに志願してきたんだ〜」


「良く内容も確認せずに依頼を承諾したからな。

 何よりも旅そのものへの関心より、巫女殿に会ってみたいという気持ちの方が強かったからな!」

「え〜? 嬉シ〜♪

 でも巫女殿って呼び方はやめてよね〜、絢芽っていうかわゆい名前がちゃんとあんだからさ」

「心得た! ではあやめと呼ばせて貰うぞ!」

「おけ〜♪ ……それで何の話だったっけ?」


「救済の旅の目的についてですよ巫女様」

「あ、そうだったそうだった……って、ずっきーも巫女なんて呼び方しないでよ〜」

「立場が立場ゆえ、無礼を働くわけにはございませんので……あしからず」


「む〜……しょうがないか……。

 それで旅の目的なんだけど、なんか大昔にヤシマで干ばつが続いたせいで、いっぱい人が亡くなっちゃったことがあったんだって。

 それで初代水の巫女がヤシマを旅しながら、各地で雨乞いの儀式をして雨を降らせたことで、水不足を改善して多くの命を救ったってわけ。


 んで、ヤシマの人達は初代の巫女が辿った旅に敬意を込めて"救済の旅"って名付けたんだ。

 それから代々水の巫女は、ヤシマの干ばつ再来阻止と五穀豊穣を願って、救済の旅を毎年なぞるようになったんだよ〜」

「ほーう……」


 こやつ、何も考えていなさそうな風体を漂わせておきながら、学びの下地はしっかりとしておるようだな。


「あ〜そがっち、あーしがスラスラと長い説明ができたことにビックリしてるっしょ?」

「ぬ!? いやぁ、そんなことは……」

「顔に出てるかんね〜、こう見えて革新領にいた頃は結構偏差値高い高校に行ってたんだから、これくらいの暗記は余裕だし〜」

「お……おお、そうか……」

「ほんと失礼なんですけど〜、ねぇとがっち〜」

「わぅん!」


 案外鋭く人を見る目を持つ娘よ……、気を抜いておると、心すら見透かされそうだな。

 高校というのは確か革新領の学び舎で、義務教育から外れた高等の学びを行う場所と聞いたことがある。

 恐らくは見た目以上に頭もキレるのであろう。


「まぁ、ようは決められた場所であーしが踊って、神様のご機嫌を取る旅ってことなのさ〜♪」

「ほう? 踊りとな?」

「伝統的な舞踊なんだけど、結構激しい動きをするからムズいんだよね〜。

 でもすっごい綺麗な踊りだったから、超頑張って覚えたんだ〜」

「ほほー、どのように舞うか楽しみだな!」

「期待してて良いよ☆」


 一つ楽しみができれば、長い旅路にも花がつくというもの。

 舞踊好きな俺は、あやめの言う"舞"とやらがどれほど美しいのかを見たいが為に、どこか足早な足取りで旅路を歩んで行った。


―――――――――――


「わ〜、ピュアっピュアな伝統領って感じ〜♪ こういうところに来てみたかったんだよね〜」


 狩取(かるどり)に辿り着き、革新領的な趣向が混ざった都とは違った、純粋な伝統領の領地を見渡したあやめは、新鮮な景色に目を輝かせておった。


「ねねね、神社に行く前にさ、ここらへん見て回っていい?」

「まだ日も沈んでおらぬしな……うむ、良いぞ!」

「やっほ〜い♪ んじゃさ、お腹空いたから先ずはご飯にしようよ」


 あやめに連れられ、醤油だれを焦がしたみたらし団子が有名な甘味店で食事を取ることになった。


「ん〜! めっちゃ美味しい♪」

「うむ! 焦げが風味を際立たせておるわ!」

「わぉん!」

「巫女様、頬にタレがついておりますよ……ふき取りますので動かないでください」

「ありがとう〜♪」


 食事を終えた後は買い物へと足を運んだ。

 旅を終えた後に、革新領へ帰る際のお土産を買っていきたいんだそうだ。


「やっぱ御当地名物の菓子土産は外せないよね〜。

 あっ、このかんざしかわゆいから買ってこ〜♪」

「あんまり無計画に買うと嵩張るぞ、あやめよ……」

「だいじょぶだいじょぶ、そがっちが運んでくれるんだし」

「なに!? 俺が荷物持ちか!!」

「もののふの役目だぞぅそがっち〜♪」


――――――――――


「あー楽しかった〜♪」

「伝統領を楽しんでくれたようで何よりだ」

「次来る時は巫女としてじゃなく、旅行JKとしてのんびり楽しみたいな〜。

 そんじゃ、時間も時間だから神社に行こっか」


 満足気な様子で伝統領を満喫したようだ。

 すっかり日が落ちた時間帯になったが、俺達は巫女を待つ神社の元へと向かっていった。


――――――――――


「お待ちしておりました巫女様」

「おっす〜♪」

「本日はお部屋をご用意しておりますので、明日の舞踊に備えてゆっくり身をお清めください」

「はーい、んじゃ3人ともまた明日ね〜♪」

「わん!」


 あやめは神職達に部屋へと案内されて行った。


「巫女守の方々には申し訳ありませんが、こちらで手配した宿を用意しておりますので、そちらで身をお休めください」

「社に部屋は用意されておらぬのか?」

「巫女様の神性を高めるための儀を兼ねておりますゆえ、今宵は巫女様以外の人間を社に招く訳にはいかないのです」

「なるほどな……」


 俺達は社が手配した宿で一夜を明かすことにした。


――――――――――


 翌日、社の遣いの者に案内された場所へ行くと、ため池が張られた周囲に何やら人々が集っておった。


「なにゆえ、皆ため池を囲んでおるのだ? まさかあの上で巫女が踊るわけではあるまいな」

「あの上で踊るのですよ」

「なにぃ?」


 ため池に近づいて腕を入れてみたが、まぁ深い深い。

 少なくともあやめの腰から下は、水の中に沈んでしまうであろう深さだった。


「こんな深い池に入って踊るというのか?」

「中に浸かるわけではありませんよ。

 水の巫女の力を用いて水面の上に立ち、舞うのです。

 初代水の巫女様は荒海の上で舞を披露したという伝説があり、その伝説に倣った形となっております」


「そうなのか……水の上で舞うなど、あまり想像がつかぬな」

「そろそろ巫女様が参りますので、こちらへ」


 巫女守の特等席である最前に立ち、あやめの登場を待ち続ける。

 どこから来るのかと見回していると、昨夜の宮司が最前に立つ神職達の列が視界に入り、その集団がこちらへとゆっくり近づいてくることが確認できる。


 その輪の中心に、舞踊用の服装に身を包んだあやめの姿があった。


「ほう……衣装が違うだけで見違えるものだな」

「あれは初代巫女様の衣装を再現したものとなります」


 ため池の前に立った宮司が大幣(おおぬさ)を左右に振ると、あやめを囲む神職達がため池へと続く道を作るかのように整列し、あやめはその道を歩んでため池の前に立ちおった。


「"(わた)(がみ)"……」


 あやめが素足に微かな青い波動を纏わせて水面の上に片脚を乗せる。

 続けてもう片方の脚を水面へ運ぶと、しっかりと水面の上に両脚が乗りおった!


 水面の上を歩き、ため池の中心に陣取ったあやめは片膝をつき、両手に備えた薄布を水に浸して静止した。


「降雨招来、五穀豊穣……祈祷!」


 宮司の一声を皮切りに、薄布に浸した水を宙に舞わせながら立ち上がったあやめは舞踊を開始する。


「おお……なんと……!」

「綺麗ですね……まるで波の仕草を纏うような、激しくも調和された舞……」


 鬼灯が言った通り、布と長髪をたおやかにたなびかせながら、荒々しくも優雅に舞うその姿はまるで定まらぬ波や風を描いているかのよう。


 ただ舞が美しいのではなく、太陽のような笑顔を保ったまま楽しげに踊るあやめの姿が、この舞踊の美と見事に調和して磨きをかけておる。


 俺の心と瞳は、この舞踊の虜とされてしまったようだ。


「…………」

「若様……」

「………………」

「……完全に見惚れていますね、これは」

「わぅん」


――約10分間に及ぶ舞を終えた絢芽は、水と汗に肌を濡らしながらも満面の笑顔で大見得を切り、周囲の民達は見事な舞を成し遂げた絢芽に対し、惜しげもない拍手が送る。

 宗賀は優し気な笑顔で絢芽を見つめていた。

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