頭の中そればっか
男
「世の中、不公平だよな」
女
「引っかかる女が悪いのよ。この女々しい男も何がしたいの?」
男
「喫茶店の子がすきなんだよ。でも勝負はついた」
女
「勝負してたの?」
男
「……」
僕はその場を去ろう
と、すぐにそう判断を下した
「カイケイヨロシク」
千円札を前田に強引に渡し、走り去ろうとした。途中、喫茶店の自動ドアに引っかかった。ガタンと音がする。
呆然と僕をみる女性店員さんと前田の視線が痛い。
その後のことはほとんど覚えていない。電車に乗って、隣のおじさんが汗くさかった、それくらいしか覚えていない
あれから3日が経った。だいぶ冷静になれたと思う。
大学の図書館で僕はレポートを書いていた。形式的でいい、なんて言われるけど、そういうのはしっかりやりたいと思うのが僕の性分だ。
とは言いつつも少しだけ休憩は必要だ。能率が下がる。 調べモノをするフリをしつつ、図書館のパソコンで僕はネットサーフィンをしていた。時々浮かぶ喫茶店での愚かな自分の行動を 恥ながら。
『脳内メーカー』
そんなモノが、検索をしていると目に止まった。自分の名前を打ち込むとその人の頭の中を横から見たようなイラストが出る。そして、その人が普段どんなことを考えているのが分かる、なんて触れ込みで、合コンとかでネタになる、なんて友達が言っていたのを思い出した。
僕はなんとなく興味本位で自分の名前を打ち込もうとキーボードを叩いた。
しかし、手を止め、少し考えると友人
、前田の名前を打ち込んだ。ズルいと頭で分かっていても、なんとなくそうなった。僕は
『開始』
のボタンをクリックした。
僕は画面を覗きこんだ。
女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女男女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女
一瞬僕は吹きだしそうになった。このメーカーは前田のことをよく分かっている。そう思った。あの後、前田は喫茶店でのことを言ってこない。
フ~
息を吐くと恐る恐るぼくは自分の名を打ち込んでみた。どうか公平な判断を…
『開始』
クリック!
女女女女女女女女女HHHHHHHHH
女女女女女女女女女HHHH男HHHH女女女女女女女女女
HHHHHHHHH
HHHHHHHHH
女女女女女女女女女
もっと大変な事になってる?僕は少し落ち込んだ。信じられずカタカナや平仮名で試してみたが、あまり結果は変わらなかった。この脳内メーカーは僕の事を分かってない…
「お前マジメな事いつも言ってるけど、頭の中でこんなことばっかり考えてるのか?」
僕は一瞬ドキリとすると、後ろに前田が立っているのに気づいた。ニヤニヤしながら彼は画面を覗いている。
「ううるさいな!所詮プログラムだよ」
動揺していた。
「二ヒヒ、男はみんな、そんなもんだ」
「違うよ!」
「そういえば喫茶店の女の子から連絡あったか?」
前田は言った。
「あるわけがない」
ぼくは投げやりに言った。Yahoo!のホームページに画面を戻す。
「実は俺、お前が去った後、彼女にアドレス渡したんだよ!
そしたら連絡きたぞ。成功した。後は腕次第ぃ~」
自分の二の腕を前田は指さした。と言うかショックだった。
「俺の勝ち~」
「勝負なんてしてない」
くそ!
「まあそんなおこんなよ」
前田は余裕だった。前田は前髪をいじる。誰も気にしてない、そう言ってやりたかった。
また次の女の人に移るのか?彼女が可愛そうだ。前田の犠牲者になるのか…
僕は涙がでそうになる。
前田は図書館の壁にある鏡に映る自分の姿を見ると、また前髪を気にし始めた。
「誰も気にしてないんかいない!」
今度は口に出てしまった。
「はあ?え?なに?」
前田は僕に目を移した。
周りの人が僕たちを見ているのがわかる。
僕はその場を立ち去った。
くそったれ!