19.晴海は海都だとバレる
ども。阿部いりまさですっ!今回は書くことが特にないと思われるので失礼しますっ。それでは。
「はああ………」
朝のHRが始まる前、僕は大きなため息を1つ。
このため息の原因は昨日の榎田さんの事。まさか彼女が僕のことをすっ、すす、好きだったなんて……。それに加えて昨日はいきなり帰っちゃったからなんか顔合わせ辛い。
でもまあ、榎田さんは2年生だし多分校内をうろつかなければ合うことはないと思うけどさ……。
「どーしたんだ晴海?」
「悠斗?」
「ため息なんてついたら幸せが逃げて行くぞっ!」
悠斗はそういいながらニッと笑って白い歯を見せる。
全く、こっちの気も知らないくせにっ。
そういえば僕の事を知っているのは最近影が薄い天野さんと悠斗だけだよね。悠斗にこの事いえばなんかいい解決方法を聞かせてくれるかもっ!
「ねえ、悠斗。ちょっとだけ悠斗に相談したいことがあるんだけど……」
「ん?俺でいいならいいけど…」
「実は昨日ね……」
僕が言いかけたそのとき、
ガラッ!
「席つけー。席つかないやつは遅刻だぞー」
ありゃりゃ、なんというタイミング。
「あ、悪いっ!話の続きはあとでなっ」
「う、うんっ。昼休みでいいよっ」
僕はそれに答える。
そりゃ、今すぐ相談にのってくれってわけじゃないし全然構わないんだけどさっ。
わざわざ悠斗は自分の時間をなくすことなんてないんだから。でも、悠斗に相談できないとなると天野さんくらいしか相談できる人が……いや、あの人もいろいろと変だし、天野さんに相談するのはやめにしとこうかな…。
******
「もうっ!悠斗ったらどこに行ったんだよっ⁉」
午前の授業も終わって今は昼休み中、悠斗に相談しようと思ったのだけど教室に悠斗はいなかった。
というわけで今捜索中でありますっ!
「もうっ、確かに悠斗は自由だけどさっ」
見つからないし教室に戻ろうかな~、どっちみち待ってれば教室に戻ってくるわけだしっ。それがいいかなっ。
僕が教室に戻ろうとしたそのとき、
「あっ!相良さんっ!」
げ、まさか、
「え、榎田さん……」
しまった!僕としたことがっ。不用意に教室からでるんじゃなかったよっ!
最初から教室でおとなしくしてればよかったよっ!!!
「昨日は大丈夫だった?」
「え、あ…はい。平気です……」
う、上手く言葉がでてこない……。
「よかったあ。いきなり帰っちゃったから心配でねっ……」
うう、なんて純粋な人なんだっ。目もろくにあわせられないしっ……。
い、言っちゃったほうがいいのかな……、海都はもう死んじゃったよって、でもそしたらなんで知ってるのとか聞かれそうだし………。
それに初恋なんて叶わなかったらすぐに踏ん切りがつくもんだよねっ⁉
言わなくて平気かなっ!
「き、昨日はごめんなさいっ。ちょっと用事があったの忘れてて……」
「そうなんだっ。よかった♪」
キーン…コーン……カーン…コーン
「予鈴なっちゃったね。それじゃあまたねっ。相良さん♪」
「はいっ!」
いっちゃったか、でも普通に話すことできたし、もう悠斗に相談する必要もなくなったしっ、結果オーライかなっ。
僕がそんなことを考えていると、
「あ、海都!いたいた!さがしたぞ!」
「あ、悠斗!って学校じゃ晴海だっていったじゃん……」
「悪い悪い、慌てたりするとつい海都って呼んじまって。それより、俺に相談するっていってなかった?」
全くこの男は………。
「もう平気ですっ!それより早く教室もどんないとサボりになっちゃうよっ」
「そ、そですか………」
よし!なんか悩み事がなくなったらかなりいい気分になれた気がするよっ!
午後の授業もがんばろっ♪
******
キーン…コーン……カーン…コーン
「悠斗、まだあ?」
「待てよ。今靴はいたとこだからっ!」
午後の授業も終わり、今僕たちは学校から変えるところ、咲ちゃんや伶奈ちゃん、筒井君は先に帰ったみたい。
「早く帰えんないと見たいテレビみれないんだからっ!」
「なんだよそのテレビ」
そんなやり取りを校門からでて交わしていると、
「相良さん…」
あれ?この声って、
「え、榎田さん!」
榎田さんも電車通いなのかな?
でも梵城高は電車通い多いし別に驚くことでもないけど。
「おい、あの人って体育祭のときの人か?」
「う、うん。そうだけど…」
悠斗がかなり小声で話しかけてくる。
「あのー、榎田さん。どうかしたんですか?」
最初に僕に声をかけたときからずっと下向いて黙ってる……。ちょっと心配だなあ…。
「あのね、私、昼休みで相良さんと別れたときにね」
「そ、その後に何かあったんですか?」
「うん…。その後伝え忘れたことがあったから相良さんのとこ戻ったの。そしたらさ、横にいる悠斗君と話してて」
え?ま、まさか……
「そのとき、横にいる悠斗君が相良さんのことカイトって呼んでて。私どうしても気になっちゃって」
ま、まずい!
これは上手くごまかすしかないかなっ!
「もう、いいじゃねえか。教えてやれよ」
悠斗が小声でまた僕に話しかける。
いったい誰のせいでこんなことになったと思ってるの!この男は!!!
でも、確かにこのまま隠すのも僕も何かこう、心が痛む感じがしてやなんだよなあ……。
もう、いいか。
「う、うん…。僕は相良海都。榎田さんと同じテニススクールに通ってたカイトです……」
い、言っちゃったよ~、これからはもう軽蔑されるのかなあ……。せっかく仲良くなれたのに……。
「教えてくれてありがとっ♪カイト君っ!」
「え、あの、何とも思わないんですか?前まで男の子だったのに今は女の子なんて…」
「うん…。何とも思わないと思えば嘘になるけど、でも1番は、カイト君とまた会えて嬉しいってことだよっ♪」
「そ、そうですか…」
「うんっ。カイト君のこともわかったしっ、それじゃあまた学校でねっ。晴海ちゃん♪」
彼女はそういったあと、駅のほうに走っていった。
「よかったな!受け入れてくれてよ」
誰のせいで……もういいやっ。
「そんなこと言ってないで、僕らも早く帰ろうよっ」
榎田さんは良かったけど、
これはまた天野さんに叱られるなあ……。