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第七十七話 強い弱いの問題ではない

随分と遅くなってしまいました。

申し訳ありません。


以前から時系列絡みの指摘を受けていましたが

進展最優先のこの話と同時に、加筆版を考えています。


加筆版といっても基本的に同じ話で視点を固定化させているだけなので

キルミヤに関してはそれほど加筆しません。

大幅加筆はその他のメンバーなのですが………

見てみたいという方はおられたりするでしょうか??

 それに気付いたのは、俺、少年、旦那さん。

 俺は精霊で、少年はきっと索敵で、旦那さんは……たぶん野生の勘で。


「な、なに?」


 突然同時に立ち上がった俺達三人に姉御は仰け反り驚きの声を挙げる。

 旦那さんは少年の手を離し、その途端少年は林の奥へと駆けて行った。


「ちょ、あなた!」

「エリーゼ、帰ろっか」


 いつも通りの調子で姉御の手をとる旦那さん。

 新婚期間はとっくに過ぎているのに手を繋いで歩くがデフォルトの二人の惚気に当てられそうになる俺。


 じゃない。そーじゃない、それよりもだ。


「あの、俺も離してもらえません?」

「え? なんで?」

「何でって、一人で行かせるわけにもいかないじゃないですか」

「なんで? たぶん彼の問題でミア君の問題ではないよ?」

「ちょっと、二人とも何の話をしているの」


 姉御のチョップを受けて、旦那さんと俺は一瞬無言になり、視線を交わした。


 言います?


 言える?

 

 言えないですよね~


「あははは」

「あははは」


 渇いた笑いを二人で挙げた直後、姉御のこめかみに青筋が見えた。


 やばっ!


 俺は慌てて旦那さんの手を振りほどこうとしたが、馬鹿力で外れやしない。


「あの、本当に離してもらえませんか!? あいつを一人には出来ないんですよ!」

「彼はミア君よりもずっと強いよ」

「それは知ってます。さっき勝負挑んで負けました」


 『何やってんのお前』という呆れ視線を旦那さんと姉御の二人から頂いてしまったが、こっちはそれどころじゃない。

 単体での強さというのはよく分かっている。でもあいつは本調子じゃない。それでこの数を相手にするのはきついだろう。どう数えても十人はいる。

 一人が複数相手に戦うのは圧倒的に戦闘技術に差がある場合か、一対一で戦える状況にもっていけるかのどちらか。でなければ勝負にならない。

 今回は、そのどちらでもない。それなのに少年は迷わず気配の方へと走って行ってしまった。


「じゃあ言い方を変えようか。彼はミア君が思っているよりもずっと強いよ」


 茶の瞳が諭すように語りかけてくるが、俺は首を振った。


「言いたい事は分かりました。さっきもエリーゼさんを心配してあいつの話題を避けたんですね」

「まぁそうだね」


 少年は自分の過去を語らない。

 その過去を語られて、何も反応しない保証はどこにもない。

 だから姉御に危害が及ばないように姉御の言葉を遮った。

 自分よりも強い相手に姉御を守りきれる確証が無かったから。


「確かにあいつはジョーカーのような、規格外な奴だと思います。

 でもね……この世に絶対なんて事柄は無いんですよ」


 僅かに、旦那さんの目が鋭くなる。俺の実力を見せる為、模擬戦をした時のように。

 だが、近衛所属騎士の名に恥じない強さを持っている事を知っていても、俺は引く気は無い。


 知り合いが危険かもしれないというのに、何もしないでいる事なんて出来ない。

 それだけは絶対に、出来ない。


「アーリー。手を離してあげて」


 援護は思わぬところから飛んできた。

 姉御は、俺の腕を掴んだままの旦那さんの手に自分の手を重ね、俺ではなく旦那さんに顔を向けた。

 その途端、鋭かった眼差しがのんびりとしたものに戻り、俺の腕を締め付けていた屈強な手も外れた。


「ミア君、今日中には戻って来なさい。報酬を渡さないといけないから」

「…………はい」


 俺は姉御に深く頭を下げ、身を翻し少年の後を追った。

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