何でも屋とエルフ
紙袋いっぱいにカスタードパンを買って帰ると、博士は向かい合うように置かれた電気椅子の反対側に座って待っていた。
(シヲエル)「できた?」
(博士)「ああ。そこに座ってみ」
(シヲエル)「う〜ん。なんで二個も作ったのよ」
(博士)「死ねるなら一緒がいいなと思ってな」
(シヲエル)「え〜。重」
(博士)「はっはっはっ!!!確かに!」
口調がいつもより柔らかい。
(シヲエル)「博士も一緒に逝くことないじゃん」
(博士)「もし、向こうに行けたらシエルが一人になるじゃろ?」
(シヲエル)「私が死ななかったら爺さんが一人、向こうにいっちまうじゃん」
(博士)「それでも良い。向こうならずっと待っとられる」
(シヲエル)「もう近いんだね」
(博士)「明日が峠じゃろうな」
(シヲエル)「これで四人目だよ。私を置いて逝く人」
(博士)「俺は一緒に行ってあげるから」
(シヲエル)「あの時、吊ろうとしてた奴が何言う」
(博士)「覚えてたのか・・・!」
バチチチチチチチチチチチチチチチチ!!!!!!!!!!!!!!
私の椅子から先に致死量の電圧が流れ始める。
(シヲエル)「まあね」
試作品を試す私を当人は心配そうに手をかざす。私はその手をそっと掴む。
私に電気が通じないのを確認した博士は悲しみとどこか嬉しそうな笑みを残して、手を握り続けた。
光を失った瞳からポタポタと皮のソファに垂れていく。
私はそっと目を閉じさせて、研究室から抜け出した。
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[西側監視塔 屋根上にて]
(監視兵)「金喰い虫がようやく死んだらしいぞ」
(監視管理兵)「おい。そんなこと言うもんじゃね〜よ」
(監視兵)「いやいや、言いたくもなりますよ。エルフの研究で滅んだ国がどれだけあると思っているんですか?我が国もそうなりそうだったんですって!」
(監視管理兵)「エルフ・・・か。どれだけ死に触れてきたんだろうな・・・」
(監視兵)「え?何言ってんすか。エルフなんてただの厄介者ですよ!」
(監視管理兵)「まあ、そう言うな」
(シヲエル)「ふ〜ん。君。優しいね」
(監視兵)「うおぉ!?エルフ様!!!?なんでそんなところに!!」
(監視管理兵)「申し訳ありません。エルフ様。隣の者には後でキツく言っておきますので。どうかご慈悲を」
(シヲエル)「・・・やだ」
管理兵はエルフの放ったナニカによって吹き飛び、城壁から転落していった。
(シヲエル)「君。永教の国出身でしょ?エルフを尊敬するなんて変わり者。あそこくらいしか知らないし」
(監視管理兵)「はっ!仰るとおりでございます」
(シヲエル)「私、あそこ嫌いなんだよね。すぐ血を採ってこようとするんだもん」
(監視管理兵)「我々は貴方様に一生仕えるために貴方様と同じ種族へとなりたいのです。どうかお許しを」
(シヲエル)「キモい」
(監視管理兵)「ハフっ!!!!!!ウゥン!!!!!!!!」
(監視管理兵)「その蔑む瞳!!!!!美しいその脚でどうか蹴り飛ばしてくれ!!!」
翌日。
西側監視塔の城壁近くで二人の兵士が転落死したという一報が王へ伝えられた。
原因はエルフである。とも。
(王)「博士以外、祟り神に触れるなとあれほど注意しておったのに・・・。馬鹿どもが!!!」
(王侯)「それと、エルフからの一報も・・・」
(王)「なんだ!?読み上げろ!!」
(王侯)「その・・・。国を出る。世話になった。と」
(王)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(王)「シャァー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(王侯)「王様!!!?!????」
王は天に向かってガッツポーズをし、王らしからぬ声と顔ではしゃぎ回った。
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[生の樹海 深部]
(シヲエル)「ハァ〜。ここがやっぱ落ち着くな〜〜〜」
私は兵士をぶっ飛ばした後、集まってきた兵士たちに王宛の手紙を渡し、国を出た。
ガキのお守りも終わったことだし、100年くらいここで羽を伸ばそうと思っていたのだが・・・。
(???)「グスっグスっ!!」
どこからかガキの咽び声が聞こえてくる。
ガサガサ・・・。
ガサガサガサ
ガサガサガサ!!!!!!
ヒョコッと茂みから何かが頭を出した。
(???)「エルフだ・・・・」
そこにはキャンバス生地の大きなリュックサックを背負った旅人?らしきショタが立っていた。
(嫌な予感・・・)
私は潜伏を使い、その場から立ち去る。
(???)「あれぇ!?いなくなった!!??」
ぐう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(???)「お腹すいた・・・」
ヒグッヒグッ!!
わぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!
(シヲエル)「っるさいな!!!!!」
(最近、人間の男はどんどん弱くなっている気がするのは気のせいか!?)
涙を拭いながらフラフラと歩くショタ。近くの木になんかかろうとする。
(シヲエル)「あ、その木は・・・」
木型のモンスターが幹に見せかけた口をバックりと開け、ショタを待ち伏せる。
(シヲエル)「あぶね」
シヲエルが風を操り、襲っていた木型のモンスターを根本から断ち切った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
ドォン!!!!!!!!
(???)「あれ?倒れちゃった」
(シヲエル)「ふぅ〜。これで良いだろう」
木の上から倒れた木を不思議そうに眺めるショタの安否を確認し、立ち去ろうとするが、
(???)「わぁ〜〜!!樹液がいっぱい出てきた!!!」
ちゅーーーーー
(???)「うんまぁい!!!!!」
ちゅーーーーー!!!
ジューーーーー!!!
(シヲエル)「あ。」
よほどお腹が空いていたのか、ショタは木型モンスターの体液を飲み始めた。
あのモンスターの体液は確かに甘美だが、猛毒だ。
大人でも1時間経つと神経が狂い、死に至る。
(ましてや、あんな小さなガキ・・・・)
(???)「うぅ!」
パタン・・・
(シヲエル)「おいおい、嘘だろ。また私が助けないといけない感じじゃん!!!!」