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これからの僕(私)  作者: 阿部いりまさ
〜番外編〜
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番外編2.海都は卒業式を迎える

プロローグ以前のお話です。


「高校受かったらしいな!おめでと!」


この季節になると教室のあちらこちらからこんな話が聞こえてくる。

世の中学3年生達は受験の結果をはらはらしながら待っている、もしくは受験の結果に一喜一憂しているものが多いだろう。 僕はどちらかといえば後者になるわけだが。

僕、相良海都は家からほど近い県立の紅葉高校を受験し、この前合格したばかりだ。 正直少し不安だったりしたけど猛勉強の甲斐あって合格することができたんだと思う。 勉強を教えてくれた友人にはとても感謝してもしきれないなぁ。

その友人が今僕の隣に座りさらに隣の友人と話している内田悠斗。

なぜか中学では目立たない方の僕といることが多い。 あと結構女子からの評判はいいと聞いた。 羨ましい。

中学3年生ともなれば彼女の1人くらいはできてもいいはずなのになんで僕はこうなってんだろ…。


「紅葉高校合格だって?おめでとさん」


話が終わったのか悠斗は僕に話しかけてきた。

ていうか合格したってメールで報告しただろ…。もう忘れたのか。


「おう、ありがと。悠斗はどうだったっけ」


「俺は梵城学園。とっくに合格通知きてるよ」


悠斗は地元の近くの高校ではなく、遠くの私立の高校を受け、合格したと聞いた。 結構なお金持ち高で偏差値も高かったはずだ。

…1番驚いたのは悠斗の負担軽減するためにわざわざ梵城学園の近くに家建てた悠斗の親の親バカっぷりだけどね。


「それで?悠斗はいつぐらいに引っ越すの?」


「ああ、もちろん中学卒業してからだな。それまでよろ!」


そりゃそうか。

もう少しで卒業なのに今の時期に引っ越す理由なんてないし。

しっかし悠斗があの高校に行くなんなあ。 私立だし僕の受けた紅葉高校とは全然違うんだろう。 文化祭とかになったら行ってみたいな。

そんなことを考えていると学校のチャイムが鳴った。


「じゃ、帰りにまた会おうぜ」


「おう」


僕と悠斗はクラスが別だ。

2年の時に同じクラスになって友達になりその付き合いが3年で違うクラスになっても続いている。

んで、僕の隣に今座った女子。これが悠斗の元カノ。


「悠斗君元気みたいだね」


「お、おう」


なんだよ、女子にいきなり話しかけられると緊張するだろうが。

この女子が悠斗が前まで付き合ってた元カノで名前が久保(くぼ) 千里(ちさと)

こんなに可愛くて性格も良さそうなのになんで別れたんだか、勿体無い。 悠斗には勿体無いお化けが取り付きそうだ。

それと女子に話しかけられて緊張するのは僕に耐性がないせい。 そうです。僕は女子とは縁のない学校生活を送っているせいです。


「もしかして悠斗君私のことなんか言ってた?」


めっちゃ心配そうに聞いてきた。

やめて、僕は耐性がないって言ったはずなのに!心で!


「え、いやいや大丈夫だよ。何も言ってなかった」


「そう。なら良かった」


そう言って久保は自分の席で次の授業の準備を始めた。

恥ずかしいな。

彼女ができたら僕のこの性格も変わるんだろうか。 いや彼女できる以前の問題なんだけどね。

…じゃあもし僕が女になったらどうなるんだ? 女子は女子と話すのが普通だし、結構すんなりいけそうな気もする。 ま、女になりたいだなんて思ったこともないけどさっ。


*********


この日、僕はとうとう卒業式を迎えた。

ただ、全く悲しくはない。

理由その1、クラスには嫌いな奴が半分くらいはいて、なおかつ別れて悲しむ人はゼロに近い。

理由その2、他のクラスにも嫌いな奴がたくさんいたし、別れて悲しむ人はゼロに近い。 つまり1とほぼ同じ。

理由その3、僕を慕ってくれる後輩などもいないため。 ていうか部活入ってなかったしどうやって後輩と交流すればいいわけ?

とまあこんなところか。

ただ悠斗と別れるのはちょっと悲しいな。 あっ、奏真は同じ高校だし何とも思わないです。

さて、卒業式終わったし直帰だな。

トコトコ歩きながらクラスの人やらとまたねなどの挨拶して校門に着くと誰かに呼び止められた。


「相良君!」


「久保さんどうしたの?」


僕を呼び止めたのは久保さんだったようだ。 少し息が上がっているところを見ると僕を見つけて急いで駆け寄ってきてくれたらしい。

しかし卒業式終わりでこのシュチュエーション。 アニメだと確実に告られるわけだけど、期待していいんですか?

僕が問いかけると少しハアハア言いながら久保は、


「写真、撮ろうよ」


ま、そうですよね。

ん?いやいや、耐性のない僕がいきなり久保とツーショット!? ダメだ、顔がにやけそうになってしまう…。

だが、久保は僕とは違う高校に行ってしまうし、写真はこれがラストチャンスかもしれない。 しかも向こうから誘ってくれたし、断るわけには行かない!


「う、うん。いいよ」


「ありがとう!えーっとじゃあ、薫ー!撮ってくれるー?」


僕が写真を撮るのを承諾するとどうやら友達に撮ってもらうらしい、近くの薫ちゃんとやらを呼んでいる。

その友達も「いーよー」と言いながら駆け寄ってくる。

どうやら本当にツーショットのようだ。 これは夢か。


「相良君!ここに立って!」


「う、うん」


ヤバイヤバイ!絶対今顔赤いって!

パシャリと何枚か取られた。

ヤバー緊張したなあ。 なんかやたら暑くなってきた気がするな。

ていうかなんだよこれ。もしかして僕のこと好きとか? いや!申し訳ない!今僕が久保と付き合うのは悠斗に申し訳ないから!


「ありがと!相良君」


「う、うん」


「それじゃまたいつか会おうね!」


「うん!会おう!」


そう僕が答えると久保はニッコリと笑ってたくさん人が集まってる方に駆け足で去っていった。

これは!後日2人でデートフラグ!? いやいや!ごめんね久保!僕は今は君と付き合えないんだ! だからその君の気持ちは嬉しいんだけど…。


「変な顔で何考えてんの?」


は!?

もしかして今僕はすんごい変な顔で妄想してたのか!? いかんいかん!こんなのよその人に見られるのは恥ずかしいし!

別に友達ならいいんだけど。


「なんだ奏真か」


「なんだとはなんだ!せっかく親友に別れを言いに来たというのに!」


なんかすんごい焦って損した。

帰るか。

しかし、ニヤケが止まらんな。あの久保さんが僕と写真撮ってくれてしかもまた会う約束までしてしまうとは。 グフフフ。

ん?ひょっとして……あ、



「メアド知らないし…」





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