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これからの僕(私)  作者: 阿部いりまさ
これからの僕(私)〜本編〜
62/64

最終回 晴海はまた春を迎える


桜が舞う出逢いと別れの季節、端的に言うと春になった。 出逢いと別れ、といっても女で生きることを選んだ僕にとっては別れはない。

今日から僕改め、私は梵城学園の2年生となる。

やはり何もかもが初めてのことだった1年生の時と比べるといくらか心が軽い感じがする。 しかし進級と同時に襲ってくる問題、それがクラス替えである。

またみんなと同じクラスになれればいいんだけどクラスの数が多いしなかなか難しい。 だからクラス替えで自分がぼっちになるのを避けなければいけない!

よし!新しい友達を作るぞ!


*********


ピピピと目覚ましが鳴り、私は目を覚ました。

只今の時刻、午前6時30分。 なんでこんな早いんだ……。そうだ、春休みあけだからと張り切って昨日の夜に早くにセットしたんだっけ。 そいじゃ起きるとしますか。 新学期から遅刻というのも情けないし。

今日は早くにでて、待ち合わせの公園で桜でも眺めながら待ってようかなあ…。

ムシャムシャとパンを食べながら今日のことを考えながらソファに放った制服を見る。

この制服を、女物の制服を着てもう1年経つわけだ。 よし!さっさと着替えて公園行こうっと。

制服に着替えていると携帯が鳴った。 またアラームかな? あ、電話だ。


「もしもし?」


『あ、起きてるみたいね』


電話の相手は能見さんだ。

能見さん、初めて会った時は自分のことを天野めぐみだと名乗っていたけど本名は能見 彩。 研究者で…言っちゃえば僕の親的な存在かな。

いろいろ生活のサポートしてくれている。 2年生になってもサポートは続けてくれるらしいので普段の生活は安心安心。

ところで一体何の用だろ。


「どうしたんですか?朝から」


『うん。入学式なのに遅刻したらまずいと思って電話したの。でも起きてるみたいだし平気ね!』


この人は僕のことを小学生か何かと見ているのか…。 確かに二度寝はよくするけどこう大事な日は基本問題ないんだよね。私は。


「小学生じゃあるまいし朝くらい自分で起きられますよ」


「そうね。じゃあ学校で待ってるわよ」


「はい」


電話をきり時間を確認し、携帯をスリープモードにする。

そろそろいい時間だし公園行こうかな。


*********


ここの公園ももう何回も来ている。

桜の木がたくさん植えてあり、例年より桜が開花したのが遅いため満開に近い状態で見ることができる。

確か1番最初にここの公園に来た時は、買い物帰りで悠斗と晴海として初めてあったときだった。 まさかこんなところで中学の友達と会うなんて思わなかったなあ。

ていうか遅いな…。

ベンチに座りこれまでのことを考えているとランドセルを背負った可愛い1年生?が歩いているのが見えた。 もしかしたらあの子とか1年前僕がこの公園で休憩したとき、前で遊んでいたりしたのかな?

小学生の通学班をボーッと眺めているとその後ろから男子生徒が僕を見つけ走ってくるのが見えた。


「わ、悪い。寝坊して!」


む、どうやらやっときたらしい。

やたらハアハア言ってるのを見るとここまで走ってきたみたいだ。歩いてきてたりしたらさすがに怒るけど走ってきてくれてるんなら別に怒る必要もないよね。


「いいよ別に。それより早く駅行かないと電車間に合わないよ」


「わ、悪い。急ぐぞ!」


春休み明けからこんなんで1学期持つのかな。

この男子生徒、内田悠斗と一緒に登校するのもこれではや1年ということだ。 早いような長いような1年だったなあ。濃い1年だったことは確信が持てるんだけどね。

うん、これくらい急げばなんとか電車には間に合うかもしれない。


*********


誰もが一度は経験したことあるだろうけど長期休み明けの教室に入るのにはなかなか勇気がいる行為だ。

ドアを開けたらだいたいみんな見てくるし、そばに行ったら10人が10人「久しぶりだねー」とか「春休みは何してた?」とか話しかけてくるもんだ。

もちろんこの高校も例外ではなく僕がドアを開けると1番近くにいた西岡奈々実ちゃんに最初に声をかけられた。


「あ、晴ちゃん久しぶりだー!」


「奈々実ちゃん久しぶり」


こんな会話を奈々実ちゃんの後もいろんな人としながら自分の席へ着席する。

すると隣の席に座っていた小宮山咲ちゃんが話しかけてきた。


「晴ちゃん久しぶり」


僕の右隣りに席に座っているのが小宮山咲ちゃん。

僕がまだ相良晴海になったばかりの頃、高校に入学してからの一番最初の友達。 それ以来何かと咲ちゃん達と行動するのが多くなったから、咲ちゃんにはとても感謝している。おかげで色々なことを教えてくれたし、いろいろ遊びに行ってくれたりしたし。

そして僕の左隣りにいるのが筒井圭吾君。 今は悠斗と「おひさー」などと軽い会話をしてるけど高校での男友達で1番仲がいいのは彼だ。 初めて話したときは缶ジュースを紹介してくれたっけ。あれ実は今も飲んでるんだよ!美味しいからね!


「クラス替えどうなるかなー…」


コミュ力ありありな咲ちゃんもどうやらクラス替えが不安らしい。

私達がなぜ前のクラスにいるのかというとうちの高校は講堂で始業式をやった後に2年生からの新クラスを張り出すという珍しいかつ面倒くさい方法をとっているため。 中学校や小学校だと春休み明けに登校したらもうクラス発表されてたなあ。懐かしい…。

そのためこのクラスにいるのは今日のこの時間で本当に最後となるわけだ。

咲ちゃんとしばらく話しているとガヤガヤしてた教室がいきなり静かになった。担任の先生が教室に入ってきたからだろう。

簡単な挨拶や、このクラスの感想を述べた後先生は「講堂に移動だ」といい、みんながそれに従い教室からぞろぞろと出て行く。

僕はいつも通り咲ちゃんと話しながら移動していると後ろから誰かに思いっきり抱きつかれた。


「伶奈ちゃんか!ビックリしたー」


「ビックリされたー!」


この元気な女の子が日高伶奈ちゃん。 咲ちゃんの友達で入学式の日に咲ちゃんから紹介されてすぐに仲良くなった高校で2番目にできた友達。ファッションにとても気を使っていて私も服選んだりしてもらったこともある。 咲ちゃん、伶奈ちゃん、悠斗、圭吾、私で一緒にいることが多いけど実は伶奈ちゃんだけ別のクラスだったんだよね。 2年生では一緒のクラスになれればなと思ってるけど…。

途中で合流した伶奈ちゃんを交え3人で話しているとすぐに講堂についた。


「じゃあまた後でねー!」


「うん」


「またねー」


伶奈ちゃんと別れて私達のクラスの列の席に着く。 ここの席のここからの眺めも今回が最後だ。 充分に目に焼き付けておこう!

これから始業式がこの講堂で始まるのだ。


*********


始業式は相変わらず話がやたら長く眠くなる校長先生や、去年新しく生徒会長になった榎田真純先輩の話を聞いた後いろいろあって、閉会した。 2年に進級した後に校歌を歌うと今までと少し違うように聞こえてくるような感じがした。 きっと3年の卒業式に歌う校歌なんてのは今までとは全然違うんだろうなあ。

そんなこんなで、私達は今新しいクラスが張り出される場所へ向かっている。


「なあ、もしクラス変わってもまたみんなでどっか遊び行こうな!」


「筒井いきなりどうしたの?違うクラスになるかなんて自分で確かめてからわかるんだから。今そういうこと言わないの!」


「でも、みんなでは遊びに行こうね!」


やっぱりみんな不安が大きいらしい。 でも圭吾の提案は賛成だ。ていうかこの中で反対の人なんていないはず。

しばらくみんなで歩くと人集りがある。どうやらあそこに張り出されているらしい。 ここに来てすごいドキドキしてきた!


「よし!みんなで見にいこ!」


咲ちゃんがそういいみんな人集りの中へ入っていく。

人の隙間をグイグイ進みやっと人の名前が見えるくらいのところまでたどり着けた。

みんなは……この人混みではぐれちゃったかな。 周りを見てもみんなは居なさそうだしクラス見ちゃうか。

えーと、2ーAには誰の名前も書いてない、2ーBもという感じで見ていくと僕の名前があった!僕は2ーFだ。

他の人の名前は、と探していたら悠斗達が後ろに来ていたらしく一言二言話すとまた紙に向き直り名前を探すと思わず笑みがこぼれた。


「あ!晴海!どうだった!?」


悠斗が聞いてきた。

よし!伝えよう。今、僕が心から思っていること。

これからまた私と私たちの1年が始まるんだ。


「うん!みんな、今年もよろしくね!」


私の2年生が始まる!



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