48.晴海の文化祭が始まる
あの日、集合場所に戻ったら奏真がいて少しドキッとした。
だけど奏真は誤ってくれた。
奏真は何も悪いことしてないのにね…。実際僕は海都なわけだし、なんか申し訳…
「"なんか申し訳ないなあ"なんて思ってるのか?」
「うええ!!??」
ビ、ビックリしたあ!!
何いきなり人の心を読んでんだよ!?
悠斗って特殊能力でも使えたのか……まあくだらない冗談はこの辺にしておいて、と。
「な、なんだよいきなり!」
「いやいや海都が最近悩むことといったらこの間のことくらいじゃないかと思ってさ」
「なんか心見透かされてるみたいで気持ち悪いね……。てゆーか微妙に失礼な発言があったような」
「いや気のせいだぜ」
絶対気のせいじゃないと思うんだけどな。
「ていうか教室なんだから僕のこと海都って呼ばないでよ。いくら声小さくたってこっちが心配になるし」
「悪い悪い。晴海ちゃん」
この前は奏真の高校の文化祭。
そして今日はうち梵城学園の文化祭『銀杏祭』が始まる日。
この梵城学園は地域とのつながりを非常に重要視しているから私立だけどチケット制じゃない。
関係者じゃなくてもいろいろな人が来れるってことだね。
えーっとあと30分くらいか。
はやく着替えないと!!!
***着替え後***
メイド服を着た僕は自分の姿がうつっている鏡をジーっと見る。
正直自分でも似合っていると思う。いや、ナルシストとかじゃなくてね。
でもやっぱりスカート短いな……。僕も男だからわかるよ、スカートが短い方が男ウケがいいくらいさ。
でもさすがに自分で着るとなると話は別だよ……。
「お、晴ちゃんやっぱり似合ってるね!」
さすが咲ちゃん。
すんごい似合ってる。
ここまでメイド服とバッチリ合ってる女の子はいるのかと思うくらい。
そういえば咲ちゃんに彼氏の噂とか全く聞かないなぁ。
思わず告白してしまいそうだよ……何考えてるんだ僕は。
「咲ちゃんもすごい似合ってるね」
「ふふっ。ありがと♪」
絶対惚れてる男いるだろ!
誰も告白しないなら僕が告白しちゃうぞ!!
男に戻るまで百合楽しんでやるぞ!
いやいや、何考えてるんだ。
「もうそろそろ始まるだろうし教室行こうか!」
「で、でもやっぱり恥ずかしい…」
「自信持って!」
「そ、そんなこと言われても〜…」
「それに男の子達もメイド服なんだし平気だよ」
うっ……、そういえばそんなことになってたんだっけ。
すっかり忘れてた…。
野郎のメイド服なんて誰得かっての!!!!
うう、見たくない……。
『これより梵城学園文化祭!銀杏祭をはじめまーす!!!』
陽気な声、多分生徒会長かな。
そういえばちゃんと見たことなかったなあ。
講堂いったらほとんど寝ちゃうし。
どんな人なんだろ。
て、もう始まるのか!?
「晴ちゃん急ご!」
「う、うん!」
***教室***
「うっっっわ………」
「な、なんだよ!その顔!」
悪夢だ。
教室には男子には決して似合うことなどないメイド服を着た者がたくさんいる。
こんなんでこの店来てくれる人いるのかなあ……。
「悠斗のせいだかんな」
「圭吾だって最初はウッキウキで賛成してたくせによ…」
何言ってるんだあの人達は。
「しかし晴海よく似合ってるな。俺が選んで良かった!」
「え!?この服選んだの悠斗なの!?」
「ああ、女子の魅力を引き立たせるようなメイド服を探し周ってようやく見つけたんだ」
へ、変態だ……。
しかも女子だけならまだしも男子も同じデザインのメイド服を着ている。
やっぱり男子は執事のままで良かったんだよ……。
「あ、晴ちゃん晴ちゃん」
「どしたの?」
「晴ちゃんはまず教室の前でお客さん呼んで欲しいんだって!私と一緒にね♪」
客引きか……。
まあ教室の中で接客するよりは楽かもしんないかも、ただ大声で叫べばいいだけでしょ?
楽勝よ!楽勝!
「うん、わかった」
「えっとじゃあ晴ちゃんが黒板側の前のドアあたりでお客さん呼んでね!私は後ろのドアで呼ぶから」
「りょーかい!」
***客引き始まり***
えーっと確かうちはだいたいが飲み物を売ってるんだったっけ。
よし、じゃあ…。
「オ、オレンジジュースありまーす……」
やっぱり恥ずかしい…。
咲ちゃんは…。
「どうぞー♪ 冷たくて美味しいジュースありますよ〜」
なれてるんだなあ。
もしかして接客のバイトでもしてるのかな。
それはともかく僕も負けてられないな!!
時々くる変な目線は気になるけど思い切って、男子に思いっきり媚びる感じで行こう。
「美味しい飲み物たーっくさん!ありますよ〜♪よってってくださ〜い♪」
は、恥ずい………。
教室の中で接客の方が良かったかも…。
これいつまで続くわけ!?
はあ〜……。
「晴ちゃんイイね!!そんな感じでよろしく頼むね♪」
だ、誰か助けてくれえええ!!!