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博士とエルフ

(シヲエル)「博士!今日はどんな方法を試すの?」


(博士)「う〜ん、、、火も毒も銃火器も通用しないからな〜」


(シヲエル)「水は!?水はまだ試して無いじゃない?」


(博士)「いんや。無駄骨だろう。そもそも君は呼吸を必要として無いじゃないか」


(シヲエル)「そうだった・・・。え〜〜〜。"この国の天才"と謳われている博士はもう根を上げんの〜!??」




(博士)「・・・・。待っとれ。今考えておるがな」


(シヲエル)「早くしないと、私より先にポックリ逝っちゃうんじゃない?」


(博士)「ふん・・・・」






乾燥葉っぱを紙に巻き煙を立てる博士。


何か考える時はいつもああやって煙を吸っている。シアンタバコというやつなんだって。




人間は考える時、みんなあーやってるけど意味あんのかな?


せっかく仲良くなった奴らも気づいたらみんな死んじゃうし。"四人目"はごめんなんだけど。






ビーカーのお湯が沸くのを待っている間に、物で乱雑した食器棚からコーヒー豆が入った銀の袋を取り出し、カビてないか確認する。




(博士)「さっき買ってきたやつだから。それ」


(シヲエル)「そ」






部屋はゴミだらけのくせに、コーヒーミルだけは黒黒と輝いている。




(シヲエル)「ねぇ〜。カスタードは〜?」


(博士)「んなもんないわ。ブラックでいけ。ブラックで」


(シヲエル)「え〜。頼んだじゃん。買ってきてって」


(博士)「カスタードだけっちいうのは売ってないんじゃ」


(シヲエル)「なら、カスタード系の菓子買ってきなよ。融通が効かんな〜。おじんは」


(博士)「ハン!年取ると我儘になるもんじゃな。わしもやけど」


(シヲエル)「誰がババアよ!!あんたより100倍は生きてるけど、まだまだピチピチよ!!」


(博士)「見た目はな」






(使いもできんのか)


仕方なく、ひび割れたビーカーに角砂糖を手のひらいっぱい入れ、挽いた豆を入れる。


お湯を注ぐとコーヒーの香ばしい匂いが机上の専門書に染みそうなほど部屋に充満した。



(シヲエル)「ん〜〜。いい匂い!」





ゴクゴクゴク




(シヲエル)「ぶえぇぇぇぇぇえええ」


(博士)「おい。汚ね〜な」


(シヲエル)「マッズ!!!なにこれ!!?よくこんなザラザラしたもの飲めるね!?」


(博士)「淹れ方が悪いんじゃ」


(シヲエル)「え〜?んなことないわよ。あんたがいつもしてる感じでやったし」


(博士)「フィルターがミルの横にあったじゃろ?豆やから濾さんと」


(シヲエル)「は!何言ってんのかさっぱりわからん」


(博士)「長生きのくせにコーヒーも淹れれんのか・・・」


(シヲエル)「コーヒーなんかのハイカラなもん。飯も水も必要ない私には要らないもんね〜っだ!!」


(博士)「なら飲むな。豆が勿体無い」


(シヲエル)「いいじゃん別に。高いやつじゃないんでしょ?ケチだからねアンタは」


(博士)「100g4大金貨もしたんじゃぞ?」


(シヲエル)「端金じゃない」


(博士)「農民1万人が一生かけて得る金を端金とは・・・」


(シヲエル)「勝手に価値を見出してんのはアンタらでしょ?欲しけりゃ奪えばいいのに」


(博士)「はっ!いつの時代の話をしておる。全く」


(シヲエル)「奪った後の泣きっ面を拝むのが楽しんじゃない?」


(博士)「クズじゃな」


(シヲエル)「うっせ」




(博士)「自分の命すら軽んじるお前さんは良い御身分じゃな」


(シヲエル)「まぁね〜。こう見えても昔は崇められてたんだから」


(博士)「冗談が通じんのは寿命の差か」




ジャリジャリのコーヒーを博士はグイッと飲み干すと、電球を見つめたまま固まった。






何かいい案を思いついたようだ。






(シヲエル)「何?」


(博士)「電気じゃ」


(シヲエル)「あ〜。確かに。まだやってないかも」


(博士)「電気椅子作るからちょっと待っとれ」


(シヲエル)「うい〜」




(シヲエル)「てかさ、気になってたんだけど」


(博士)「なんじゃ?」


(シヲエル)「博・士・た・ち・ってみんな一人称"わし"じゃね?」


(博士)「そーか?」


(シヲエル)「今までの博士たちもみんな"わし"って言ってたし、語尾も"じゃ"がついてた。なんで?」


(博士)「癖?じゃな」


(シヲエル)「博士ってのはみんな同じ癖がないといけないの?それともわざと?」


(博士)「ん〜??」






革製のソファの背もたれをいじりながら博士は返事をする。






(博士)「わしら博士っちゅーのは、前に博士と呼ばれてた人の下で学び、働き、背中を見て育つからの〜」


(博士)「初めは真似から入るのが人間の学び方じゃ。年下に真似られて悪い気はせんじゃろ?」


(シヲエル)「いや、普通にムカつく。真似してんじゃねーよって」


(博士)「まあエルフはそうじゃろうな」


(博士)「あと・・・」


(シヲエル」「何?できた?」


(博士)「いや。できるまで、どっか出掛けてこい。話しかけられると気が散って敵わん」


(シヲエル)「へいへい」


(博士)「帰ってくる頃にはできちょるよ」


(シヲエル)「期待せずに待っとくわ」




虫に喰われ軽くなった扉を開け、埃っぽい部屋から出た。




廊下の突き当たりにあるこの部屋はおそらくこの研究室の中で一番狭い。






(シヲエル)「顔見知りはもういなくなっちゃいそうだな〜」






私を一目見た、若い研究員らは男女問わず、下半身を熱くし、惚れてしまう。




生きながらえてばかりの私にはそんな欲情、とうの昔に分からなくなってしまったけれど。この視線は悪い気はしない。








(シヲエル)「カスタードパン買いにい〜こぉお〜〜」






スキップしながら熱い視線をくぐり、研究室から出る。












(博士)「アイツは忘れとるんじゃろうな〜。子供の時に助けてくれたあの時のこと」






博士は湿った部屋で立ち尽くし、白衣の胸ポケットから折れ目が擦り切れた写真を取り出した。




木の床に数滴の染みが溢れ、博士は一人。肩を震わしていた。






(博士)「共にいけるなら本望だな」












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


エルフを忌み嫌う者は多い。



彼女を崇拝している国もあれば、恐れ慄く国もある。また、悪魔と叫び討伐を目論む国もあるようだ。






これらの原因はすべて、彼女の気まぐれな行いが時を経て肥大化した物である。






この国でもエルフが街に降りると、人は掃け、ナイトマンはバケツを投げ、子供達からは石を投げられる。






(シヲエル)「飛んじゃえば当たらないもんね〜」


(町長の息子)「おい!!クソエルフ!!!降りてこい!!!!!!」


(鍛冶屋)「こんのやろう!!!また俺の家を壊すつもりか!!!!」


(商人)「食料を根こそぎ持っていこうって魂胆だろうがい!?そうはさせないよ!!」


(シヲエル)「お〜お〜。今日も、のどかだな〜」




(町長)「ふふ。エルフさんはい・つ・ま・で・も・空がお好きみたいですな」

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