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五芒星の魔女  作者: 南無三
水生木の章〜決意・覚醒
27/51

木の聖女、覚醒ですわ!(ブリット視点)

「はぁっ……! うわっぷ! たすけ……」


「あそこだレグナ!!」

「あんな遠くまで……このままでは溺れてしまう!! 船はあるか!?」

「駄目だ! 船は全部出ちまっているから、近づく手段がねぇ!」

「くそ……!」

「な……!? まさかレグナ……」


「追いつきましたわ!」

「ちょっと、なんでレグナがパンツ一丁になって……」


「うおォォあッ!!」

「お……泳いで行きましたわ!?」

「こんな荒波の中で……!!」


 師匠は苦戦しつつも荒波の中を前進して行き、ついに溺れている子どもの元へと辿り着きましたわ!


「がぼぼがッ!! だずげ……!」

「もう……大丈夫だ……!」

「レ……レグナ……!?」


 師匠は子どもを抱き抱えてこちらに戻ろうと踵を返しましたわ。

 しかし、その瞬間に突如雨風が吹き荒れて、荒波の強さは一段と強くなってしまいましたわ!


「ぬおァァァ!?」

「わっぷ!! うわぁ!」


「ヤバいぞ!! レグナまで溺れちまった!!」

「このままでは師匠が……! くっ……!」


 焦燥に駆られたのか、大事な恩人を救いたいという思いがそうさせたのか、わたくしは無意識にかさを増した海の目前に立っていた。


「…………」

「何しているのブリットちゃん!? 危ないから下がりなさい!!」


「グゥッ……! がぼガァ……」

「レグ…………」

「ああ……師匠ッ!!」

「いくらレグナでも、こんな荒波に長時間耐えていられないわ……!」


 このままでは、師匠が抱えた子ども諸共、海に沈んでしまう……。


 嫌だ、そんなの嫌だ。

 わたくしに新たな生き方と、道を示してくれた憧れの人が、目の前でこんな最期を迎えてしまうなんて受け入れられない。


「でも……わたくしは、何もできない……!」


 大自然の脅威の前では、わたくしなど無力な一存在でしかないことを痛感する。


(わたくしに力があれば……大自然の脅威を力に変える、"木の聖女"の力があったならば……!)


〘欲しいのならば……あげるわ……〙

「……!? 誰ですの……?」


 師匠を救えるだけの力を願うと、わたくしの脳内に直接響いてくる声が聞こえてきた。


〘欲しいのでしょう? 自然の力を意のままに自身の力に変える、木の五行の力が……〙

「欲しいですわ……!」

〘良いわ……この力で、欲するものを全て手に入れなさい……!〙

「欲しいのは……師匠を救うための力ですわァっ!!」


「!? ブリットちゃんの身体から……翡翠色のオーラが吹き出て……!」

「どうなってんだ!?」

「ハアァァァッ!!!」


 感じますわ……木の聖女が紡いできた力の歴史、魂の奥底から湧き上がる生命の力を……!!

 この力があれば、師匠を救えますわ!!


〘さぁ唱えなさい……貴女が望む、力の発現……魔術の詩を!〙


 "大地に根ざし、天を衝く、巨木の偶像よ……!

 願わくは現世へと顕現し、果て無き世界への導となれ!!"


神樹顕現(セイクリッドオーキス)ッ!!」


――海水が満ちた砂浜にブリットが両手を翳すと、翡翠色の生命エネルギーに満ちた海面から巨大な樹木が顕現し、溺れるレグナの元へと急速に伸びて行った。


(……!? これは……)

「師匠ォッ! その樹木に身体を預けてくださいまし!!」


――ブリットの声を聞いたレグナは、指示通り巨木に片腕を預けてしがみつく。


「今ですわ!」


――ブリットは大木を操作し、しがみついたレグナの身体を海岸へと引き寄せて行き、遂には救出に成功した。


「やったぞ! 二人共無事だ!!」

「良かったですわ……! 本当に良かったですわ師匠!!」

「ああ……君のおかげで子どもを救うことができた、礼を言おう。 しかし、その力は……」

「ええ、木の聖女の奇跡ですわ……!!」


――――――――――――


 寮内のシャワーを浴びて、ずぶ濡れの身体を温めた師匠が、ボルシチが入った大皿を持ってダイニングに訪れましたわ。


「あ、師匠」

「ブリット君、正面に座らせてもらうよ」

「大歓迎ですわ!」


 突然の肉体の酷使にお腹を空かせたのか、師匠はボルシチを物凄い勢いで平らげていきましたわ。


「ふぅ……ブリット君、話がある」

「はい」

「君は【木の魔女】の力に目覚め……」

「"聖女"ですわ!」


「ああすまなかった……聖女信仰に魔女は禁句だったな。

 話を戻すが、君が木の聖女としての力に目覚めたことで、一つの選択肢が生まれたことになる」

「選択肢……ですか?」

「そう……アイスノルド大陸に戻り、エランゼラ神聖王国の王となる選択肢だ」

「…………」


「エランゼラ神聖王国では聖女が国王として即位する習わしだ。

 君が王となれば、当然のように実家であるクルグロフ家も相応の地位へと成り上がることになるだろう。

 そうなれば君は、母君に命を狙われる心配も無くなり、産まれ育った大陸で裕福に暮らすことができるが……」


「そんな選択はしませんわ」

「ほう……何故だい?」


「わたくしはもうプロレスラーになり、師匠のようなスーパースターになると決めましたの。

 それに、突然芽生えた力に頼って母上様との関係を修復するなんてことはしたくありません……。

 わたくしはいつか、スーパースターとしてマートマの地に凱旋し、母上様を含む民の皆様に感動を届けてみせますの!!

 そうすれば母上様もきっと……」

「そうか……素敵な夢に水を差すような提案をしてしまったな、すまないブリット君」


「あ、頭を上げてくださいまし、師匠!?」

「せめてもの償いに、君の夢が叶うよう、より一層君に向き合うと約束しよう。

 君を必ずスーパースターに育て上げてみせる」

「師匠……」


「さぁそうと決まれば、まずはしっかり食べて身体をどんどん大きくしないとな!! まだまだボルシチはあるから、遠慮なく食べまくるんだ!!」

「はいですわ!!」


 憧れだった木の聖女の力に目覚めようと、わたくしが歩む道に変更はありませんわ!

 何故ならばわたくしには、どんなに辛い道のりでも叶えたい、夢ができたんですもの!!


「世界へ羽ばたくプロレスラーに……必ずなってみせますわ!!」

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