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夜道に見つめる

掲載日:2026/04/01

 夜道に見つめる


 僕には一つ、古い記憶がある。

 足元しか見えないような暗く広い場所で泣いていた。なぜこんなところにいるのか分からなかった。歩いても歩いても出口が分からず、しまいには座り込んでしまった。怖かった。暗くて、見つめても、壁の見えない暗闇が広がっていた。ふと気づくと、遠くから小さい光が近づいてきた。僕は怖くなり、逃げ出そうとしたが、体が動かなかった。今思えば腰が抜けてしまっていたのだろう。僕がこの経験をした時は腰が抜けるという言葉すら知らないほどに小さかったのだった。小さい光は徐々に距離を積めてくる。


「だいじょうぶ。怖がらないで。」


 優しい、聞き心地の良い声だった。このように、僕に声をかけながら、彼女は近づいてきた。彼女は緑のパーカーを着ていて、パーカーは正面のチャックを開けていた気がする。そのフードをかぶって、右手に提灯を持っていた。どうもそれ以外の特徴を思い出せないのだ。彼女は僕の目の前まで近づくと、しゃがんで手を差し伸べた。僕は迷わずその手を取った。子供だった僕にはその細くも広い手のひらに心を安らいだ。彼女は手を繋いだまま。長いこと暗闇の中、一筋の光に向かって歩いていた。僕の記憶はそこで途切れている。本当に、深いことあまり覚えていないが、彼女がそばにいると光が見えた気がした。そもそもこの記憶は僕が難病にかかり、生死を彷徨っていた時の記憶だ。完治どころか命すら危ういと言われた程だが、僕は後遺症一つ残さず完治した。それはあの記憶の出来事のおかげだとしか思えないのだ。その後の定期検診でお医者に話しても、君の精神の強さがこの病気に打ち勝ったのさ。としか言ってくれなかった。

 ………と、まあ、くどい話だけど、面白かったか?。」


 パチパチと軽く拍手が起こった。


「やめてくれ、柄でもない。」

「いや〜先輩って、こういう怪談とか怖い話とか、疎いものかと思ってましたよ。」


 湖山には話したはずなのに初めてのようなリアクションをする。


「俺らの話した話の中では一番クオリティーが高かったな。」

「それだけ僕らが酷かったってことだろ。」


 みんなお互いの顔を見合って、思わずニヤける。


「社長が問題起こさなきゃ、こうして、社員でキャンプなんてできなかったですね。」

「そうだなぁ。」

「社長に感謝!!」


 みんなくだらないことで笑ってしまう。

 元々仕事でどっと疲れてるところ、社長の起こした問題で、仕事が一気に増えて一気に減った。忙しなく鳴り響いていた電話は市民の憤りをぶつける矛先となり、やっぱりなり続けていた。ついには営業困難となり、ほとぼりが覚めるまで、会社は休みになった。事実上の倒産である。きっと会社の休業が終わるのは社長が死ぬ時であろう。

 しかし、それにしても会社が潰れた三日後にキャンプだなんてどんな行動力だろうか。


「社員旅行とかいつか行きたいってみんな言ってたしなぁ。」


 その発言を後に沈黙が走る。まずい、話すことがなくなってきたのか。


「みなさん、これからどうするんですか?。」

「さあね。アルバイトでもして日銭を稼ぐよ。」


 佐島がつまらなさそうに言う。


「俺は弟の会社に当たってみる。あいつ社長なんだよね。」


 一方水山はこの先のことをよく考えているようだ。


「あっ言ってましたね。弟さんが社長だって。僕もお世話になろうかな。」

「いいぜ。紹介しとくよ。お前は一番仕事が早いしな。」

「先輩はどうします?」

「僕は実家に帰って家業を継ぐよ。それが嫌で都会に出てきたわけだけど、これ以上、親を困らせるわけにはいかないんだ。」

「あんまり働きすぎるなよ?」

「ああわかってるよ。またこうやって集まろう。」



 僕は朝早くにテントから出て、近くの堤防から海へ糸を垂らしていた。


「……おはようございます。」

「おはよう。」


 湖山は僕の隣に座った。


「ずいぶんと早いですね。」

「起きてたのか。」

「こういういつもと違う環境だと、眠れないんですよね。」

「繊細だもんな。陽気なやつだけど。」

「先輩は優しいですよね。堅物ですけど。」


 お互いに目を合わせず朝日を拝んでいる。


「死なないでください。」


 ………


「奥さんの後を追うとか。考えないでください。」

「……なぜ?」

「先輩が言ったじゃないですか。繊細だと。少しの変化でも気づきますよ。」


 湖山は立ち上がって


「姉から聞きました。先輩の実家は弟さんが継いでるんですよね。なのにどうして嘘をつく理由が…………」

「そう焦るな。大丈夫だよ。身を投げたりなんてしない。」

「…………そうですね。妄想が飛躍しすぎました。」


 湖山は顔を合わせようとしない。

 魚が釣り上がる。チッチッと音を立てながら堤防の上を跳ねまわった。


「少し寝ます。」


 湖山はそう言って、テントに戻って行った。

 その後のみんなが起き始めたら、朝食を食べて、テントをたたんで、チェックアウトを済ませた。湖山と何かあったのかと聞かれたが、何も答えられなかった。


「じゃ、この辺でお開きにするか。」

「まあ、この後予定がある人もいるしね。」

「じゃあな、お先に。」

「またな、いつかまた集まろう。」


 みんなで手を振って見送って、車を持っている人は各自、抜けて行った。

 最後はやっぱり僕と湖山だけになっていた。


「楽しかったですね。」

「そうだな。」


 湖山はそそくさと車に向かって歩いて行った。しかし、あと一歩というところまでで立ち止まって、口を開いた。


「………今日からちょうど2週間後に水山さんの弟さんの会社の面接らしいです。元気な先輩にお会いできるとを期待してます。」



 あれから家に帰らず、僕は墓参りにきていた。妻の実家が山田舎だったので、山から少し歩かなければならなかった。静かな林の中に墓地があるのは先祖の名残だそうだ。夜風を受けて、木々がさざめく。人里の光が届かず、墓地は暗く静まり返っていた。仏花が新しくなっている。誰か来たのだろうか?。目を瞑って、手を合わせる。なぜ、妻は死ななければならなかったのだろうか。通り魔に刺され、呆気なく逝った。最後は無理して笑顔を見せた。通り魔は精神病を患っていて、それ故の犯行。お金持ちの優秀な弁護士により、刑は軽くなった。妻の弟は優しいやつだ。それ故に事件のそれ以上の追及を望まなかった。残った唯一の家族を亡くして、立っているだけでも精一杯だろうに。彼は会社でもいつも通りを演じ続けていた。



 すっかり暗くなってしまった。ライトも何も持ってきていなかったので、帰りは絶望的だろう。そう思いながらも墓地を出ようとすると、入り口付近に一つの灯りが見えた。不思議に思い、近づいていくと提灯を持った人物が手を振っていた。緑のパーカーを着ていて、暗闇に溶けるような色の髪。僕は呆気にとらわれていた。


「久しぶり。」


 そう言って、彼女は微笑んだ。


「こんな時間に山奥に墓参りだなんて無計画だね。あかりも何も持っていないんだろ?。」


 あの時と何も変わらない。10代後半くらいの見た目で、瞳に提灯の光が揺れている。


「………驚いた。子供の前にしか現れないものだと。」

「別の奴と間違えてるね。私はただの送り屋だよ。」

「そうか……あの時は僕を送ってくれたんだな。」


 彼女は歩き始める。


「そう。あるべき場所にね。………にしても身長伸びたね。あんな私の三分の二ぐらいしかなかった子供が。時間が経つのは早いものだ。」


 僕もそれに続く。


「君も。今はフードをかぶっていないんだね。」

「イメチェン?ってやつだよ。」


 彼女の足音は耳を澄ませても聞こえないほどに小さかった。


「奥さん…………残念だったね。」

「…………あぁ。」

「君の奥さん、笑顔で言ってたよ。『私がいなくても大丈夫。みんな強いから。』って。」


 僕は信じられなかった。


「…………彼女のそばにいたのか?」

「送ってあげたんだよ。彼女はこの世には返せなかった。……少し時間をあげられると言ったけど。断られたよ。本当に助けが必要な人のためにもう行ってあげてってね。………」


●●●


 彼は目を押さえて泣いていた。いつかの時みたいに。泣くなという方が無理があるかもしれない。ずっと堪えてきたものが溢れてしまったのだろう。


 やっと立ち上がった。さて、話をしようか。


「君以外にもね、ここで泣いた人がいたんだ。」

「…………?」

「君は一人じゃないってこと。頼まれたんだよ。今日ここで、君が来るのを待っていてってね。」

「淳一くんか………」

「うん。湖山とか言ってたね。こっちは名乗ってないのにいきなり名乗り出すことだから何かと思ったよ。君の奥さんの弟さんだったんだね。」

「そうか、通りで。」

「君の身を案じてたよ。投げてしまうんじゃないかって。」

「…………」


 彼は目線を落として、ため息をついた。


「…….でも、まあ、その顔を見たら、その心配も要らなさそうだね。」


 私は彼の顔を見た。少し涙でうるんでるけど、目には光が灯ってる。


「私はここまで。月も出てくるだろうし、何より自分で歩けるだろ?。」

 彼は静かに頷いた。

「当分会うこともないと思うけど。またね。」


●●●


 彼女はそう言って、手を振って闇の中に消えて行った。すぐに月が顔を見せ、あたりを明るく照らしたが、振り返っても誰もいなかった。

あとがき

会社の社長がぶっ飛んでたり、同期が若者っぽいのも相まって駄作と言いざるおえないでしょう。(そもそも設定が緩いし意味不明)何より、ご観覧くださりありがとうございました。



もういっちょ

感想バンバンお願いします。ぶっちゃけ、自分の文章力と設定とストーリーの浅さは理解してるつもりなので。温かい目で見守ってくれたら幸いです。


さらに

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