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食後の一服は質問タイム

残業やらイベントやらと続くと更新が遅れがちに……

落ち着いたら更新速度を上げていきたいと思います。

 食事が終わった後はケモ耳メイドさんの淹れてくれたお茶を啜りつつ談笑となった。

 デザートにメイドさん手作りだという水羊羹が振る舞われている。

 あっさりとした甘さで柔らかめに仕上げられている。

 これもまた、俺の体調に合わせて作られているらしい。

 

 談笑、と言うよりは自己紹介の時間と言った方が正しいかもしれない。


「私は風岡菜摘かざおか なつみ。もうすぐ16歳。学習院女学部に通いながら退魔師やってるよ」


「マリアベル・キキーモラと申します。まり、と呼ばれておりますので三雲様もそう御呼び下さい。妖精管理局付きの家令を務めさせて頂いております」


「三雲優路です。この世界と似た別の世界から来ました。今日からお世話になります。よろしくお願いします」


 最初の自己紹介くらいは普通にやっておこうと思う。

 星華を嫁呼ばわりしたことは周知の事のようなので猫を被っているのは既にばれているだろうが気にしない。

 

「別の世界ってどんな所なの? どの辺が違う?」

「あ、それは私も興味あります」


 簡単な自己紹介の後は、季節外れの転校生が受けるような質問タイムが始まってしまう。

 

 質疑応答と言うか交互に繰り返される一問一答。


 時折、質問に質問で返しながらお互いの世界、と言うか認識のすり合わせをしていく。

 

 例えばこの国の事。

 日本ではなく大和やまと、または大和国やまとこくと言うらしい。

 過去には『大和大国やまたいこく』と呼んでいたこともあるとかないとか。


 例えば物価。

 あの日の晩見かけた牛丼屋の値段の話題から饅頭、蕎麦の値段などを聞いてみた。

 醤油や砂糖と言った調味料一つとっても日本とは入手難度が変わってくるようなので一概には言えないけれど、一圓が百円から百五十円くらいの間だろうと思われた。


 例えば、今自己紹介をしてもらった二人の事。

 菜摘と名乗った少女に関しては星華に倣って菜摘先輩と呼ぶことになった。

 今後、退魔師として活動するつもりがあるのなら、菜摘先輩が教官役をしてくれるらしい。


 メイドさんであるところのマリアベルは、キキーモラと言う種族の妖精なのだそうだ。

 キキーモラたちは妖精界と言う異世界から来ており、世界中に散らばって仕えるべき主を探して主従契約を結び家令メイドとして家事全般をこなすのだという。

 俺にも専属のメイドさんが雇えるのかと聞いたら、可能性はゼロではありません、との返答をいただいた。

 どうやら誰に仕えるかという決定権はキキーモラ側にあるのだとか。

 星華と引き合わせてくれたオオヒルメ様の良縁結びにメイドさんが含まれていることを祈りたい。

 

 星華と言えば、聞いておきたいことがあったんだった。


「あの日の夜の事なんですが、何故俺があの場所にいると知っていたんですか?」


 星華はあの時俺を助けに来ていた。

 偶然居合わせた、と言うわけではないはずだ。


 

「ああ、それはね。私がオオヒルメ様の巫女だからよー」


 巫女とな。

 眼鏡巨乳スーツお姉さんキャラの上に巫女属性までつけるとか。欲張りか。


「つまり、オオヒルメ様から俺を助けるように神託的なもので連絡がきたと」


 俺の問いかけに美沙希さんは少し苦笑しながら答えてくれた。


「神託と言うか、たまに泣き付いて来られるのよね。あの方、だいぶポンコツだから」


「は?」


 なんか、今、自身が巫女を務める神様を表現するのにおよそ相応しくない単語が聞こえたような?


「そもそもね。優路君があんな所に降り立ったのも、あの場所に科特の人たちが待ち伏せしてたのも、ヒルメ様が悪いのよ」


 む。流石にそれは聞き捨てならないな。


「それは、敵陣ど真ん中に出現させたとか、神の試練とか、そう言った感じなんですか?」


 そういうことをする方のようには思えないんだけどな。

 イメージが清楚だけど実は腹黒系、みたいな悪役キャラに置き換わる直前で美沙希さんがそれを否定した。


「違うのよ。あの方は本当にお優しい方。それは間違いないわ。ただね、どうしようもなく粗忽と言うか、やることが裏目に出るというかね? 色々残念な方なの」


 神様なのにトラブルメイカー体質とか。そりゃこの世界も発展できないよな。


「これはもう五十年も前の話になるんだけどね。今も続いている異世界の悪神との大きな争いがあったの」


 私もお婆ちゃんから聞いたのだけどね、と前置きをして美沙希さんが語り始める。


「世界中から名立たる英雄たちが集まって、悪神をあと一歩まで追い詰めたのだけれど、そこへしゃしゃり出てきたヒルメ様がね、悪神の悪足掻きみたいな一撃をまともに受けてしまった上に、世界の構築を司る『世界珠せかいじゅ』っていう宝玉まで砕かれて。更にその欠片を悪神が奪って逃走してしまったのよね」


 ……うわぁ。

 オオヒルメ様完全に戦犯じゃないですか、それ。


「ああ、でも勘違いしないでね。ヒルメ様は悪くないのよ。当時、その場に集まった英雄たちでは倒しきれなかった悪神を封印するためにヒルメ様は顕現なされたの。ただ、その、間が悪かったというか、運が悪かっただけでね」


 言い方ひとつと言うか、トラブルメイカー体質を知っているか否かで感じ方が変わるということか。


「現に当時の英雄たちは誰一人ヒルメ様を責めなかったわ。むしろヒルメ様を守り切れず傷を負わせてしまったことを悔いて、再戦を誓ってそれぞれの国へ帰っていったという話よ」


 ポンコツ呼ばわりしたかと思えばちゃんとフォローしてみたり、微妙な関係なんだなと思う。愛されているらしいことは伝わってくるが。


「そうそう、話がずれてしまったけれど優路君があの場に召喚された話だったわね」


 アニメかゲームの前作の最終話か、みたいな話で忘れそうになっていたけど、俺がここに来た時の話だったか。


「無難にここの庭にでも『門』を開いて下さればよかったのだけどね。どういう訳か星華ちゃんの近くに門を開いてしまったらしいのね」


 あ。それは俺のせいかも分からんね。

 いや、それでも大人しくここの庭に繋げてくれれば死ぬ直前までボコられることはなかったはずだ。


「ただ星華ちゃんはその時、夜間警邏で隣の市の近くまで行っていたの。移動する星華ちゃんを追いかけて、点々と出没する転移門。そのうち科特の人たちが発見して警戒を始めてしまった頃に優路君が来てしまった」


 うん。オオヒルメ様が悪いわ。

 フォローのしようもない。


「ただね。こんなことを言うのはどうかと思うけれど、悪気があってやったことではないから出来るだけ、怒らないであげて貰えないかしら」


 目を閉じて顔の前で両手を合わせる美沙希さん。

 

 元々そこまで腹を立てるつもりもなかった。不信感、と言うより不安感?

 そんなんで大丈夫なんですか、オオヒルメ様、と言う気持ちの方が強かったりする。

 それに、後見人でありともすれば今後上司にもなるだろう美沙希さんにお願いされては断るのも心苦しい。


「大丈夫ですよ。オオヒルメ様には感謝してますから。怒ったりなんかしませんよ」


 俺の言葉にほっと胸をなでおろす美沙希さん。

 星華が、『良いんですか?』みたいな感じの視線を投げかけてくるけれど、軽く頷いて返しておく。

 

 オオヒルメ様に感謝している、と言うのもまた本心だ。

 最初こそトラブル続きだったものの、約束通り美女&美少女と引き合わせてくれたばかりか、その四人と一つ屋根の下で共同生活だ。

 やらかしてくださったぶんを差し引いたとしても充分プラス収支と言える。


「ありがとう。ヒルメ様には後で直接謝るように言って聞かせておきますからね」


 もはやどちらがどちらの主従なのか解らなくなりそうな台詞で締めとなり、食後の雑談はお開きとなった。




「三雲様。お着替えと入浴のご用意ができておりますが如何なさいますか?」


 後の事はまりちゃんに聞いてねー、と言い残して部屋を出ていく美沙希さん。

 今日の所はゆっくり休みな、と肩を叩いて去っていく菜摘先輩。

 星華は、メイドさんに投げっぱなしにはできないとか考えているようで俺の隣で待機している。


 どうしたものかと星華と顔を突き合わせたところでマリアベルから声を掛けられた。


「風呂に入れるのか」


 着替えるついでに身体を拭くくらいは、と思っていたがさすがはメイドさん。

 心づかいが行き届いている。


「本当でしたらお食事の前にと思ってご用意させていただいていたのですが」


 聞けば食事の前に風呂に入って着替えをして、さっぱりして貰おうと思っていたのだとか。

 それを美沙希さんに伝えてあったはずなのに何を思ったか完全無視して食堂に連れてきたので慌てて食事を前倒ししたのだそうな。

 

 俺としては着替えもしたかったけど、喉も渇いていたし腹も減っていたからどちらが先でも構わなかったのだが、美沙希さんなりに思う所があったのだろうということにしておいた。


「じゃ、お言葉に甘えて風呂に入らせてもらおうかな」


 マリアベルは後片付けとかあるだろうから案内を星華に頼み、風呂場へと向かうことにした。


いい加減冒険に出たい。

日常回がもうちょっとだけ続いてしまうのです。

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