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五芒星の魔女  作者: 南無三
水生木の章〜始動
22/51

TIWチャリティ興行・メインイベント2

(あんな巨体で宙返りを……!? なんという身体能力……!)

「ぐはぁッ!!?」


――ジェフリーが宙返りしながら放ったボディプレスにより、レグナの身体は140kgを超える巨体に圧殺される。

 リングが破壊されたのかと思うほどの衝撃が観客席にまで伝わり、その衝撃を肌で感じ取った観客達は驚嘆の声を上げた。


「決まった…! 140kg超え、トップロープからのムーンサルトプレス……!! 遂に勝ち星を拾えるか……!?」

「レフェリー!!」

「ワン! ツー!」

「レグナー! 返せー!」

(あんな巨体で押し潰されては……返せるわけありませんわ……!)


――破壊的な一撃を直に受けて無事で済むわけが無いと諦めの感情が芽生えたブリットは、3カウントが叩かれようとするリングから目を逸らす。


「スリ…………!!」


「ダアァァァッ!!」

「!!」

「返したー!?」


――観客のほとんどが諦めていた中、レグナが3カウントギリギリでフォールを返したことによって希望が繋がれた観客達は一斉に歓喜の声を高めた。

 ブリットは喜びの感情以上に、レグナの不屈の肉体と精神に対し、尊敬の念にも似た驚愕の感情が胸の中に湧き上がっていた。


「おい! 今のはスリーだろうが!?」

「ツーだ!!」

「ちきしょー!! こうなったら奥の手だァ!!」


――満身創痍なレグナの身体を起こし、頭部を自身の太ももで挟んで拘束したジェフリーは、両腕で持ち上げる仕草を行い観客にアピールする。


「投げるぞオイっ!!」

「親父のとっておき、"ラストライド"だ…! 今のレグナの体力じゃ、決まればまず返せない!」

「ダラァァァッ!」


――レグナの胴体に両腕を回したジェフリーは、腕力を用いて、自身の肩の高さまでレグナの身体を持ち上げる。


「……! ハァッ!!」

「おわぁッ!?」

「脚だけで投げ捨てましたわ!」

「"フランケンシュタイナー"!! 狙っていたのか!?」


――身体を持ち上げきられた瞬間に、レグナは後方に体重をかけて背を反り、その勢いを利用して、肩に乗せられた両脚だけでジェフリーを投げ捨てることに成功する。


「いってぇ……ちくしょうが……」

「トアァァッ!!」

「うおあッ!?」


――投げ捨てられてダウンしたジェフリーが起き上がった瞬間に、レグナはその場で大きく跳躍し、自身の頭の高さまで上げられた両足でジェフリーの顔面を突き刺した。


「"ドロップキック"! 綺麗に決まったぁ!!」

「あんな技を受けた後で、助走も無しにあんなにも高く飛べるだなんて……! 凄いですわ……」


――ドロップキックを喰らい、体勢を崩してロープにもたれかかったジェフリーの身体をロープから引き離し、ハンマースローで対角線のロープへと走らせたレグナは、右腕に力を漲らせて跳ね返ってくるジェフリーの元へと走り出す。


「アックスボンバー!!」

「ぶはぁッ!?」

「モロに決まったァ!」


――右腕の上腕二頭筋でジェフリーの顔面をかち上げる。

 あまりの威力に地に足をつけることができないジェフリーは、食らった瞬間に勢い良くマットへと叩きつけられた。


「終わりダァッ!!」

「行けー! レグナー!」

「レグナ! レグナ! レグナ!!」


――会場の声援がレグナ一色に染め上げられ、背中を後押しされたレグナは先程ジェフリーに仕掛けられた、頭を太ももで挟み込む状態を型作る。


「あんな巨体をあの体勢から持ち上げるつもりですの……!?」

「普通に考えたら無茶だが……レグナなら……!」


「オオォォォォッ!!!」


「持ち上げましたわっ!! 」


――ジェフリーを肩の高さまで持ち上げたレグナは、開脚しながらその場で跳躍し、尻もちをつくような形でジェフリーを背中からリング中央のマットへと叩きつけた。


「"ライガーボム"!! と、なれば次は……」


――立ち上がったレグナは、北側のロープへと走り出し、トップロープに脚を乗せられる程の大跳躍を行う。


「"クレセント・レグナ"だ!!」


――レグナはトップロープに飛び乗った後、美しい弧を描くように天空を飛翔した。


(綺麗……!)


――ブリットはまるで一瞬時が止まったかのような錯覚を覚えるほど、誰もが見惚れる分厚く、大きな肉体で空高く舞ったレグナに心を奪われ、目を輝かせていた。


「ぐっハァァァァッ!?」

「決まったー!!」


――緩やかに、そしてしなやかに弧を描いた肉体は遂にジェフリーの腹部へと落下し、その瞬間、観客達は盛大な歓喜の声を張り上げる。


「ワン! ツー!」


――レフェリーのカウントに合わせ、観客達がかけ声をあげていく。


「スリー!」

「オォォッ!!」

「レグナの勝ちだ! これで親父は13連敗かぁ……」

「……」

「いやぁ良い試合だったねぇブリット…………ブリット?」

「…………」

(見惚れてら……)


「勝者! レグナ・ヒュドール!!」


――勝ち名乗りを受けたレグナは勢い良く片腕を天へと突き上げ、喜びを誇示する。


 惜しみない拍手と歓声を送る観客席を見渡したレグナは、憧れを秘めた強い眼差しを浮かべて呆けた表情を見せる、島にいないはずの唯一の人間であるブリットを発見する。


 レグナはその様子に少し困惑したが、すぐさま表情を取り繕い、疲れと痛みに屈しない強い眼光を持って、彼女の眼差しと向き合った。

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