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第二十二話 講義は真面目に

 魔導と魔術の違いと言われても、より有能なものが魔導と言われているぐらい。

 魔導書と魔術書は存在するが、属性だとかに差は無いし、やり方もそう対して違わない。違うところがあったとしても術ごとに変わるものなので、それが魔導と魔術の違いとは言えない。


 ノーコンだったから途中で覚える気無くしたんだよねぇ。


「さぁ。違いなんてあるの?」

「今は明確に区別する必要が無いほど魔導師の数が減りましたからね」


 首を傾げた俺に、少年は苦笑気味に頷いた。


「もともと魔導師は魔を導く者。魔術師は魔を創る者と言われていました」

「魔を創る? なんか魔導師よりそっちの方が強くね?」

「それは個人の力量に左右されると思います。

 魔は未知なるもの、不可視のもの、神なるものという意味があり、世の理から外れた現象を示します。

 魔術師は魔を自ら創り出し、魔導師は精霊の力を導いて魔を現します。

 この時用いられる力が魔力と同調力です」


 道なき道、獣道に入っていきながら話す少年。

 息切れ一つせず話せる事が羨ましい限りだ。


 不意に、目の前に手が差し出され、顔を挙げると少年が立ち止まってこちらを見ていた。


「手を」

「……そこまで体力無しじゃないぞ?」

「いいから」


 ややキツく言われ、どーしたものか。

 背丈も低い年下に心配される俺って、傍から見たら限りなく情けなくない?

 でも少年は引き下がる気ゼロのご様子で手を差し出したまま止まっている。

 しぶしぶ手を取ると、思ったよりも強い力で握られ、掌から暖かさが伝わってきた。


「………少年、手」

「この力の事は黙っていてもらえると助かります」


 再び前を向き歩き始めた少年は早口で言った。


 あーいやー、それではなくて、手が硬いなぁと思っただけなんだけど……

 なんか前のめり思考になっちゃってるから黙っていよう。


「魔術師は魔力を用いて、魔導師は同調力で」

「え? まだ講義続くの?」

「…………」

「やめて、無言の威圧とかやめて」


 振り向き何も言わない少年に繋いでない方の手を挙げ降参をアピール。


 まったくもう何なんだ。

 俺は不真面目代表生徒だぞ? そんな俺に講義したところで覚えるわけがない。


「ちゃんと聞いて覚えてください」

「読心術の使い手!?」

「顔に書いてあります」


 顔が引き攣った。

 やばい。身体の年齢に精神がひっぱられている可能性がある。

 しっかりしろ俺、平々凡々ライフ目指すならポーカーフェイスは必須スキルだ。


「簡単に言えば魔術師は自分の力で、魔導師は精霊の力で魔を発現するということです。

 魔導師が優れていると言われるのは同調力は消費されるものではないからです。魔力は消費されるので限界がありますが、精霊を集められる限り魔導師に限界は理論上ありません」

「そりゃすごい」

「…………」

「…………」


 ちゃ……ちゃんと聞いてるよ?


「分かりませんか」


 へ?


「魔導師とは精霊に愛されし者の事です」


 あぁ。なるほど?


「今魔導師と言われている者の多くは魔導師ではありません。

 魔術師は多かれ少なかれ同調力を持っていますから、ある程度なら擬似的な事が出来ますが同じことは出来ません。

 貴方が先日使った初級魔術と呼ばれるものは、魔術師が魔力切れの時に代用といて編み出したものです。

 本来の魔導には言葉も型もありませんから」


 ……これ、何て言えばいいの?

 何でお前が知ってんだよ~ って言えばいいの? それとも空とぼけるべき?


「精霊の加護を求め精霊を集めその力を借り受けたいという意味の術ですから、貴方が使えば精霊が飛びついて力を貸すのは当たり前と言えば当たり前で、同調力を封じられている貴方に制御出来ないのも当然です」


 はい。空とぼけるのはアウトですね。

 何で知ってるかね~


「そのままでは危険ですから、封印を外した後に集まる精霊を制限しておきましょう」

「そんな事出来んの?」

「あなたの為なら精霊は協力してくれます。

 ただ、魔術の使用は控えてください。生命力を使用する事になりますから」

「魔力無いなら失敗じゃないの?」

「……普通はそうだと思いますが」


 ちらっとこちらを見て、どことなく疲れた顔で溜息をつく少年。

 

「をいこら。人の顔見て溜息つくとはどういう了見だ」

「仕方がないじゃないですか。試金石に目をつけられるだけの素質を持っているという事なんですから」

「…………試金石………ってなんだっけ?」


 また溜息を付かれた。



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