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わしつぶ -うるう星 The Side of W-  作者: 立川好哉
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Episode 25 門番を倒せ!

  期末試験初日、陽は高木、奥田と問題を出し合っていた。

 「PL法を日本語で言うと?」

 「製造物責任法!」

 「はい正解!オックン1ポイント!」 注:オックン=奥田 

 「突然のポイント制!?」

 「優勝者は陽のおごりでフタバ!」 注:フタバ=フタバ珈琲店

 「待て!このまえ部長におごったから金がない!」

 「陽、部長さんにまた使われたの?」

 陽が和室部に入って以降昼食の時間には頻繁に和室部、主に椿のことについて話すので、椿はすっかり二人に知られている。

 「夏服を買ったら金がなくなったんだと」

 「女って金かかるよなー」

 「おしゃれしたいんだよ。僕は女の人の夏コーデ好きだよ」

 「お前それ露出目当てだろ」

 「もう露出は飽きたよ」

 奥田には姉が二人いて、どちらも夏には胸元や背が大きく開いた服を着ているため、露出の激しい服には慣れっこらしい。陽と高木からすると羨ましいことこの上ないが、奥田はさほど喜んでいない様子だ。

 「桜と一緒に行ったら盛り上がっちゃったって言ってた。すごいよな、女子の服の買い物ってヘーキで万札が飛ぶもんな」

 「うちの姉ちゃんたちも言っていたような...」

 女子の金遣いについての話をしているうちにホームルームが始まってしまい、復習が思うようできていない状態で問題用紙と向き合うことになった。

 《まあ部長が簡単だって言ってたし大丈夫だろう...》

 最初は現代文。彼の得意分野であるのですらすら解くことができる。ライトノベルも様々なものだが、彼は稚拙な文章を嫌い、難しい語彙を使うものを好んでいるおかげで故人が著者の小説でも問題なく読める。時間が余ったので椿の似顔絵を問題用紙に落書きしていると、終了のチャイムが鳴った。

 《間違えた気がしない》

 陽はそう思い込むようにして次の科目へ弾みをつけた。次は現代社会。これも陽が得意とする科目だ。あらかじめ時事問題が出ると言われているので、電車で移動している時間を使ってニュースサイトを見ていた。

 『問1.北朝鮮の核実験やミサイル発射を受けて米国が日本海に派遣した原子力空母の名前を答えよ』

 『問2.五輪委員会の会長であり、前東京都知事である図1の人物の名をフルネーム・漢字で答えよ』

 『問3.女性蔑視発言への批判を受けて辞任を表明した図2の人物は何省の大臣か』

 『問4.星乃ヶ丘特別区は今年で区政何年か』

 陽は一度も考えるために手を止めることなく問題を解いた。この程度の難易度であれば、この先も問題ないだろう。

 国・英・現代社会を難なく終えた陽を理系科目は爪を研いで待っているが、その前に昼休みがあり、しばしの休息を得た。高木と奥田が屋上に場所をとっていてくれたのでそこに合流し、パラソルの下で弁当箱を広げる。

 「お前午後地獄だな」

 「どうにかなるっしょ。今のところ余裕だもん」

 「簡単だってよく言われてるけど、今年の数学の問題つくったの児島先生じゃないんだよね」

 毎回数学の問題を作成しているのは児島先生であるが、今回は彼が部活動関係のことで忙しいので秋山先生が代わりに作成した。教育委員会の指導要領に従って授業を進めるため内容に大きな差はないが、難易度が変わることは想定しなければならない。もし仮にそうだとすると、この時間をどう使うかで結果が変わってしまう。陽は急いで残りを食べたが、時間は僅か十分しか残っていなかった。

 「赤でも俺らにやってくれって言うなよ?」

 「やってくれると思ってないよ。部活忙しいんだから」

 [1]の(1)から陽は特殊な状態に移行した。この前の"スーパーソニックショッピング"のような物理的なものではなく、自分の精神にアクセスするもので、球技祭で相手に転ばされたときに発動した"楽しい"状態に似ている。

 《数学はパズルだ...絵柄が分かるように並べ替えれば答えは見えてくる...》

 光景の構成を開始する。相手は夏休み入り口という巨大な門を塞ぐ門番、その胸には数式のパズルが埋め込まれている。これを解くと防御が崩れ、陽の攻撃が通るようになる。

 《xの値を求めてyの値を求めればzの値がわかる...》

 いくつかの連立方程式をたてて文字の値を求め、最終的な答えを書く。手間がかかるだけでやり方は憶えている問題ならなんとかなるが、そもそも公式がわからない問題が出てくると答えが出なくなる。そこは答えずに通過し、わかる問題を完璧にすることで赤点回避を狙う。あれだけ余裕があった午前に比べ、午後の陽は時間いっぱいまで姿勢を低くし、手に汗握る戦いを繰り広げている。それは次の化学も同じことだろう。まだモルが出てきていないので主な問題は化学反応式になるだろう。


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