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わしつぶ -うるう星 The Side of W-  作者: 立川好哉
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Episode 10 逸材

 陽は腹を括って入部を決めたので、全力で部活動に参加してやろうと思っていた。それが彼に異常なスピードを与え、終業のチャイムが鳴るとすぐに彼は全速力で部室へと駆けた。彼の期待通り、部室には誰もいなかった。やる気に満ちていることを示せば、部長である椿はきっと喜んで褒めてくれる。まだ慣れない新しい環境に単身乗り込むことは決して気楽にできることではないが、あの強引な部長ならなんとかしてくれるだろうと楽観していたから、彼女が来るまで部屋でじっと本を読んでいられた。

 「はえーな。電気がついてたから昨日つけっぱなしで帰ったのかと思ったぞ」

 「待ちきれなくて」

 陽の予想通り椿は喜んで彼の肩を軽く叩いた。しかし、これ以上のことをするとは思っていなかった。

 「よーし、じゃあ今日はお前に活動内容を決めてもらおうかな!」

 「えっ」

 「もう一週間そこら経ってるだろ?ほぼ毎日活動してるんだから、お前も何をするかくらい学んでいるはずだ」

 陽は本を鞄にしまって腕を組んだ。自分に椿ほど他人を率いる力はないし、自分を激しく奮い立たせる閃きがあるわけでもない。よって長考するのだが、椿が彼に大きな助言をしたことで、彼の腕組みは解かれた。

 「ゲームをしましょう」

 「その心は?」

 「俺はまだみんなのことを詳しく知りませんが、直接訊くと質問攻めになってしまいます。ゲームではみんなの個性が表れるので、それでみんなの人柄を掴もうと思います。ただ、ゲームを買いに行かないといけませんね」

 ボードゲームくらいなら置いてあるかと辺りを見回したが、全員で遊べるようなものはない。集まりはするものの全員揃って同じことをやることはないのでは、と勿体なく思った。

 「まあテキトーに集まってテキトーに喋って、たまにファミレスとか行く部活だな」

 「せっかく同じような志の人が五人も集まったんですから、全員で何かしましょうよ。ゲームの協力プレイなんて、わかりやすい例ですよ」

 椿は自分の胸に問うていた。先代から部長の座を継いで、自分は変わらなければならないのか、それとも、今まで遠慮がちにしていた自分らしさを前面に押し出すべきなのか。陽は自分に似ている、と思った。

 「今年度から私が部長だ。決定権を持つんだから、先代のやっていたことに合わせる必要はないな。よし、お前に乗っかろう」

 

椿は陽を連れてある場所に向かった。生徒会室と書かれた表札がある下のドアを開けると、長い髪の女子がコーヒーを飲んでいた。

 「うるう、ゲームを貸してくれ」

 「おお椿...と誰だ、そこの男」

 女ばかりの部にいた椿が隣に男を連れていたので、生徒会室の主・星名 閏は目を細めた。陽が閏の独特のオーラに怯えていると、椿が問いに答えた。

 「こいつは御手洗だ。新入りだよ」

 「あー、救世主か。御手洗くん、私は生徒会長で宇宙人部の部長である星名うるうだ。椿を知るなら私のことも知ることになるだろう。どうかよろしく」

 「よろしくおねがいします...えっと、宇宙人部?...ってなんですか」

 閏が答える前に、陽たちの背後から部室に入って答えた人がいた。鋭角に曲がったアホ毛を持つ、左目の下のほくろが特徴的な女子・夜月 庵だ。

 「私もわかんないっすよ。宇宙人がいるから宇宙人部らしいんすけど、どこにもいませんよね」

 庵は鞄を会議用の長机の上に置いてパイプ椅子に腰かけた。彼女は宇宙人部の部員のようだが、その実態をよく知っていない。陽は自分と似た雰囲気を彼女から感じた。

 「お前のほうも新入部員を確保してたんだな」

 「潰れちゃうのは嫌だからねー。誰でもよかったんだけど、いおりんは逸材だよ。ちゃんと喋ってくれるもん」

 陽は閏にとっての『ちゃんと喋る』とはどのような意味であるかを知らない。自分と似た人が逸材と言われているなら、自分も逸材と呼ばれたい。

 「そりゃあ逸材だな。まあこっちのも逸材だがな...そんなことより、ゲームだよ。もうみんな来てる頃だ」

 同じ逸材の庵と話したかったが、椿に手を引かれたので諦めた。似た者同士、また会うことになるだろう。


 「お姉ちゃん、御手洗くん、どこ行ってたの?」

 「その手に持っているのはなんだ!?マシンか!」

 ノイエが興味深そうに陽の手にあるゲーム機を見つめた。機械好きの彼女だからゲーム機の情報を網羅していると思っていたが、案外ゲームには疎いらしい。

 「生徒会長は何でも持ってるなー。私より遊びを熟知してやがる」

 ゲーム機がそれぞれに配られたが、陽以外は初めて触れたという。そのことに陽は驚き、機械音痴にも解るように丁寧に操作方法を説明した。ゲーム文化を広めるためにゲーム機のボタンだとか画面に表示されるアイコンだとかが極めて分かりやすいものになっており、初心者でもすぐに目的の場所へ辿り着くことができた。

 ゲーム機を部屋の隅のルーターを介してインターネットに繋ぐと、公式ストアからあらゆるゲームを購入することができるようになる。今回は『全員で遊ぶ』ことを最重要視しているため、無料でダウンロードできるゲームで遊ぶことにした。近年では『長く遊べるゲーム』という評価点を争う動きが激しく、無料でも有料のに遜色ないボリュームのゲームが多数出てきている。

 「グラフィックが進化してきて、携帯機でも大人数プレーができるようになったんですよ。ネット回線も強固なんで、マルチプレーでも切れるのは極稀です」

 「何語だそれ?ノイエはわかるのか?」

 「もちろん。ただ私はゲームのマルチプレーというのをしたことがない。オンラインのチャットが切れなくなった、みたいなものだろうか」

 ゲームをスタートさせるとキャラクターメイキングがあり、それぞれ気に入った容姿になるよう調節して名前をつけた。陽のはテンプレのような黒髪の男性、椿のは屈強な大男、桜のは優しそうな女性...と、さっそく陽が期待していた個性の表れがあった。


 「まずは簡単なクエストをやって慣らしましょう...あれ、もう貼られてる」

 椿のキャラの上にクエスト受注のアイコンが出ている。どうやら彼女は親切な説明を飛ばし読みしたらしく、直感で進めようとしているようだ。彼女が受けたクエストは初心者には難しいもので、陽は別のクエストを勧めた。

 「デカいの倒してナンボのゲームじゃねーの?」

 「間違っちゃいませんがその装備だと強攻撃で一撃死しますよ」

 「喰らわなきゃいいだけの話だろ」

 桜は姉に陽に従うように促したが、やりとりの末に折れて後衛で支援をすることに決めた。同様に椛とノイエも後衛職を選び、ダメージを受けずに立ち回ることを心掛けた。

 「部長がメインのダメージソースですからね。がんばってください」

 「お前は?」

 「バランスを考えると俺は前衛が好ましいんでしょうが、小回りの利く武器は使ったことがないので...」

 前衛一人に対して後衛四人というディフェンシブな布陣になったが、椿の一騎当千を叶えるパワーに勝敗を託し、このままクエストへ向かった。

 

 「これで攻撃か...おお、コンボだ」

 「回復ってどうやるの~?」

 「こうじゃないか?これとこれを同時押しだ」

 各々ボスに会う前に操作を確認し、道具も調達して万全の状態でボスを囲った。

 結果は言うまでもないが、椿が段取りの大切さを知ってくれたので陽は満足した。


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