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短編集

また、『ありがとう』と言える日まで。

作者: 桜橋あかね

拝啓、貴方様へ……


今、どうお過ごしでしょうか。


▪▪▪


羽崎紫帆(はざきしほ)は、学校専門のカウンセラー。


その彼女には、切っても切れない過去(はなし)がある。


▪▪▪


あれは、高校の頃の話だ。

転校した事があったのだが、その通っていた高校は少々荒れていた。


地味な紫帆は、同級生の標的にされた。

机に油性ペンで落書きされたり、教科書やノートを破かれたり……


先生に話をしても、注意で済まされただけ。

それも相まって、エスカレートした。


親には心配かけたくない、と思って言えないこともあった。


▪▪▪


ある日、紫帆は最寄り駅のホームから飛び降りよう、そう思った。

身体も心も、もう限界だった。


「白線にお下がりください」とのアナウンスが聞こえる中、線路に身を投じようとした瞬間、誰かに腕を掴まれ引き戻された。


「駄目だ、死んじゃ駄目だ!」


その声の主は、隣組の男子生徒……賀川ヒロトだった。

……そう言えば、あまり話したことは無かったけど同じ電車に乗るっけ。


そのまま、駅舎を出た。


「最近、様子がおかしいから心配していたんだ。……話したこと無かったから、警戒すると思ってなかなか言い出せなかったんだ。」


彼……ヒロトはそう言った。


「どうして、私なんか……」


「俺も一時、アイツらの標的にされていてね。どうも見逃したくなくて……俺からも担任に貴女の事を話していたんだけれど、『他クラスに物言いするな』って言われてさ。」


話を聞いていると、紫帆は込み上げてくる物があった。

……私、まだ見捨てられていなかったのかな。


ヒロトのお陰で、その同級生は謹慎処分にされて、標的にされる事は無くなった。


▪▪▪


その後だが、卒業して別々の道を歩むことになった。

卒業式の時に命を救ったことのお礼をしたが、今になってもう一回『ありがとう』と言いたい。


あの日から、学生に寄り添えるようになりたいと思ってカウンセラーの資格を取った。

学校専門で、毎日学生の話を聞いている。


……ヒロト君、本当にありがとう。

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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。 辛い時期でも、何かがきっかけで変わる事ありますよね。 目の前が真っ暗な時、手を差し伸べてくれる人がいれば救われます。 そして成長した姿、よいお話でした。  …
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