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1年と14日後の男の閃き


「時が経つのは本当に早い」


「そうね。あっという間に私、オバサンかしら」


「そうだね~キミはきっとあっという間に、くそば…」


(女の拳が当たる音)


「そんなことないよ、ぐらい言えよ」


「僕は悪くない…

僕は悪くない…(泣)」




 大学を辞めた彼女から喫茶店で衝撃の発言を受けてから一年と二週間後、僕は同じ喫茶店で、同じ席に、ノッチと座っている。ノッチにここでランチしようと強引につれてこられた。なんでもクーポンがあるらしい。



 チクチクとするあの感覚はもうなくなった。只、僕はデジャブってやつを信じたくなった。

 店に入る時、例の店員さんが今日はいた。彼女の顔が少しひきつっている気がした。まあ仕方ないのか…



 少しぎこちない様子で店員さんは、僕たちに水を出し、注文を受け、頼んだAランチを二つ運んできてくれた。心なしか僕の様子をうかがいながら…嫌がられている…そんなとこか、女のひとに嫌がられると言うのは、嫌われるより辛いのかもしれない。まあ僕は終始、ノッチと話していたから、気にはなったけどショックを受けるほどの

ことじゃない。



「まさか前田くんが大学やめるなんてね」

ノッチが口調を強め言った。


「そうだね~まさか女好きってしってたけどね」

僕は笑いながら言った。

 僕はつい先ほどの大学での高橋先輩とユウコ先輩とのやりとりを思い出す。









「話ってなんですか?」



「まあな、実はさ…」

高橋先輩は教壇に手をつきながら言った。


「先生!それは重要なことですか?」

ユウコ先輩が遠く離れた席から言った。講義はまだ続いているらしい。僕はなんだかおかしかった。


「そうだ。赤線ひいとけよ」

高橋先輩が言った。なんかいい雰囲気だ。


「あのそれで…?」



「ああ、ごめんな…」


高橋先輩がタメを作った。



「実は……


ユウコくんと僕は結婚することになりました!」



少しホッペを赤らめながら、高橋先輩は言った。ユウコ先輩もホッペタが赤い。


パチパチパチ…


ユウコ先輩は手をたたく。



「お、おめでとうございます」


僕はいきなりの発表に戸惑った。


「そうだったんですか…」


「そうなんですよ」

ユウコ先輩


「式は?」



「これから決めるとこだよ。今日は伊達さんにそのことで話だったんだ」



「そうですか~よかったです」

僕は言った。



「ふふありがとうなあとさ、それからもう一つ!」

高橋先輩は指を立てた。


「なんですか?まさか子供?」

僕は少しニヤニヤしたと思う。


「ははは~違うよ~それは考えてるけど」

高橋先輩。


「なにいってるのよ」

ユウコ先輩。


「前田のことだ」

高橋先輩は言った。


「前田ですか?あいつは今休みです」



「いやアイツは大学をやめた」



「え?」


僕は耳を疑った。



「驚くのも無理ない。なんせ急だった」



「でもなんで?」


「彼女との間に子供ができたらしい。」



「はい?え?喫茶店の?え?え?」

僕は混乱した。


「いやいや何をいってんだ?違う。とりあえずそれはない」

高橋先輩は僕を面白そうに見ていた。


「昔の彼女とだ!」


「昔の?」


「そう!ずっと前田のその彼女は前田にそのことを隠していた。そして前田は最近それを知った」


「はあ」

話が見えない。


「そして生まれたばかりの子供のため、彼女のために大学をやめた」


「え?」

話が見えないところで進んでいた。


「結婚するとか先走ったこと言ってたけど、まあそれは2人が安定してからだそうだ」


「そうなんですか~寂しくなりますね」

本心だ。


「それからこれは言っていいのか分からないが…アイツから伝えるように頼まれた。子供のことも相談に乗ってたしな」

高橋先輩はジッとこちらを見た。


「なんですか?」

僕はそれを受け止める。


「そのなんだ…前田の相手は、ちょうど一年前の彼女だ」



「……え?」

僕は言葉を失った。チクチクが蘇る。


『私、妊娠したの?』


そっか、アイツの子供…完敗だな……

まあ終わったことだ。




「そんな寂しい顔するな。そのうちまた新しい出会いなんていくらでも転がってるさ」


言葉を失っている僕を見て、高橋先輩が言った。



「いや僕の負けです。男なんてそんなもんです」

なんだか少しだけ涙が出そうだ。



「そんな顔するなよ~勝つとか負けるじゃないだろ~~世の中、白と黒じゃないぞ。灰色だってある」


「……」


「でも前田は負けたって言ってたぞ~白と黒じゃないのになあ」

高橋先輩はニヤツいていった。


「はあ?」

意味が分からなかった。


「とりあえずお前さんの勝ちだよ」

高橋先輩が言うと心強いのは確かだ。

 でも今回は理解不能だった。



「まあとりあえず式には来てくれよな」

高橋先輩は言った。


「ナイスファイト」

ユウコ先輩。


そういうと2人は去っていった。

 ああそういえば、この時、僕は講堂での閃きを思い出した。

 今度は半角で打ち込んでみたらどうだろう?


脳内メーカーに、と。



…どうなんだろう?




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