呪恋唄
拝啓。愛しの人。
この世のありとあらゆる災厄が、あなたへと降り注ぎますように。
どうしてこんな祈りを捧げなきゃならないかって?
そこまで言わないと本当にわからないの?
ええ、はい。そうでしょうね。
でも、それもこれも全て、あなたがいけないのよ。
そう、あなたがいけないの。
七夕の夜に、こともあろうにそんな日に、別れ話を持ち出したのだから。
『少し距離を置く』ですって?
そんなの、別れ話と何も変わらないじゃない。
きっとあなたは軽いつもりで言ったのでしょうけども、
その言葉を後悔させてやりたくて。
だって、それじゃ、私だけが恋をしていたみたいじゃないの。
そんなのって、ないわ。
――だから呪うことにしたの。
この祈りが天に通じて、多大な苦労があなたに降りかかることでしょう。
この想いが生霊となって、片時も私のことを忘れられなくなりますように。
そうじゃないと不公平じゃない。
私はこんなにも泣き腫らして、あなたを想って、生きてる心地すらしないのに!
あなただけ! のうのうと! 日々を重ねているだなんて!
やっぱりあなたは呪われてあるべきだわ。
不運が重なり、眠れない夜を重ねて、
やっぱり私なしでは生きられないって、泣きついてきて来るまで、許してなんてあげないんだから。
私はとっくに、覚悟を決めているのよ。
あなたと生きて、あなたと死んで、さもなくばあなたを殺す。
まだ逃げ道があると思っていた自分の浅はかさを恨むがいいわ。
追伸。大好きなあなた。
今ならまだ間に合うわよ。




