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これからの僕(私)  作者: 阿部いりまさ
これからの僕(私)〜本編〜
59/64

58.晴海は真実を知る


ただいま僕の家にて天野さんと会議中である。

これは漫画だったら確実にコマの中にドンッて文字が入っているだろう。

いや、今はそんなことどうでもいいか。


「ちゃんと説明してくれますね?」


僕は少々声を低くし、鷹宮の写真を見せながら天野さんに聞くが声がもう女なのでそこまで怖くはない。

天野さんは無言を貫いている。

これが事情聴取なら黙秘権が発動しているところだがこればっかりは黙秘されていては困る。 なんとしてでも聞き出さなくてはならない。


「わかった。全て話すわ」


その言葉を聞いてホッとした。

このままずっと黙られていたら僕も疲れるし。

それにどんな言葉が次に出てくるかもとても興味があった。


「実は私は天界の人ではないの…」


「いや、別にそれはいいんです」


天界の人ではないことをこれほど重く伝える人が天野さん以外にいるのだろうか。 いや、絶対にいない。


「そう。実は私、クローン技術の研究者なの」


「は?」


素直な感想がこれ。

は? クローンてそれどういうことだ。 こんなポンコツな人が研究者?天界の人だって言った方がまだ信じられるレベルだ……。


「私は国の要請を受け、クローン技術を研究していたの」


おお、なんか映画やアニメっぽい話になってきた。 手が震えている。


「何年もかけクローン技術はようやく完成し、鷹宮さんのDNAでクローンを作った。でも同じ人間が二人存在するなど本当はあってはならないことだとクローンを作った後に気づいたの」


「ちょっと説明が雑な感じがしますが続きを聞かせてください」


正直信じられないけどこの後の言葉は大体予想できる。

それにワクワクしている自分がとても怖い。 自分の正体を知るのが怖いのではないぞ。


「そこで私たちはクローンを全く別の人間にするために事故死した君の脳を回収し、君の記憶というデータをコンピューターを通してクローンに上書きした。その結果誕生したのが君、相良晴海なの」


流石に僕も驚きを隠せない。隠せるわけがない、こんな事実を聞いて驚かない人間などいるはずがないのだ。

まさか自分が鷹宮のクローンだなんて。


「そして私はあなたに嘘をつき生活に支障がないように自らあなたのサポートすると決めたの」


「……」


「本当はすぐあなたにこの事実を伝えなければいけなかったのに……本当にごめんなさい!!!」


そう言って天野さんは深々と頭を頭を下げてきた。

頭を下げる前天野さんはいつものような冗談を言っているような顔ではなくマジな顔だった。

どうやらこれが真実だったらしい。

でも、


「いや、謝ることなんてないですよ」


「え?」


頭を上げた天野さんはうるうると泣きそうな顔をしながら信じられないと言った感じだ。


「別に僕がクローンであろうがなかろうが結局もう女になってますし。それに僕は一度死んでるんです。むしろ僕の方から生き返らせてもらってありがとうって言いたいくらいで……」


僕がこう言っている間も天野さんはうるうるとと泣きそうになっている。 ダメだこれ。泣かせちゃダメなやつだ!


「だから…えっと、普通の人じゃ体験できないことも体験できてる分僕は幸せ者っていうか。えーっと…えーと。……僕は別に今の生活が嫌だなんて思ってません!だから安心してください!!」


「相良しゃーん……!!」


そう言って天野さんは僕に抱きついてきた。


「うえ!?」


抱きつきながら相良さん相良さん言いながら泣いている。

こ、これはどうすればいいんだ。 彼女とかいたことないし本当これどうすりゃいいんだ!? ていうか結局泣いてるし!!


「はいはい!わかりました!」


そう言って天野さんを引き剥がした。

まだシクシクいっている。

しょうがない。もうちょいフォローしとくか。


「天野さんが本当のことを教えてくれて本当に助かりました。だからもう泣かないでください!」


ほんとお願いしますと天野さんに頭を下げる。

いやほんとにこれ以上泣かれると僕も泣いてしまう。


「天野…じゃないです」


「え?」


「天野めぐみというのは偽名で私の本当の名前は能見(のうみ) (さや)です」


「そうですか。じゃあこれからも僕のサポートお願いします!能見さん!」


「はい!」


そう言うと天野さん…いや能見さんはさっきまでの顔とは全然違う顔になりいつもの顔に戻った。

とりあえず良かった。これで僕も泣くはめにならなくて済みそうだ。

しかし、僕がクローンってことはほんとにこれからも女として生活していくことになるわけだ。

いや、もう覚悟は決まってる!

僕は女として生きる。 今日から本当の女としての人生スタートだ!!

うおー!!と僕が心で燃えていると能見さんに話しかけられた。


「あと、もう一つお話が」


「?」


「実は戻ろうと思えばいつでもあなたの体に、相良海都さんの体に戻ることができるんです」


「えええ!?」


今の僕の決意は一体何だったんだ。

そう言うことはもっと早くに言って欲しかったものだ。


*********


能見さんに話を聞くとどうやらこの体と同じように相良海都のDNAからクローンを作り出せるらしい。 そこからさらにここまでの記憶などをコンピューターを通してそのクローンの脳に上書きできるということだ。

しかしこれにはリスクがある。もし記憶やらなんやらのデータの上書きが失敗してしまうと組織細胞が破壊されて今までのこと全てを忘れてしまうと言うのだ。相良晴海のことだけでなく相良海都として経験してきたことも全て。


「もちろん私はあまりオススメできません」


能見さんもそう言っている。

僕もそれは流石に怖い。

今までの晴海としての記憶だけでなく海都としての記憶も全てなくなってしまうということは今までの僕は死んだも同然だ。 それに海都としての記憶はもちろん晴海としての記憶も消したくはない。

女になっていろいろな人と出会って経験した思い出が全てなくなってしまうのは今の僕が死ぬの以上に恐ろしい。

ダメだな。 今は答えを出せそうにない。


「少し…考えさせてもらってもいいですか?」


「はい…」


このまま晴海として生きるか、海都として生きるか……。

どうすりゃいいんだ……。









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