55話. 晴海はおもわずワクワクする
冬休みも終わり学校が始まった。
この頃になると受験生が本格的に焦ってくる季節なものだ。 高校受験は大体あと1ヶ月ほどで行われる。
僕も1年前までは中学3年生の受験生でありどこにでもいそうな普通の男子だったのに、どうしてこうなった……。
そういえば、お正月に引いたあのおみくじのことだが僕の生活が特に何か変わったかと言うとまったくそんなことはなく冬休み前と何ら変わらず忙しい毎日を送っている。
所詮はただのおみくじか…。
そう考えている僕の周りには咲ちゃん、伶奈ちゃん、悠斗、圭吾らが集まって何やらワイワイ話している。
「今度3連休じゃん?みんなでちょいと遠いとこ行ってみない?」
確か最初にそう言いだしたのが伶奈ちゃんだっただろうか。 成人の日がある関係で3連休となる週がある。おそらくその連休を利用してみんなで旅行に行こうというところか。 いや、普通に遊びに行こうって言ってるか。
「まあ俺は構わないけど。何処行くのよ」
「冬といえばスキーかな?」
圭吾の何処に行くかという問いに咲ちゃんが答える。
スキーね。 僕はどちらかといえばスキーは苦手な方かもしれない。 今の季節、今度の連休になるとスキーに来る人も増えるだろうし、何よりわざわざ好んで人混みの中に行くのも嫌だ。
「ああ、いやいや。あたしふつーに旅行とかじゃなくて日帰りのつもりだったんだけど」
どうやら伶奈ちゃんは旅行のつもりはなかったらしい。
連休だからというのは連休の間に遊びに行って連休の間に疲れを取るためにとかそんな理由だろうか。
それなら僕も助かる。人がたくさんいるところに行かなくて済むし…。
しかし伶奈ちゃんは次にとんでもないことを言いだした。
「だから!みんなで東京シムジーランド!行こう!ね!?ね!?」
「ど、どうしたの?伶奈ちゃん」
やたら伶奈ちゃんが強く言ってくるので思わず声に出して聞いてしまった。
しかし咲ちゃんのほうから解答がきた。
「伶奈って東京シムジーランド行ったことないからね」
「う……」
意外すぎる。
伶奈ちゃんのような人なら友達とかと一緒に遊びに行くのも珍しいことではないだろうに、シムジーランドに行ったことないんだ。
「だ、だからここにいるみんなと行けば思い出にも残りやすいだろうし……。だから行きたいなって」
おかしい。
伶奈ちゃんはこんな乙女だったであろうか。 それともこの伶奈ちゃんはニセモノ?ニセモノなの? ねえねえ、本物のガサツな今時の女子高生って感じの伶奈ちゃんを何処にやったの!?
返して!!僕の知っている伶奈ちゃんを!僕の理想の伶奈ちゃんを返して!!!
理想のって言っちゃったわ。
でも、そこまで言われたら今更別のところに行きたいなんて言えない。
「うん行こうよ。シムジーランド」
「え!?いいの!?晴ちゃん!」
「うん。断る理由も予定もないし」
「ありがとー!!!」
そう言って伶奈ちゃんは僕に思いっきり抱きついてきた。…当たってます!当たってます!やめて!
「それじゃシムジーランドに決まりだね」
咲ちゃんもどうやら不満はないらしいし、悠斗や圭吾もウンウンと頷いているのでシムジーランドでOKということだろう。
そういえば最後にシムジーランドに行ったのは確か小学生ぐらいだった気がする。 あの時は確かうちの家族と従兄弟の家族でいったんだったかな。 ポップコーンの容器を持ってパレードを見ていたのをなんとなくポップ覚えている。
そういえばシムジーランドは行ったことはあるけど友達と行くのは今回で初めてだ。 人混みは苦手だがそう考えると少し楽しみになってくるから不思議である。
「じゃあ細かな予定は後々決めるか」
「そうだね。あと1週間あるし」
「楽しみ〜♪」
シムジーランドか……。少し勉強しておいた方がいいかな…。その方が園内じゃスムーズに回れるだろうしそうすることにしよう。
確か駅に本屋くっついてた気がするしそこで買えばよかろう。
***帰宅***
「シムジーランド!?」
天野さんはやたら大袈裟にその名前を叫んだ。
シムジーランドに高校生が遊びに行くのは何も変なことはないと思うんですけど。
ていうかこの人いつまでこの家にいるつもりなんだ……。
「なんか今日いきなり決まっちゃって。だからその日までこの家にいるなら留守番頼もうと思って」
「そ、それは構わないけど」
「おお!ありがとうございます!」
天野さんの承諾も貰ったのでこれで本格的に準備することができる。 …まあ承諾なくても行くつもりだったんですけどね!!
やだ僕悪い子っ!
このノリ疲れるからやめよ。
「ところでいつまでこの家にいるんですか?」
「その聞き方だと早く帰って欲しいと言われてるように感じるけど。まあいいや。じゃあ晴ちゃんがシムジーランドから帰ってきた次の日くらいまで居させて貰おうかな」
「わかりましたー」
さて、布団入って買ってきた本でも読みながら寝るか。