46.圭吾は疑う
「相良さんってもしかして海都なんじゃないか?」
「え」
今、奏真の口からとんでもないことが言われた。
一体なんで、どうして僕のことがわかったんだ?
僕の演技は完璧……じゃないにしてもいきなり「あれ?こいつ海都なんじゃね?」なんて思うわけない。
でも奏真の目を見ればわかる。
奏真は僕のことを相良晴海ではなく相良海都だと確信していることを。
「え、えっと……」
***悠斗と圭吾***
悠斗にとっても中学からの友人である相良晴海が相良海都だとバレそうな頃、悠斗と圭吾は再びグラウンドに訪れていた。
「全く、なんでお前とペアになるかねえ……」
それはこっちのセリフだと悠斗が言うがそれを気にせず圭吾は続ける。
そんな彼の姿はまるでえらい人が大きいホールの会場の壇上で講義しているようにも見える。
「文化祭といえば女の子と一緒に校内を周り、楽しくすごすし周りの生徒達はそれを羨ましく見つめる。言って見ればデート!なのになぜ……何故なんだ……」
「お前がペアになるって言い出したのはやっぱりそう言うことかよ。下心丸見えだったわ!」
普段女子といるときの彼とは想像もつかない変貌っぷり。
やはり彼も思春期男子の一人故そうなるのも当たり前である。
「悠斗!お前はわかってない!女子だけで移動すると文化祭はどんな危険なイベントであるかを!」
「な、何だよ危険って…」
さっきまでの言葉は悠斗も圭吾の前を歩きながら適当に流していたのだが「危険」と言う言葉に反応し、立ち止まり後ろ向いて尋ねる。
そんな彼に対して圭吾はまたも壇上に立つ人のように話す。
「あのなぁ悠斗。文化祭と言えば高校生が一年間の内で一二を争うくらい気合いを入れ、そしてはっちゃけるイベントなんだよ」
「それがどうしたんだよ…」
「だから!気合いを入れるのは問題ないとしてもだな、程度を知らずにはっちゃける奴らが問題なんだよ」
「……」
悠斗は黙って圭吾の説明を聞いている。ただ少し退屈そうな顔をしているが……。
「そのはっちゃける奴らはなこの文化祭で恋人を作ろうと意気込んでいる奴らもいるわけよ。自分の高校にはろくなのいないから他校の女子高生を狙ってる奴らとかを!ここまで言ったらもう説明は必要ないよな!?」
「いや、最後まで頼むよ」
「だーかーらー!女子達を男子と分けてしまったらそのはっちゃけてる男子にナンパされてそのままころっとナンパ男と付き合いだしちまうかもしれないだろーが!?」
悠斗はここまで聞いた自分がバカだったと言い、ため息をついてまた前を向き歩き出した。
圭吾がかなり焦って「文化祭を女子だけで行動させる危険」力説しているが彼は全く焦る様子はなかった。
「お前、女子達が心配じゃないのかよ!?」
全然心配していない悠斗に対して圭吾は問い詰める。
「別に心配なんかしてないよ」
「なんでそう言い切れんだ!?理由を言ってみやがれ!!」
めんどくせーなと言って立ち止まり、また後ろを向き圭吾を見ながら話始めた。
「まず小宮山はナンパ男なんかにころっと落ちるようなアホな女じゃないと思うし日高はアホみたいな性格だけど限度はわきまえてるはずだ。二人とも心配なんかするだけ無駄だよ」
確かに悠斗の言うことはもっともなことだった。
多少伶奈に対して失礼な事を言っているが…。
だが圭吾はまだ納得していなかった。
「晴海は?なんで晴海のことは言わないんだよ」
「え、あ…あー晴海は……」
悠斗は晴海が本当は男だと言うことを知っているからこそ、無意識に晴海を除外していた。
「いや、ねえな」
だがあっさりと「ない」という言葉で片付けた。
これも彼が男だとしっているからこそ出てきた言葉だろうが当然圭吾は納得せずに問い詰める。
「はあ!?なんだよそれ!むしろ晴海こそ一番危険じゃねえか!無理やり連れて行かれるかもしれねえし、相手がイケメンだったらいくら晴海でもついて行かねないし」
「いやいや、ないから。絶対」
「お前なんでそんなに自信ありげに言うんだよ!?わからないぜ?ああいう娘に限って実は彼氏を欲してたりするもんなんだ」
アホかと圭吾に言い悠斗はまた前を向いて歩き出した。
圭吾の言うことは決して間違っていないかもしれない。ただしそれは"普通"の女の子に対してのことであり晴海は決してそこには含まれない。
「悠斗のその自信は何処から来るんだよ。むしろ晴海だってのによ」
その言葉を言い終わったあと圭吾はハッとし「まさか」と圭吾にまた話しかけた。
「お、お前!晴海と付き合っているんじゃ!!!???」
「んなわけねーだろ!!!しかも声がでけんだよ!!」
車のクラクションのにも匹敵しそうな大声で圭吾は叫び、当然周囲にいた人たちの注目も集まる。
悠斗は愛想笑いを周囲の人にしながらサササッとグラウンドから離れ、あまり人気のない校舎裏まで圭吾を連れて逃げてきていた。
圭吾の表情は悠斗に「付き合っているのか」と問いた時から変わっていない。
「どーやったらそんな考えになるんだよ?声でかかったし」
ようやく表情が変わり悠斗と話し始めた。
「だ、だってお前があまりにも自信あり気に晴海のこと言ってるから。晴海を完全に信用してて…なんかこう恋人が互いを信じあってる…みたいな感じ」
(そりゃ、あいつはホモじゃないしなあ……)
「信用してるっていうか、何だろうな。あいつは恋愛とか興味持つような奴じゃないことは中学から知ってるし。ラブレター貰った時や鶴岡に絡まれたときだって断ってるしさ」
「いや、あいつ男だから男に興味持つはずないよ」とは当然言えずに咄嗟に考えたにしてはまあまあ筋が通ってる説明だ。
「た、確かに…」
すぐに乗せられてしまうのもどうかと思うが。
だが悠斗は今の件で完璧に圭吾の気持ちを知ることとなった。
(こいつ、やっぱり…)
安心しきった表情の圭吾とは対照的に、悠斗は小さなため息をついてグラウンドに戻っていき圭吾も悠斗を追いかけていった。
「もう少しで待ち合わせの時間になるし、そろそろ移動するか」
彼らは待ち合わせ場所へと向かっていった。
本話より晴海の一人称視点以外にも三人称視点として書かせて頂いてる部分がございます。ご了承くださいm(_ _)m
コメントありがとうございます!
やはり頂いたコメントを見ると「よっしゃー!頑張ろー!!」という気分にもなれますし、何よりとても嬉しいです!!!
不定期更新となっていますがこの作品を見ていただける方がいることに本当に感謝しております。
長くなってしまいましたのでここらで終わらせていただきます。
ありがとうございました。