番外編1.晴海は晴ちゃんになる
どうも皆さん阿部いりまさです!
今回は37話と38話の間の夏休みのお話となっております。
ふえー…、あっついなあ。
今の気温は、34℃!? どうりで暑いわけだな。 やっぱり夏休みは家でのんびりしてるのが正解であり正義なんだな。
夏休みも残り少なくなってきた頃、僕は大石橋駅の前のロータリーである人達と待ち合わせをしている。その人達がが、
「あ!晴海ちゃーん!」
「ごめんね。待たせちゃって」
この2人。 小宮山咲ちゃんと日高伶奈ちゃんである。
実は昨日、この2人からRINEで連絡があって今日は僕も合わせ3人でお出かけすることになったのだ!
だから無駄に服を選ぶのに苦労してしまった。 男子と遊びに行くことは中学のころまあまああったけど、女子だけというのは初めてだし、昨日は寝る前に暇になった時の話題を必死で考えていた。 でも考えてる間に寝てしまって結局話題を用意できてないんだよね…。 ま、まあ平気だよ平気。
とてててと近づいてきた2人は話し始めた。
「実はもう行くとこ決めてるんだけど…。先に決めちゃってごめん」
伶奈ちゃんが手を前で合わせウインクしながら可愛らしく謝る。 クソッ!クソッ!かわいいな!
こんなことされちゃ責められないよ。 まあ、もともとどこに行きたいとかなかったし全然構わないんだけど。 むしろ感謝。
「あ、バス来たみたいだよ」
咲ちゃんに言われてそちらを振り向くとちょうどバスが停車して中から人がぞろぞろ降りてきてるところだった。
えーっと、あのバスの行き先は、
「そ!ららぽに行くよ!」
ららぽね。
なるほど。 確かに言われてみれば学生がよくいきそうなイメージだ。
確か大石橋のららぽは最近できたばっかりだったような気がする。……となるとかなり人が集まってそうだな…。
*********
巨大なショッピングモールららぽ。
噂には聞いてたけどその大きさは想像以上だ。 確か関東地方では1番でかいことをウリにしてたような。 となるとこれよりでかいショッピングモールが関東以外にはあるということなのか……。 恐るべし。
しかし、ららぽの大きさも驚いたけどそれと同じくらい驚いたことが人の数。 なんだこれここはシムジーランドですか?
飛び抜けて多いのが若い人達、おそらく高校生なんだろうけどやっぱり考えることは一緒らしい。
「えーっと、最初どこ行こっか」
「晴海ちゃんはどこか行きたいところある?」
咲ちゃんが僕に聞いてきた。
でもどこかに行きたいとかは全然ないんだよね。 何しろこういうところは初めてくるし、女子の趣味もまだ把握できていないし…。
案内板見てみても僕が興味ありそうなのは……アニメ関連のところばっかし…。 引かれるからこれは言わないでおくか。
「いや、特にないかな…」
「うーん、そうなると。こことかどう?」
咲ちゃんが僕にパンフレットを見せながら聞いてきた。 指さしてところは洋服屋っぽいな。 そうだなあ、正直服とかわからないからこの2人にアドバイスもらいながら選べば多少マシになるだろうし、アリだ。 それにあわよくば2人の試着したやつとか見れるだろうし、やはりアリだ。
「うん」
「よし!決まったね!行くぞーっ」
伶奈ちゃんが元気よく出発ーと言いながら歩いていく。
しかし、洋服屋に行くまでにいろいろどんなお店あるか見てみたけど、飛び抜けてやっぱ多いね洋服屋。 男の時には全く縁のなかったブランドとかばっかりだ。男の時もファッションとか気にしてはいなかったんですけどね…。 でも女になった手前、少しは気を使わないといけないと僕も思ってる。 何着かは最初に天野さんに買ってもらったけど、1度も着たことがない服が何着もある。 それほどファッションに気を使ってなかった僕でも着られないということだね。 いやいや、無理無理。 なんだよあのダボダボなズボン。
「お、ここだね」
そのブランドのお店に入ると何やら心地いい香りがする……気がする。
ためしに店内をグルーッと見渡すと、やはり女の人が多いな。 そらレディースだしそうか。
「あ!晴海ちゃんこれ似合いそう!」
伶奈ちゃんが持ってきたのは……やたらフリフリとした感じのスカート。
今もズボン?パンツ?履いてるんだけど実は学校以外はまだスカート履いたことないんだよね。 なんで女の人はあのスースーする感じが平気なんだろ。
「えっと、私スカートは…」
「いいじゃん!いいじゃん!」
しかもよく見るとやたら短けえ…。
こんなん階段やら登るとき必ずパンツ見えるし。 男のときから見るのは好きだけど見られるのは大嫌いなんだよ。
今気付いたけど伶奈ちゃんもなかなか短いスカート履いてるな…。 ……あんまり見ないようしよ。
その後無理矢理試着室に連れて行かれた僕であった。なんだこれ。
*********
「いやあ。結構買っちゃったねえ」
あの後も色々な店を回っていた結果、3人ともかなりの量の服やら靴やら雑貨やらを買った。 ちなみにあのフリフリした短いスカートは買った。……今度履いてみるか…。
そんなわけで今の時間は3時半。僕たちはショッピングモールの中にあるカフェで遅めの昼食中である。
ここのカフェあれでしょ。 このカフェのマークついたカップ持って写真撮ってSNSに上げるところ。え?違うの? だってさっき伶奈ちゃんもやってたけど。
「久しぶりに3人でお出かけできてよかったよ」
咲ちゃんが嬉しそうに言う。
そういえば最近はどこに行くにも悠斗と筒井君いたからね。
いやいや、別に2人が邪魔だとかそういうわけではないよ? ただちょっとうるさいかなって思うくらい。
「……」
「どしたの?伶奈ちゃん」
さっきから伶奈ちゃんが何か考え事をしているようだ。 僕と咲ちゃんが話しているときも黙ってたな。
しかしあれだ。そうやってアゴに手を当てて考えてるポーズ。 どこかの小さい探偵さんみたいでかわいい。
伶奈ちゃんそのポーズ超イイネッ!
心の中で褒めまくっとこう。
おっと伶奈ちゃんが目を開けた。
「やっぱり変だよ!」
「ど、どしたの?伶奈」
「それだよ!それ!」
突然の言葉で僕も咲ちゃんも頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるように見えるだろう。
なんだろ?
「私たちずうっと晴海ちゃんのことを晴海ちゃんって呼んでるじゃない?」
結構真剣な表情をして伶奈ちゃんは咲ちゃんに話している。
それが何か変なのかな?
僕にはわからないけど咲ちゃんはどうやらわかったらしく「ああ!そうだね」と何かに納得したようだ。
今だに僕の頭にクエスチョンマークが浮かんでいたのが今だに見えたようで咲ちゃんが説明してくれた。
「ほら、私達はお互いのことを呼び捨てにして呼んでるじゃない?でも晴海ちゃんにはちゃん付けで呼んでるんだよね」
何がいけないのかまだわからない。
咲ちゃんと伶奈ちゃんは昔からの親友らしいからお互いを呼び捨てにしあうのはわかるし。
説明不足だと理解した伶奈ちゃんが補足してくれた。
「ほら、ちゃん付けってなんかお互い遠慮してる感があって……。もうっ!晴海!」
「うえ!?」
「説明めんどくさいから!これからは晴海のことを晴海と呼ばせてもらうよ」
「もちろん私もね!」
伶奈ちゃんの後に続いて咲ちゃんまでそう言いだした。
しかし僕のことを気にしてくれるのは嬉しいけどちょっと恥ずい…。
「え、えと今はちょっと恥ずかしいからちゃん付けでいいよ」
「うーん、それだとまだ会ったばかりみたいだし……そだ!」
伶奈ちゃんは「ええ〜…」といった後に頬をプクーッと膨らましている。 可愛い。
でもどうやら咲ちゃんが何か思いついたらしい。
「晴ちゃんってのはどう?」
晴ちゃん。晴ちゃん。 うん。まあ呼び捨てにされるよりは恥ずかしくないし全然構わない。 むしろ推奨!
「う、うん。2人がそれでいいなら」
「決まりー♪ただもちろん将来的には呼び捨てにさせてもらうよ。もちろん晴ちゃんも私達のこと呼び捨てにしてくれて構わないからね!」
女子の名前を呼び捨てにしたことないから自分が呼び捨てにされるよりそっちのが全然恥ずかしい。
ただ、まあ今はまだちゃん付けでいいみたいだしまあいいかな。
まだ2人は機嫌よく「晴ちゃんかー」「でもやっぱり晴海がいいよねえ」などと言っている。
2人の優しさに触れた日でした。