第十一話 魔法少女に必要なものは
あっぷするのを忘れてました・・・すいません
二人連れ立って寮に戻る道すがら、口げんかは継続。
「何で俺まで……全部お前のせいや」
何でか怒りの矛先をこちらへと向けてくる青年。
「騒いだのはお前だろ?」
言ったら、キッと睨まれた。
「どー考えたってお前のせいやろ! もっと真面目にしぃ!」
「真面目に火を付けたじゃないか」
「どこが真面目や! …………あー……もういい。アホ臭くなってきたわ」
「なんだよーふっかけておいて」
「やる気が無いって分かってたんや。俺が大人にならな」
「うわっ一人だけ大人ぶってるよー。困っちゃうよねー俺だけ特別ーみたいなー」
「お前なぁ……」
どっぷりと疲労を滲ませた顔で肩を落とし黄昏始める青年。
これはちょっとからかい過ぎたかと俺は反省し、青年の気分が少しでも浮上するように明るく言った。
「そんな深く考えるなよ! 禿るぞ!」
「誰のせいや!!」
気楽に投げたボールが剛速球で返ってきた。
うむ。これだけ元気があればよいよい。
「だから肩肘張るなって~ どーせ魔術なんてノリと感覚が全てなんだからさぁ」
「ひとっつも使おうとせん奴に言われたぁないわ」
「つってもなぁ……魔術に魅力を感じないっていうか」
「はあ!? 何言うとんねん!」
「あ、最初はすげーなぁーと思ってたよ?」
手品師だと思ってたが。
そりゃまぁ某RPG、某アニメ、某小説のごとくと、あらゆるジャンルのファンタジー業界において、魔法の二文字は欠かせず、それに対して憧れを抱く者も多く居た。職場に堂々グッズを持ち込み一人悦に入っている同僚も居た。
俺だって憧れと言う名の興味はあった。くそ恥ずかしい呪文だって使えるのならいくらでも我慢してやろうとさえ思えるぐらいには興味深々だった。
多勢に無勢を一発逆転。これぞ男のロマンだろう。
そんな状況に陥りたくないというそもそも論は見ない事にして、格好良さでいけば俺の中ではかなりの水準を維持している。
杖の一振りで並居る敵をなぎ倒す。無双だ。爽快だ。
その俺が今まで魔術の存在に気付いて何もしなかったわけがない。
俺だって試した。くそ恥ずかしい呪文だって真面目な顔して言ってやった。
「だけど、俺に魔術は向いてないんだよ」
がっくし肩を落として言ったら、青年は『何言ってんのこいつ』みたいな顔をした。
いや『何言ってんの』って、そのままだからさー。
「使おうとした事があるんか?」
「……………………………………………あります」
鼻で笑われた気配。
何この心理的いぢめ!
分かってるよ! 師事なしにやろうとしても出来ないっていう一般常識は知ってるよ!
けど考えてみろ! 居候の俺が、「あの~実は魔術を習いたくてぇ~ (もじもじ)」とか無いだろ!!
既に化け物指定受けた後だったのに、いくらこっちの身体の可愛さ駆使しても、それこそ『何言ってんのこいつ』だよ!
てか、『こいつさらに化け物になる気か』だよ!
「そんなん出来るわけないやろ」
「っく。分かってる事を他人にも言われると無性にむかつく」
「拳握るな握るな。殴ろうとするな!」
スパンと頭を叩かれた。
あの……俺は殴っちゃダメで、あんたはおっけーってなして?
「一人で出来るわけがないんやから、これからやろ? ここに入れたって事はちっとは勉強してたんやろ? それを生かせ」
一向に俺の視線の意味に気付かず話を続ける青年。
まぁいいだろう。俺は大人だ。人生二度目の出来た大人だ。この程度で怒りはしないさ。
「勉強なんてした覚えはない」
「何を堂々と。そしたら試験はどないしたんや」
試験?
「……お前、受けてないんか?」
急に青年の目が不穏な形へと形態変化を始めた。
「そんなに見つめられても俺はノーマル。嬉しくない。つかキモイ」
「ふざけけるとこちゃうわ! なぁ! ほんまに受けてないんか!?」
あんまり必死に言うので、記憶を引っ張り出してみる。
俺は自分からこの手の機関に接触した事はない。従がって俺自身が受けに出向いたという事は無い。
そしてニートで自堕落生活を送っていた俺の周囲でそんな事をしそうな相手はただ一人。
……あったな。
思い出した。思い出しましたよ。
女かと思うほど筆まめで、都に出てからもせっせと手紙を送ってきていたグラン。その手紙の中に魔術の基礎を問うものが何度も入っていた。
何だ何だ~? こいつも魔術に興味ある口か? ぷぷ。一人で出来るわけねーじゃん。
とか思いながら、来るたびに適当な事を書いていた。
Q魔術の基礎となる元素を答えよ
Aすいへーりーべーぼくのふね ななまがりしっぷすくらーくか
Q魔術を成立させる為に必要なものを答えよ
A愛と勇気と正義
Qまた、それはなぜ必要か答えよ
A魔法少女の基本装備だから
怒られた。
それでもって、何のために帰ってきたのか目の前に紙出されて、監視されながら三十枚にも上る問題用紙に回答させられた。
「あれだな………間違いなくあれだ」
「受けたのか?」
「遺憾ながら」
「なんでそこで遺憾になるんや」
だって学校とか今更めんどー
と、言ったらさらに殴られそうな気配がしたので、俺はごにょごにょと言葉を濁した。
「はー……まぁええわ。ちゃんと受けたっていうんなら、それだけの勉強してたって事やろ?
それを生かしたらええやんか」
「それとこれとは話が違うんだよ。言っておくが、魔術は使えた」
「な……ほんまか!? なら!」
「使えるけど、使いたくないんだよ」
「……はあ?」
俺は『なんで?』という視線に耐えきれず顔を逸らした。
魔術はきちんと発動した。発動したのだが、結果が……俺、不器用さんでした。というだけ。
これはもう使えない。人前では絶対使えない。
それで泣く泣く魔導師になって千人切りルートは諦めようと決意していたのに。
「使えるんなら使えば――」
俺は青年の言葉を遮って口を塞ぎ、傍にあった木に押さえつけるようにしゃがませた。