幼稚な剣聖とエルフ
"五人目の候補者"が決まり、満足げな私を横目に逃げようとするチチ。
(シヲエル)「ちょっと〜。どこ行くのよ?こんな美人なお姉さんと生活できるなんて夢のようだと思うけど?」
(チチ)「おばあさんでしょ」
(シヲエル)「あぁ?」
(チチ)「なんでもないです」
(シヲエル)「よし、まずは木刀からだな。これで素振りをやってみろ」
(チチ)「え、えぇ〜」
(シヲエル)「なんだ?まだおっぱいが飲みたり無いのか?」
(チチ)「ち、違います!」
(シヲエル)「ふ〜ん??私の目には3歳までおっぱいを飲んでいたおまえの姿が見えているんだが?」
(チチ)「な、なんでそのことを!?」
(シヲエル)「眼がいいんだよ〜」
(チチ)「・・・・・」
(シヲエル)「今いくつ?」
(チチ)「7」
(シヲエル)「おっぱい飲んでた記憶は?」
(チチ)「少し・・・」
(シヲエル)「マセガキ」
(チチ)「う、う、うるさいなぁ!やるなら早くしてよ!」
(シヲエル)「私が教えるわけなかろう?」
(チチ)「はぁ?じゃあどうすんの」
(シヲエル)「ん〜〜。反永都市国家にでも行くか」
(チチ)「え!?あそこは私の国の敵対国ですよ?それに、反エルフ国家としても有名です!殺されますよ??」
(シヲエル)「尚更そこがいいぃ///!!」
(チチ)「えぇ〜・・・。私は死にたくないのですが・・・」
身震いをしながらクネクネする私を軽蔑しながら自己保身に走るチチにチョップをする。
(チチ)「あだっ!」
(シヲエル)「大丈夫。お姉さんは交渉が得意だから」
(チチ)「信用できません・・・」
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[反永都市国家 ゴンドラ]
(シヲエル)「お〜い。大丈夫か〜?空飛んだことね〜ってマジなんだね」
(チチ)「飛べませんよ!普通!!」
(シヲエル)「いや、普通に飛べるから」
(チチ)「・・・」
(チチ)「それより、さっきの質問答えてよ」
(シヲエル)「な、なんのこと?」
(チチ)「なんで死にたいのか?だよ!!!殺す側には聞く権利があると思うんだけど??」
(シヲエル)「難しい言葉使うな。弱く見えるぞ」
(チチ)「なんか聞いたことあるな」
(チチ)「いや、変な名言言って誤魔化すな!!」
(シヲエル)「なんでって・・・。死にたいのに、理由なんている?」
(チチ)「いや、死にたくないならわかるけど」
(シヲエル)「独りになってるとふと、死にたくなるもんさ」
(チチ)「僕がいるじゃん」
(シヲエル)「すぐ死んじゃうでしょ」
(チチ)「寿命は仕方ないですよ」
(シヲエル)「うん。だからあんまり人間に興味はない。イタズラした時の反応くらいしか興味はない」
(チチ)「そのせいで国ができるほどですからね」
(シヲエル)「知らな〜い」
(チチ)「・・・」
(チチ)(この人、自分の存在がどれだけのものか分かってないのかな?それともほんとに興味が無いのかな・・・)
(シヲエル)「そろそろ門に着くよ」
(チチ)「あれ?ちゃんと門から入るんですね?てっきり空から入るのかと」
(シヲエル)「いや、目立つでしょ」
(チチ)「そうですけど・・・」
(シヲエル)「何・・・?」
(チチ)「いや、そういうところは気にするんだな〜と思って?」
(シヲエル)「私はいいけど、チチが巻き込まれちゃうでしょ」
(チチ)「僕のために?」
(シヲエル)「あと、この都市の上空には結界が張ってあるから入れない」
(チチ)「・・・・」
(チチ)(なんだよ・・・もう・・・)
(シヲエル)「これでよし・・・」
(チチ)「おお!?髪が金髪から黒に」
(シヲエル)「変装はこれでバッチしでしょ?」
(チチ)「変装・・・意味ないでしょ」
(シヲエル)「なんで・・・?」
(チチ)「現存するエルフはあなただけなんですから」
(シヲエル)「認識阻害使うよ?」
(チチ)「あそ」
僕とシヲエルは門番に身分証を見せ、入国目的を聞かれた。
(門番)「おい止まれ。そこの子供!」
(チチ)「は、はい!!」
(門番)「ダグリュー家は先の戦争で滅んだはず。拾ったものではないだろうな?」
(チチ)「失礼な!この紋章が何よりの証明です!」
(門番)「ん・・・」
(チチ)「確かに。正真正銘、ダグリュー家の紋章だな。だが、一家まとめて戦火に朽ちたと聞いたが・・・?」
(チチ)「私はダグリュー家第一王子。ダグリュー・ルーク・クラリネットだ。本日はこちらに在中のシモンズ家第二王子。シモンズ・ルーク・ファゴット様にお会いしたい」
(門番)「確認する。しばしお待ちください」
(シヲエル)「ねぇ」
(チチ)「なんですか。門番の前であんまり話しかけないでください」
(シヲエル)「あんたってそんなに名の有る貴族様なの?」
(チチ)「敵対国なので、名前くらいは知られていると思います」
(シヲエル)「ふ〜ん。そうなんだ」
(シヲエル)「ファゴットっていうのは親戚か何か?」
(チチ)「いえ、父上の元部下です。剣の腕を買われてこちらに指南指導役として派遣されているはずです」
(門番)「ダグリュー王子。その方は?」
(チチ)「恩人だ。戦火から逃げた後、森の中で助けてくれた」
(シヲエル)「ども〜」
(チチ)「ちょっ!!!」
(シヲエル)「何よ?」
(門番)「重ねて、失礼ですが。どこの森ですか?まさか始聖の樹海ではないですよね?あそこには忌まわしきエルフが棲家にしてると噂がありますが」
(チチ)「・・・」
(シヲエル)「どうすんの」
甲冑を着た大柄な門番がこちらに鋭い視線を浴びせる。
(チチ)(敵対国の王子がエルフに救われましたなんて言ったら、反エルフのここは絶対入国できないだろうな)
(シヲエル)「あ〜も〜めんどくさい!!!!!!」
(チチ)「!!!??」
何を血迷ったのか、シヲエルは門番の前で認識阻害を解除し、エルフを名乗り始めた。
(チチ)(な、な!!!!!!何やってんだ!!!!!このエルフは!!!???)
(シヲエル)「命の森に住むエルフ。シヲエルだ!!人間は実に仕事が遅い」
(門番)「え、エルフ!!!!!兵士よ!!!集え!!!!!!!!」
あっという間に兵士に囲まれ、取り押さえられた。
(シヲエル)「おいおい。ここの結界を張ったのが誰だか知らないのか?」
(門番)「この国の王。ゴンドラ王だ!」
(シヲエル)「ちがう。違う。わ・た・し!!!!!」
(門番たち)「は・・・?」
集まった門番たちはエルフの素っ頓狂な発言に呆れ、僕らは牢屋へ連れて行かれた。