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第三十話 ましなコマンドを希望

「まぁいいや。そんで今度は何の用?」


 ごまかし紛れに今更に聞いてみよう。

 案の定クロクロは盛大なため息をついて口を開いた。


「何故力を隠しているの?」

「してないしてない」


 パタパタ手を振ると、さらに溜息をつかれてしまった。

 これは意見の相違だろう。俺としてはただ全力投球してなかっただけだ。と、誤魔化しても仕方がないか。

 確かに隠す気は初めからあった。それを誰かに非難されるとは考えてなかったが。


「だったら初級魔術を使って見なさいよ」


 ふっふっふ。いいだろう。無問題だ。


 俺は掌を前に出して口頭契約を唱える。

 結果は嬉し恥ずかし、マッチ火が灯るのみ。


 いやーいいねー。安全って最高だと思うわ。


 俺が満足して内心頷いていると、対照的にクロクロの視線が凶悪なものへと変わっていた。


「……どうあっても見せる気は無いと言う事ね」

「あのさぁ、勝手に人の事を過大評価するのやめてくれる?

 何と言われようとこれが俺の実力だし、クロクロが望むような………そういや何を望んでるんだっけ?」


 クロクロはがっくりと肩を落とした。

 そんな気落ちしないでほしい。聞いたかもしれないが一回聞いたぐらいじゃ忘れる。口頭での内容なんて議事録にでもして残しておかないと言ったうちには入らない。それが大人の世界というものだ。何度それで泣きを見たことか。


 頑張れクロクロ、大人への道のりは遠いぞ!


 無駄に応援していると、諦めきった顔でクロクロは再び口を開いた。


「魔導師団員に入らないかとずっと聞いてるでしょ。

 きちんと実力を出せば私が口を挟まなくても問題ないとは思うけど」

「ないない。魔導師団員(それ)は無い」

「どうして? 誰もが羨む魔導師団員よ? 一員となればパージェス家としても何かと都合がいいんじゃないの?」

「まぁパージェスとしては願ったり叶ったりかもな」

「でしょ?」

「でもマッチ火(これ)だからね」

「本当に嫌になるわ。

 貴方、決闘の時に上級魔術を使ったでしょ」


 ……そうか。あれは上級に位置づけされてしまうのか。ちょっと迂闊だったな……


 誤魔化そうにも、あれだけ教師が居合わせた中で判断されたものを否定するのは不自然だし、だからといって肯定するのも避けたい。となると、


「何で決闘の事知ってんの?」


 昨日の今日でと首を傾げて聞いてみれば、呆れたという顔をされてしまった。


「学院中知ってるわよ。サジェス家の人間が決闘を持ち出して挙句の果てに負けたって」

「げ……」

「げって何よ。勝っておいて、げ、はないでしょ」


 いや、げ、だ。まさしく、げ、だ。げ、で間違ってない。

 だってあの坊ちゃんだよ? 鼻で笑うという天然記念物級の特技をお持ちの方だよ?

 それが学院中に負けたと広まれば報復に出てこないはずがない。

 俺の平々凡々ライフがどんどこ遠ざかってしまうではないか。

 ここに来ている時点で彼方へと行ってしまっている事はこの際気にしない方向で。


「勝ったってつもりは無いよ。ただ穏便に済ませたかっただけで」

「穏便ねぇ。それなら負けてしまうのが一番良かったでしょうね」

「……あの攻撃に当たれというか。さすがクロクロは超常現象族。鬼だな」

「人を化け物の類にしないで。何よ、ちょーじょーげんしょー族って」

「一言で言うと『自然科学では説明されない現象』が超常現象だな」

「しぜんかがく?」

「自然科学っていうのは、科学的方法により一般的な法則を導き出すことで自然の成り立ちやあり方を理解し、説明・記述しようとする学問の総称かな」

「かがくてき方法?」

「物事を調査し、結果を整理し、新たな知見を導き出し、知見の正しさを立証するまでの手続きであり、かつそれがある一定の基準を満たしているもののこと………だったっけ?

 簡単に言えば、誰が見てもそうだねって言える方法だって事だ」


 噛み砕いて説明すると、クロクロは考え込むように眉間に皺を寄せて視線を落とした。


「つまり……私は誰が見ても説明できない現象だと言いたいわけ?」


 おお! すごいすごい。ここでは意味不明の言葉ばっか羅列したのにクロクロが順応しようとしている。


「当たり当たり。クロクロは頭いーね」


 拍手しながら言ったら殴られた。


「私はそんな変なものじゃないわよ!」

「つっても気配なく後ろに立たれたらびびるわ」

「それは、立場上稽古してなきゃならないから自然と身に付いたもので」

「気配なく後ろに立ってする事……暗殺?」


 再度殴られた。


「逆よ! 何で私がやる側になるのよ!」

「え? クロクロって暗殺されかけた事あるの?」

「ないわよ!」


 力いっぱい否定された。

 そんな経験もってない方がいい事だとは思うが、そんなに力いっぱい否定しなくてもと思ってしまった。

 ついでに、もしもの為の護身術を身に着けている事はよくよく分かったが、それが人の後ろに気配を絶って近づく理由にはならないと思うのは俺だけだろうか。


「もういいわ。

 そうやって隠そうとするのなら、何故隠すのかを突き止めるまでよ」


 自信満々に言いきられてしまった。

 押してダメなら引いてみろという思考回路は持ち合わせていないようだ。ガンガンいこうぜ! みたいな思考回路しかない感じで。

 もっとましなコマンドアクションはないのだろうか?


 言うだけ言って満足したのか、クロクロは立ち上がって服についた葉っぱを払い行ってしまう。


 これで何度目になるか。サボり。

 魔導師団員うんぬん言う以前に退学になりそうな勢いだ。


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