新たなる侵入者(ピア視点)
「おはようジュリウス!」
「おはようございます……」
「元気無いわね……」
「そりゃあ、色々ありましたから……」
取材に来たら拘束されて、尋問されて、戦争に巻き込まれて……そんな激動の一日を超えた翌日じゃ、憔悴するのも無理はないか……。
かく言う私も、普段は空がまだ暗い時間に起きてしまうほどの早起き体質なのに、今日に至っては午前の9時を上回った時間に起きてしまったものね。
「まさか皇国のネタで成り上がる為に来たのに、皇女様直々に国の未来を背負わされるなんてね……」
「正直、荷が重すぎるっす……」
「でも私達が得た情報で書かれた記事が、歴史を動かすことになるかもしれないなんて、ロマンがあって良いじゃない。
閑職から一気に成り上がれるチャンスでもあるわ」
「ただ帝国には間違い無く目をつけられるっすよねぇ……最悪、暗殺ものですよ?」
「権力が怖くてジャーナリストが務まるかっての。
今日からガンガン、ネタ探しに精を出さなきゃいけないんだから、しゃきっとしなさい!」
「はぁい……」
「そうと決まれば、早速ヴェル君か皇女様を探しにいくわよ!」
―――――――――
取材を行うにはヴェル君か皇女様の監視下に無ければいけない。
二人を探してとりあえず広場へとやって来た私達は、昨日の防衛戦の傷跡を修復する人達から二人が何処にいるのかを聞いて回ることにした。
「どっちも見かけて無いなぁ」
「そうですか……ありがとうございます」
「あ……、あれは筋肉ダルマとアルマちゃんね」
「皇女様とは親しい仲みたいですし、あの二人に聞いてみます?」
アルマちゃんが汗を流しながらメイスの素振りをしている横で、その様子を見守る筋肉ダルマのお兄ちゃんへと声をかける。
「あのー……」
「あん? 腹でも減ったか? 飯ならあっちの配給所で配ってるぞ」
「そうじゃなくて! ヴェル君か皇女様を探しているんだけど、何処にいるか知ってる?」
「どっちも見てねぇけど……何か用でもあんのか?」
「取材をしたいんだけど、二人のどっちかが監視についてないといけないの」
「何だそりゃ……誰がそんなこと決めやがったんだ?」
「皇女様」
「まぁそうだよな……ったくマリーのやつ、毎回唐突な決め事に振り回される身にもなって欲しいもんだぜ……」
「ほっ、ほっ…………ん? にぃに、どうしたのー?」
「こいつらがヴェルとマリーを探しているんだとよ」
「ヴェルならあっちのブキコのほうにいたよー?」
「え、本当に!?」
「うん、ゆみのていれするっていってたー」
「ありがとうアルマちゃん!」
「えへへー」
「おい、ヴェルのところに行くのは良いけどよ、今はみんな復興作業で忙しいから取材に割く時間なんか……」
「さっさと行くよジュリウス!」
「はいっす!」
「人の話聞けコラッ!?」
―――――――――
「ヴェル? 40分前には何処かに行ってしまったよ」
「え……」
武器の手入れをしていた兵士の人にヴェル君の居場所を聞いたものの、期待外れの返答を受けて肩透かしを食らってしまった。
「一緒に武器の手入れをしていたら、急に侵入者が来たって言って出て行ったんだ」
「侵入者?」
「ああ、1人分の反応しかないから一人で十分だってな」
「何で侵入者が来たってわかるんでしょうかね……」
「魔術か何かでしょ……あーあ、だったら皇女様を探すしか無いか……」
私達は再び広場に戻って皇女様を探したものの、姿も見えず目撃証言も得られずで途方に暮れてしまった。
「これじゃあ取材ができないわ……」
「しょうがないですよ、大人しくヴェル君が帰ってくるのを待ちましょう……」
「おーいあんたら!」
「あ、武器庫にいた……」
「ヴェルが色白の娘を連れて帰って来たから、伝えてやろうと思ってな」
「ほんと!? ナイスタイミング!」
「噂をすれば何とやら……でも"色白の娘"ってなんでしょうね?」
「肌が絹のように白い娘を背負っていたのさ。
ヴェルは医療施設にいるよ」
「スクープの匂いがするわ……行くよジュリウス!」
―――――――――
「ヴェル、何だよこいつは?」
「侵入者だよ、森の中で倒れていたんだ」
「あの二人といい、帝国兵といい、最近はやたら侵入者が来やがるな……武器は持っていたか?」
「武器になりそうなものは無いね、持ち物は星型のペンダントみたいなものを首にかけているくらいだよ」
「はーいはい! 通して通して!」
「すみませんね……」
人の輪の中を掻き分けて進んで行き、ヴェル君と筋肉ダルマを見つけた私達は、二人の元へと強引に歩みを進めて辿り着いた。
「あ、ピアさん……」
「この人が色白の娘ってやつね……!
なるほど、確かにピーリカ大陸ではまず見られない肌の白さだわ!」
「顔つきからして、明らかにピーリカ産まれの人間じゃないっすね……こんな場所まで何をしに来たんだろう……」
「すまない、通してくれ」
「あ……! 皇女様!」
「何やら騒がしいから来てみたが……どうしたんだい?」
「侵入者が来たんだけど……たった一人の上に、武器も持たずに倒れていたから、ほっとけ無くて連れてきたんだ」
「ふむ……怪我をしている訳では無さそうだが……」
「とりあえずおこしてみよー、えいやそりゃ」
「あ……! こらアルマ!」
人々に囲まれて寝息を立てる色白の女性が、アルマの連続はたきを毛布の上から受けたことで、瞼をゆっくりと開けて眠りから目覚めた。
「…………んん? ここは……」
「あ、おきた」
「ここはアインシュベルン皇国の領地だよ、何の目的で君は侵入してきたのかな?」
「ヴェル、目覚めたばかりなのだから尋問は控えて……」
「アインシュベルン皇国……! ここはアインシュベルン皇国で間違い無いのですね!?」
「あ……ああ、そうだよ」
「やりましたー!! 遂に目的地にまで辿り着けました!! あぁ、神はわたくしを見捨て無かった……!」
急に両手を上げて叫び出したことで、アルマを除いたその場にいる人達はびっくりして後退りしていた。
「申し遅れました!! わたくしは【ペンタ教】の宣教師、【クロエ・ユリース】と申します!!
このアインシュベルン皇国には、"金の聖女"が存在するという情報を聞きつけ……」
彼女の腹の虫が轟音を立てて空腹を主張したことで、気になる話が中断されてしまった。
「アハハ! すごいぐぅ~ってナった!!」
「二日は何も食べていなかったもので……」
「それは辛かっただろうな……誰か! 彼女に食事を用意してやってくれ!」
「は!」
彼女は申し訳なさそうに頭を何度も下げながら、笑顔で用意された食事に舌鼓をうった。




