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神の土下座

前回よりは早かった。

更新速度はこれくらいと思って気長にお待ちいただければと思います。


 ふと気が付くと何日か前に見たような空間に漂っていた。


 あれ、俺風呂に入っていたような気がするんだけど。



 星華に風呂場を案内してもらい、広めの脱衣所で服を脱いだ。

 用意されていた着替えが男物の浴衣だったのを確認したから気のせいではないはずだ。


 その証拠と言うか何と言うか。

 真っ裸だった。

 

 俺の裸のシーンとか誰得でも無いので出来ればやめて頂きたい。

 呼び出したのは、タイミング的にオオヒルメ様だろうか。

 美沙希さんのいう所の粗忽者と言うイメージが正しければまず間違いなくそうなのだろう。


 ふと。背後に気配と言うか光があることを感じたので振り向いてみた。


 そこには光り輝く社殿。長く高い階段の先にそびえる荘厳な社があった。

 頭の片隅に、昔どこかで同じような建物を見かけたような記憶がある。あれは、博物館で見た模型だっただろうか。


「大昔の出雲大社……か? って、うぉっ!」


 神々しさと荘厳さに気圧されそうになりながらも一歩を踏み出そうとした矢先、足元から黒く長い何かが扇状に広がっているのに気づき思わず足を止める。


 レッドカーペットならぬブラックカーペット?

 

 よく見れば俺の足元のああたりだけこんもりと盛り上がっており、指先を重ねて地面につけられた小さな手や袖が僅かばかり覗いていた。


 つまりこれは、オオヒルメ様の土下座、と言うことでいいのだろうか。


「ええと、あの、オオヒルメ様?」


 びくぅっ、と身体を震わせるものの土下座の姿勢を崩さない。

 理由、は何となくわかるが出会い頭でいきなりの土下座を見せつけられると反応に困るというか対応に困る。


「あの、オオヒルメ様、ですよね? 頭を上げて頂けますか」

「はひっ! わたくしめはオオヒルメで御座います! ですが、わたくしは救世者様に様付けで御呼び頂けるような者では御座いませぬ。どうか、私の事は粗忽な雌豚とでも呼びつけて下さればと存じます!」


 うわぁ……なんていうか、うわぁ……としか言いようがないな。


 最初の儚げな美少女みたいなイメージどこ行った。

 

「いや、呼びませんから。不幸な事故があったとはいえ、オオヒルメ様には感謝していますし」


「いいえ、そのようなお慈悲を頂く訳にはいかぬのです。広域神様よりお預かりした大事な御身を生死の淵まで追い込むような真似をして、何も無く許される訳には行かないので御座います」


 頑なに俺の言葉を受け入れようとしないオオヒルメ様に、どうしたもんかと頭を悩ませていると助け舟となる声が聞こえてきた。


「粗忽な雌豚である処のオオヒルメ君。聞こえているかな」


「うひゃぁい! き、聞こえております! 広域神様!」


 さっきまでよりさらに縮こまっている。

 このタイミングで顔を出してくるってことは間違いなくお説教だろうから、仕方ないけども。


「君の粗忽さにもいい加減呆れ果てたよ。一度ならず二度までも優路君を死なせそうになるとか、何を考えているんだい?」


 ん? 二度? どういうことだ? 

 頭に浮かんだ疑問を声に出そうとする前に、広域神は言葉を続ける。考えていることをお見通しなのは相変わらずか。


「君、湯船の中でウトウトしていた優路君を意識だけ引っ張って連れてきたね? 完全に意識を失った優路君の肉体が今どうなっているか知っているかい?」


「ぶっ……! ちょっと待てぃ! それマジか!」


 あかん、それはあかんわ、オオヒルメ様。

 このまま死んでしまっては、折角生き延びて保護されたのに風呂の中で溺れ死んだ残念な人に成り下がってしまう。

 それは流石に許容する訳には行かん。


「あの、流石にそんな間抜けな死因は勘弁願いたいんだが」


 一縷の望みを掛けてオオヒルメ様でなく広域神の方へ頼んでみる。

 この状態のオオヒルメ様に頼むと二次災害が起こりかねない。被害はおそらく俺の精神的ダメージ。


「解っているさ。流石にこんなつまらない事態で君を死なせる訳にも行かない。君たちの所のメイドに『何となく嫌な予感』を植え付けて様子を見に行くよう仕向けておいたから、死ぬことはないだろう」


 ……助かった。

 何だかんだ、こいつは頼りになる奴だ。

 なんでか知らないけれど崇めたり信仰したりと言う気にはならないが。素直に感謝はしたい。

 そういえば、あの拷問の日々に耐えられたのもこいつの肉体改造? のおかげだったか。

 そちらの方も言葉には出さないが感謝を示しておく。


「さて、オオヒルメ。君の担当する世界の改革に於いて優路君の果たす筈の役割がどれ程の物かは知っているはずだね」


「は、はい、重々承知致して居ります」


「知った上での結果がこれ、と言うのはどうなんだろうね? ヒルメ、君の世界神の座を剥奪するよ。次席は、ユピトだったかな。彼に任せようか」


 さらっと言っているが世界神の交代って結構な一大事なんじゃなかろうか。


「そんな、それはあまりにも……い、いえ、広域神様のご判断に従います」


 あまりの驚きに頭を上げそうになるオオヒルメ様だったが、思い直したようで改めて深々と頭を下げている。

 殺されそうになった俺が言うのも何だが、ここまでするほどの事でもないんじゃないかと思う。


「本当なら神様としての力を剥奪して人間界に放逐してもいいくらいなんだけどね。君は人間たちからの信仰も篤い。今後は大和の地域神としてやりなおすんだ」


「承知いたしました。大和の地域神のお役目、謹んで拝命いたします」


 何とか力になってあげたい気もするけれど、今の俺に出来ることって無いんだよなぁ。

 そのうち世界神の座にに返り咲けるように頑張ってみる、と言うのが精々だろうか。


「さて。優路君。ヒルメが迷惑をかけたね。私からとヒルメから、お詫びを渡すからそれで手打ちと言うことにしてもらえると助かるよ」


 お詫び、ね。オオヒルメ様が可哀相になるくらいの処分を受けたのを見ているから無くてもいいんだけれど、貰えるもんは貰っておこう。


「私からのお詫びの品は直接下界に送っておいたから、後で確認してくれたまえよ。すぐに解ると思うから。それで、ヒルメからのお詫びなんだけど」


 広域神の言葉がそこで途切れる。何か考え込んでいるような感じだ。

 オオヒルメ様が出す詫びなのにあんたが決めるんだな。まぁいいけどさ。


「そうだね。ヒルメ。君、優路君の嫁になろうか」


「「……はい?」」


 図らずもオオヒルメ様と返答が被った。

 いや、無理もない。

 何でいきなり俺の嫁?

 まだ顔見たことないけど、たぶん、いや、絶対美少女だから断る理由はないけども。


「何も今すぐ嫁にしろとは言わないさ。君が……そうだね、大和でそれなりの成果を出した暁にヒルメを嫁として向かわせよう。それでいいかい?」


「俺はそれでいいけど」


 流石にオオヒルメ様に有無を言わせず、と言うのは気が引ける。足元のオオヒルメ様に視線を向けると、目が合った。

 嫁になれ発言は世界神降格より衝撃だったのかすっかり頭が上がりきってしまっている。


 一言で言うならば、黒髪ロリ極上美少女。

 

 ギリギリ十歳は超えているかどうかと言ったくらい。どう背伸びをしても中学生には見えそうにない。明らかに小学生サイズだ。

 ともすれば不健康そうにすら見える細い身体と白い肌も神様の神性の成せる業か、儚さと美しさを同居させている。

 ぱちくりと見開かれた黒い瞳は驚きで固まっているせいだろうが、普通にしていれば優しげな印象を受けるのではないかと思う。 

 

 好みとか理想とかストライクゾーンとかを何処かに蹴り飛ばして今この瞬間からロリコンになりますと宣言しても良い。

 それでいい、どころか俺からしてみれば大歓迎です。

 あとはオオヒルメ様の気持ち次第と言うことになるのだが。


「不束者にに御座いますが、どうか宜しく御願い致します、旦那様」


 見つめ合って数秒。俺の事を旦那様と呼んだオオヒルメ様は頬を赤らめてもう一度深く頭を下げた。


「決まったようだね。では、そろそろ優路君の意識を戻さないと騒ぎが大きくなるからね。意識を肉体に戻すよ」


 言い終わるが早いか、足元から引っ張られるような感覚を感じ……いや、これ落ちてるよねぇ?!


 遠ざかっていく神殿と心配そうなオオヒルメ様の顔。

 せめてもの強がりにオオヒルメ様に向かって親指を立ててサムズアップ。


「近いうちに、迎えに行きますから――――!」


 それだけ何とか叫んで、俺の意識は遠のいていった。

 決して落下の恐怖で気絶した訳ではない、とだけ付け加えておきたいと思う。

オオヒルメ様はアズ〇ンの長門さんからケモ耳を取った感じでイメージしています……。


あと2話くらいで戦闘シーンにたどり着く予定。


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