18.晴海は恋バナをする
どーも。阿部いりまさです。今日も少し頑張ってみましたのでぜひ最後まで!
「も、もう疲れました……」
「頑張って!相良さんきっと素質あるよっ!」
こう意気揚々と僕に話しかけてきているのは、2年生の榎田さん。
何故彼女が僕といるかというと、それは数時間前に遡ります。
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「明日ねっ!晴海ちゃん!」
「うんっ!バイバーイ」
やっと今日も学校終わりかあ。体育祭もおわったし、しばらくは気楽にいけるかなあ。
いやいや、そういえばもう少しで中間試験だ!どうしよう……。でも、一応勉強してるし平気かなっ!
そう考えながら校門から出ようとすると、
「あっ!相良さん!」
あれ?
あの娘たしか……。
「由美ちゃんっ⁉どうしたの?」
「ちょっと練習サボろうかな?っと思って校内をぶらついてたんですっ」
おいおい!そんなんでいいのっ⁉
「それで相良さんを見つけたん……そうだ!」
「え⁉どうかした?」
「確か相良さん、テニス部にきてくれる約束だったはずですっ!今から行きましょう!」
「え?今から?サボってたんじゃ…」
「さあ早く早く~♪」
僕の手を引っ張りながら彼女は言う。
聞こえてないね、これは……。
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「よしっ!それじゃあ見ててくださいねっ⁉」
言われなくてもこれじゃ帰りづらいし、見てるしかないよっ!
何分か由美ちゃんの練習やらゲームやらぼーっと見ていると、
「あれ?相良さん?」
「え?あ、榎田さん」
なんで中等部専用のテニスコートに榎田さんがいるんだろう。
「なんで相良さんが…」
「あっ、私はあそこにいる寺内さんにテニス部こない?って言われたので。榎田さんはなんでここに?」
「私はここの中等部から高等部に上がってきたんだけど、中等部の時、テニス部に入ってたのっ。その関係で今は中等部の人達に指導しにきてるのっ」
へえー、なるほど。
後輩想いなんだねっ!
「あ、どうせならちょっとだけテニスやってみない?」
「え…」
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という経緯で僕は今、テニスをしているんだけどこれがなかなかきつい!
一応僕もテニスをしていたんだけど、もう数年ラケットに触れてすらいなかったせいでほとんど初心者みたいになってるよっ!
しかも、もう1時間くらいぶっ続けで練習してるから体力がそろそろもたないっ!!
「え、榎田さん……。きゅ、休憩しましょう………」
「う~ん、そうだねっ」
ふぅ、やっと休憩かっ。
よいしょ、と僕はコートの横にあるベンチに腰かける。
僕の横に榎田さんも座る。
しばらく2人とも黙って中等部の人達の練習を見てたけど、急に榎田さんが、
「ねえねえ、相良さん。相良さんの初恋はいつだった?」
え?
い、いきなりどうしたの⁉榎田さん⁉
でも、ちゃんと答えないとねっ!
初恋…初恋といえば中学入ってすぐの頃、同じクラスにいた結構可愛い子に惚れたのが最初かな~?
それ以前はそんな覚えてないしなあ。
ていうかこれ、男の子のときのことじゃん!言えるわけないよっ!
「い、いや覚えてなくて…」
「そうなんだっ。私の初恋はね、小学6年生の頃なのっ!」
小学6年生か、やっぱりその辺が多いのかな?早い人は早いかもしれないけど、
「そうなんですか。初恋の人はどんな人なんですか?」
素直に気になるしねっ。
こんな美人を惚れさせる男の子っ!
「実は相手は小学5年生の同じテニススクールに通ってた子なのっ」
年下かあ、ちょっと以外かも。
「ちょっと一緒にペア組んでテニスしただけなのに私ったらすぐ惚れちゃってね…」
顔を赤らめながら言う先輩はなんか可愛らしいなあ。
僕がまだ男の子だったらこれはもう告白してるよっ!
「へえ、テニスうまかったんですか?」
「うん、私より全然上手くてその人に絶対勝ってやるって思って必死に練習したのっ」
そっか、その人のおかげできっと榎田さんはテニスを続けられたのかなあ。
「それで、結局どうだったんですか?恋は叶いましたかっ?」
「うんうん……。その人、ちょっとしたらそのテニススクールやめちゃって、うまかったのに。私も結局こっちに引っ越してきちゃったし、あの人がどうなったのかわからないんだよね……」
「す、すみません……」
「え?全然平気だよっ!実は私もあんまり覚えてなくて。名前だって覚えているのがあってるか微妙だし……」
「そ、そうなんですか。その人の名前はなんて言うんですか?」
榎田さんを惚れさせた男、気になるぞっ!
「確か、『カイト』とかそんな名前だったような……」
え?
そういえば確かに僕もテニスを……ってないない。カイトなんてざらにある名前だし、それに榎田さんもうろ覚えみたいだしもしかしたらカイトって名前じゃないかもしれないしねっ!
「えーっと、あ!写真があったんだ!」
写真⁉
それをみれば僕かどうかわかるっ!
「一度だけ、テニススクールの人達と撮ったの!カイト君はこの子だよっ。私はこっち♪」
ぼ、僕だ……間違いない。
そういえば確かにこの写真の娘、いたような気が………そうだっ!
僕と対戦して負けちゃってワンワン泣いてた娘だっ!
そっか、だから最初に榎田さんとあったときに始めてじゃないような気がしたんだっ!
まてよ…そうなると榎田さんの初恋の相手は僕ということで……なんて僕はもったいないことを………ガックリ………。
「カイト君今どうしてるんだろうね…」
女の子としてあなたのそばにいますよっ!
あ、でもどうしてるんだろうってことは海都が死んだってことは………。
「久しぶりに会いたいなあって時々思うんだよね……」
う、なんか心に響く……。
言ってあげたい、けど、死んだなんていえないよっ………。
「あっ、もう少しで最終下校時刻だねっ。そろそろ帰らないと…」
「そ、そうですね……」
「…相良さん大丈夫?なんか元気ないみたいだけど……」
「へ、平気ですっ!それじゃさよならっ!」
「え、ちょっと相良さん!」
これはきつすぎる!
このまま純粋な榎田さんといたら僕の心がズタボロになっちゃうよっ。
ああ……今度から榎田さんとどう接したらいいんだろう…………。