止まった時計6
10時10分。
食器棚にかけられた時計の時間。
のどの痛み。咳き込み。ぼんやりと見上げながら甘い液体を白いコップに流し込む。
ベランダとの間を区切る硝子の向こうから漏れ聞こえる車の音。
車の音が大きくて雨が降ってる独特の音。
車が走る走音だけが耳に届く。
時々届く違う音はバイクだろうか?
10時10分。
それは偽りの時間。
動くことのないただの装飾。
白いコップの中の液体はどろりオレンジ色。
一口含めば甘くねとり絡む。
硝子のむこうは明るい夜で。白線の走るアスファルトは明るいねずみ色。信号機の影がくっきり見える。
闇は物陰。
闇は心のうちに。
10時10分。
幻時間。
雨は降っていない。
マンゴージュースは美味しいよね。