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プロローグ  ネットオークションは釣りじゃなかった!

初投稿、処女作です。

お楽しみいただければ幸いです。

プロローグ ネットオークションは釣りじゃなかった



 

「目標地点の魔素急激に増大!」

「会敵予想時刻が繰り上げられました。会敵までおよそ120秒」

「目標地点の魔素に異常発生。集束地点中心で魔素反応消失」

「来るぞ! 総員構え!」

「魔素消失範囲拡大、『門』開きます」

「会敵予測まであと30秒」

「『門』の中に生体反応。人型に近いものと推測」

「人間型か……厄介な。総員に通達、警戒段階3から4へ。乙班構え! 丙班後方支援! 急げよ!」


「魔素の収束速度低下。『門』の安定を確認。目標出現します!」






「いってきまー……えぇ……?」


 念願の異世界生活の第一歩を踏み出した俺を待ち受けていたのはいかつい装備に身を固めた軍人さんたちと、その銃口だった……。





******



 ――数時間前。



 今思い返しても馬鹿なことをしたと思う。

 

 いつものようにネットオークションを覗こうとしてアプリを開く。

 使ったことがあればわかると思うがホーム画面には検索や閲覧の履歴からよく探すようなものがお勧めとして表示される。

 ゲームソフト、漫画、小説、プラモデル。家電に衣服にパソコン部品。

 我ながら節操のないレパートリーだと思うがその中に奇妙なものを見つけた。


『異世界に転移する権利』


 トンデモにもほどがある。


 異世界転生系のラノベやアニメをいくつか検索した履歴があるから『異世界』をキーワードに引っかかったのかもしれない。

 もしくはラノベ、アニメなどのカテゴリでヒットするようにしてある可能性もあるか。


 以前、同じようにネットオークションでタイムマシンとやらが出品されていた覚えがある。

 あの時は確か8000万くらいまで値上がりした挙句、出品者が出品を取り消して逃げ出したのだったか。


 まあ、さもありなん。


 タイムマシンなど、どだい存在するはずのないものだ。

 よしんば存在したとしてネットオークションに流れることなどありえない。


 いわゆる愉快犯による悪戯だ。


 だが、それでも。それだからこそ大手匿名掲示板に常駐しているような連中はそれを目ざとく見つけ出して入札しまくる。

 実況しつつ入札を繰り返しどんどん落札価格を釣り上げる。


 もしも落札してしまったら? などとは考えない。


 彼らが標的とするものはすべからく非実在のものに限られるからだ。

 もし落札してしまった場合、落札金額を支払うからタイムマシンをよこせ、と言われてもほぼ100%渡されることはない。

 そうなると出品者が罰せられる。だから出品者は落札が確定する前に出品を取消して姿を消す。

 出品掛けされたのを確認して掲示板の連中が勝利宣言をして祭りは終わる。


 ここまでがテンプレだ。

 

 話を戻そう。

 今回出品されたコレも祭りに発展しがいのありそうなネタだろう。

 そう思って掲示板の専用アプリを開き該当スレッドを探す。


「……ないな。期待外れか?」


 俺みたいに常日頃ネットオークションや掲示板に常駐できない者からすればまとめブログに転載されるような祭りに居合わせられるというのは嬉しいというか羨ましいというような気持ちが強い。

 だというのにスレッドすら立っていないというのは如何なものか。


 トンデモすぎてスルーされたか、あるいは俺の知らないうちに似たような祭りがあって二番煎じでこれまたスルーされたか。


「とはいえ、スルーするのももったいないしなぁ」


 いっそ自分でスレ立てから始めてしまうか。

 自分でスレッドを起こしたことはないが、安価(アンカー。書き込み可能上限が1000と設定されているため大体、950番目くらいの書き込みをした者が次のスレッドを立てるよう指定される)踏んで次スレ立てたことくらいはある。


 案外まだ誰も気づいていないという可能性もある。


 初めての入札実況。悪くないんじゃないかとか思い始めてきた。


 そうと決まればまずはスクリーンショットを撮るところからはじめようか。


 待機させていたオークションサイトを開きスマホでSSを撮る。

 ふと出品日時に目が留まる。


 深夜1時ジャスト。 


 現時刻が1時10分になるかならないかといったところだとすると、専ブラ開いてあれこれ探したり悩んだりしている時間を考えたら俺がこの『異世界へ転移する権利』を見つけたのは本当に出品後すぐなのだろうと思われた。


 ひとまず一回入札してみるか。


 そう考えて詳細画面を開く。


『読んで字のごとく、異世界へ転移する権利をお譲りします

 帰還する方法もあるかもしれませんが基本的に一方通行です。

 よくお考えの上落札ください。

 落札後、こちらから最終確認をいたします。

 この時点で権利を放棄されるのであれば出品者都合での落札取り消し処理を行います


 全財産投入で特典あり』



 これは、控え目に言って落札しない理由がない。

 万が一落札してしまったとしても『やっぱりやめます』の一言で落札がなかったことにできる。


 俺は落札履歴を汚すこともないし、出品者のほうも万が一逃げ損ねた時の保険になる。

 更にはノーリスクで入札できることで入札者が増え落札金額もどんどん跳ね上がっていくだろう。

 祭りにされることを見越した出品、ということだろう。


 なら、どこまで吊り上げられるか試してみようじゃないか。





 おかしい。どうしてこうなった。いや、分かってはいたけれど。


 時刻は3時を過ぎた。

 入札価格は8000万を超えた。


 たぶんリロードしたらまた金額が増えていることだろう。

 入札履歴を見る限り俺のほかに4人ほど張り付いて入札を繰り返している。


 ちまちま上げるくらいならさっさと億単位で入札すればよくね?


 そう思いながらも100万単位での入札を繰り返している。


 あ。9000万超えた。


 というか。落札期日は一週間後なのだから、今日何億で入札しようが落札はできないんだよな……。

 そう思いながらも入札を繰り返す手は止まらない。


 おそらく4人のうちの誰かが俺の立てたスレッドに9000万を超えたことを報告していた。

 もうだいぶ眠い気がするが今横になってもこの入札が気になって眠れないだろう。

 今日は徹夜するくらいの勢いでこいつらに付き合って入札を続けてみよう。

 それがスレ立てをした者の責任ってもんだろう。

 

「あ」

 

 やっぱりだいぶ眠いらしい。

 キーボードの『9』を押そうとして『O』を押したようだ。

 金額入力画面が『お』になっている。


「……あれ?」

 

 おかしいな。

 スマホアプリのネットオークションは入札画面の時はテンキー画面で固定じゃなかったっけ?

 

 そして、ふと思い出して入札を取消し、商品説明欄をもう一度読み返す。 

 

『全財産投入で特典あり』


 全財産ってどういうことだ?

 少なくとも俺の通帳には今まさに超えようとしている1億円もの金は入っていない。

 全財産に等しい金額なんてとっくの昔に通り過ぎた。

 だけど、それを誰が、どうやって判別する?


「もしかして、全財産ってこういうことか?」


 俺は入札画面に戻りソフトウェアキーボードを確認する。

 やはり。この入札に於いてだけ、かな入力が有効になっている。


「入札金額、『全財産』、っと……」


 漢字で全財産と入力して、入札ボタンをポチる。


 ……

 …………


「マジかっ!」


 ちょっと長めの読み込み時間の後、切り替わった画面には


「おめでとうございます! 『異世界へ転移する権利』を落札しました!」


 俺が商品を落札したことを示す文字が並んでいた。





なるべく定期更新を目指します。

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