表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
485/580

484.二人の魔剣構想~迷走中

・アニメ、7月より放映決定となりました! 公式:https://dahliya-anime.com/

・赤羽にな先生『魔導具師ダリヤはうつむかない~王立高等学院編~』1巻、5月17発売です。

どうぞよろしくお願いします。

 氷の大剣が却下された後、ヴォルフの目に入ったのはスケッチブックの新しいページだ。

 刃の一部に緑が入った長剣は、風魔法が付与されるのかもしれない。


 紙面を見ていくと、刃の中央に緑のみぞがあり、つかに風の魔石が二つ並んで入るらしいことが読み取れた。

 強めの風魔法が発動するのだろうか、そう思ったとき、ダリヤが説明を始める。


「通常の長剣を加工して、風魔法が通るライン――このみぞ部分に風が通るようにして、攻撃で必要なときに魔力を通せないかと思って。これはみぞに沿ってまっすぐ進むから、他の人への心配は少ないと思うけれど……」


 氷の大剣の話から、他隊員への被害を気にしているのだろう。

 だが、一方向へ進むのであれば問題はないはずだ。


「これなら安全だと思う。途中まで刺して稼働させてもいいし、届かないところからの威嚇いかくにも使えそうだ」

「でも風の魔石では使いきりになってしまうから、素材で風魔法を付けた方がいいかも。候補としては緑馬グリーンホース、攻撃力を考えたら天狼スコルが付与できれば理想ね」

「いや、危ない素材はやめよう。君に怪我をしてほしくないよ」

「大丈夫よ、ヴォルフ。緑馬グリーンホースで試作がうまくいったら、コルンさんに相談するから」


 コルンバーノは、スカルファロット家の魔導具部門のおさだ。

 魔導具師としての腕は確かで、魔力も高い。

 その上、武具について詳しく、ヴォルフの魔剣についても話は通している。

 相談にはまちがいなく最適な相手なのだが、少しばかり気にかかる。


「コルンバーノとは、話しやすい?」

「ええ、相談のできる先輩、っていう感じ。オズヴァルド先生やウロス様より年代が近いせいかしら」


 ダリヤに屈託のない表情かおで答えられ、納得したふりで表情筋を固めてしまった。

 そんな自分の隣、彼女は再びスケッチブックのページをめくる。


「風のみぞ剣は候補の一つにして、次ね」


 めくられた先、赤茶の短剣が目に入る。

 その刃にはみっしりと魔導回路が描かれていた。


「これは、土魔法の付いた剣?」


 つかに土の魔石を入れると図解され、時間差で発動するむねが横に記されていた。


「ええ。攻撃力があまりないけれど、投げて使えないかと思ったの。魔物が向かって来たときに土を隆起りゅうきさせて、足止めに」

「なるほど……」


 投擲とうてきした先で土魔法を発動、魔物を足止めする短剣だった。

 的確な場所に投げれば、いい時間稼ぎにもなりそうだ。

 ただ、これに関しては隊で適任がいる。


「とてもいいと思うんだけど、投擲とうてきできる距離の場合、土魔法の使える魔導師か、隊員が足止めでこういう隆起を出すから……」

「それじゃあ、かぶってしまうわね」


 ダリヤは納得したようにうなずいた。

 実際、魔導師やベルニージのような土魔法持ちは、魔物の足止めに魔法を使うことが多い。

 飛行系や飛距離のある魔物には使えないが、接近戦の際には有効だ。


 彼女に他の戦闘向け土魔法を尋ねられたので、近くに土を落として注意をそらす、戦闘中の目潰し、防御の土壁についてなどを説明していく。

 ダリヤは一つずつメモを取っていた。


「じゃ、これは無しね」


 少し早口でページをめくろうとした彼女を、ヴォルフはつい止めてしまう。


「ダリヤ、これはこれでいい。俺なら先駆けのときに投げて、便利に使えると思うから」

「先駆けで――それなら、これを疾風の魔剣のときのように改良してもらって、弓騎士の皆様に矢として使ってもらう方がいいんじゃないかしら? 先駆けの前に」

「それはいいね。矢だったら、魔物に刺さったとき、土魔法で攻撃なんかもできるかもしれない」


 勢い込んで言いながら気づいたのは、細い指に重ねたままの己の手。

 ダリヤがページをめくるのを止めてそのまま――失礼にも程がある。

 ヴォルフは全力で表情筋を固め、そっと手を戻した。

 もっとも、ダリヤは土魔法の展開について考え込んでおり、気づいていないようだが。


「矢の形式にする案をヨナス先生の方に出してみるわ。弓と矢は武器特性が強いそうだから、詳しい方に見てもらう方がいいと思うし。これも仮仕様書にしないと……」


 そう言った彼女の指先、インクがわずかに爪を染めていた。

 ここまで一体どれだけ考え、どれほどの量を書いたのか――

 じっと緑の目を見つめれば、覚えのある揺れが見えた。


「ダリヤ――もしかして、あせってない?」

「え……」


 一瞬、意外そうな表情かおが浮かび、それがバツの悪そうなものに変わっていく。

 彼女自身が気づいていなかったのかもしれない。


 自分が魔剣を強く望みすぎ、彼女に無理をさせたのだろう。

 そう反省しつつ、先に口を開く。


「俺は、ダリヤに作ってもらった黒風の魔剣も本当にありがたいんだ。次の魔剣はそう急がなくてもいいから、ゆっくり考えていかない?」


 けれど、自分を見返す彼女の表情かおは、硬質なものに変わった。


「あせってるわけではなくて――できるだけ早く、使える魔剣が欲しいと思って」

「黒風の魔剣は充分に使えてるよ」

「もっと強い魔剣があれば、ヴォルフが怪我もせず、討伐も安全に終わるかもしれないもの……」


 小さいけれど強いその声に、胸の奥が騒ぐ。

 それは友である自分への心配と願いで、それ以上ではない。

 わかっていても一言一句、記憶に深く刻んだ。


「ありがとう、ダリヤ」


 ヴォルフが礼を述べると、緑の目が不思議そうに見返してきた。

 隣の肩はこんなにも細いのに、守ろうと伸ばしてくる手は鋼よりも強い。

 言いたいことは山ほどあるのに、自分がその隣に立つには、まだ、何もかもが足りない。


 いつもの口調で、いつものように――

 ヴォルフは懸命に心がけながら、ダリヤへ笑みを向ける。


「今度、隊長に頼んで灰手アッシュハンドを見せてもらわない? 詳しい説明もしてもらえると思う」

「そうね。一度お願いしてみようかしら……」


 目の前の彼女は、すでに魔導具師の表情かおだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
時間差で発動可能なら 投擲 投げナイフや 弓矢で 鏃が 刺さった瞬間に 土魔法や氷魔法発動で内部破壊…殺傷能力の強い銃弾でそんなようなのが ホローポイント弾だったかな みたいなのはだめだろうか。
もどかしいー!!!!!
私もダリヤとヴォルフの会話を読んでるからついつい自分も魔剣考えるようになってしまった笑 風の魔石と窪みでチェンソーみたいになるんでは?とか氷の大剣でヒュドラ解体したら切り口が凍るから血も無駄にならない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ