第三十九章 ロイスのジレンマ
ロディルが地下牢から出てからも、浦辺は体中に走る得体の知れない痛みに襲われた。
辛うじてたとえるなら、体内に侵入した虫が筋肉を蝕んでいるかのようだった。
むず痒さも相まった異様な不快感と格闘しながら、どうにか体を起こした浦辺は壁にもたれた。
湿気により水気を含んだ冷たい壁が、痛みの影響で火照っていた体に心地好くフーッと息を吐いた。
「辛そうだな」
と、浦辺とともに牢に閉じ込められたロイスが言った。
「イヤな痛みだ。こんなよく分からない気分になったのは初めてだよ」
「それはそうだろう。侵蝕魔法は、耐久力のある魔物でさえのたうち回るほどの苦しみをもたらす恐ろしい魔術として知られている。それゆえ、悪用されるリスクを懸念して使用が禁じられた経緯があるが、人間に使われたという話は一度も聞いていない。どうなるかはオレにも分からないが、その苦しみは桁違いのはずだ。最悪は、死にいたるかもな」
と、ロイスは無遠慮に言った。
「ご丁寧にどうも。だけど、こんな所で死ぬわけにはいかないんだ」
「助かる見込みもないのに、強がりを言うなんてみっともないぞ」
「見込みはあるとボクは信じてる。ところで、キミは大丈夫なのか?」
「ほっといてくれ。本当はオレをこき下ろしたいくせに」
「なんでそう思うんだ?」
「陛下と隊長に煮え湯を飲まされた挙句、こんな地下牢に閉じ込められたからさ。そんなオレを本当は冷笑したいんだろう?」
「そんなつもりはない。キミは使役される騎士として、当たり前の行動をしたんだ。むしろ、揺るぎない忠誠心に感服してる」
「皮肉だな。そのせいでこんな目に遭ってるというのに」
と、ロイスは自嘲気味に笑った。
「確かに、結果的にそれが原因でこの牢屋に揃って閉じ込められたわけだけど、だからと言ってそう卑屈にならなくてもいいだろう?」
浦辺が言うとロイスはフンッと鼻を鳴らし、壁にもたれたまま黙り込んでしまった。
余計なことを言ってしまったかな、と思い浦辺も口を閉じた。
「…どうしてあんなことを?」
と、ロイスが唐突に聞いた。
言葉の意味を理解し兼ねた浦辺は怪訝な顔を浮かべた。
「どうして、隊長にあんな大それたことを言ったんだ? 断っておくが、隊長は憲兵騎士団随一の剣豪で誰にも負けたことのない実績を持つ方だぞ。昔から頭角を現していた隊長に対し口頭で、しかもあんな挑発的な態度で挑戦状を叩き付けるなんてまともとは思えない」
「そう言われても、ボクはロディルの実力をじかに見たわけじゃないから。…とはいえ、軽はずみだったのは確かに認めるよ。ただ、あの男のキミを蔑む言葉があまりにも鼻持ちならなかったものでね。ボクの世界じゃ、ああいうのは『パワハラ』といって大きな問題になるから余計に見過ごせなかったんだ」
と、浦辺はさっきのことを思い出して顔をしかめた。
ロイスも先ほどのことを思い出すと、曇った表情でうなだれた。
隊長として敬っていたロディルから信じられない…というより信じたくない事実を突き付けられたショックも相当だったが、なにより彼の心を激しく動揺させたのが、王女アイリスの殺害を隊長と国王が共謀して目論んでいたという事実だった。
幼馴染みであり王女であるアイリスを守るためならば、捨て身の覚悟で敵に立ち向かう意気込みを常に彼は抱いていた。たとえ、それが自分より格上の実力を有する者であろうと、ロイスは躊躇なく剣を抜いて立ち向かう意志を固めていた。
だが、そのアイリスに脅威をもたらしかねない存在として立ちはだかったのが、あろうことか忠誠を誓った国王と隊長として敬意を払うロディルだったため、ロイスの心は本人が思う以上に動揺していた。
アイリスを救い出したい一方、国王と隊長に反旗を翻す勇気が湧かず彼は苦悩した。
従順な騎士として想い人の彼女を救うか、もしくは国王と隊長たちに使役されるか…。
稀覯ともいえる特殊な状況ゆえに、ロイスはこれまで出くわしたことのない究極の板挟みにさいなまれることになってしまった。
「騎士団には志願して入ったのか?」
と、浦辺に尋ねられ悶々としていたロイスは我に返った。
「そうだ。幼少期から憧れを抱いていたし、オスニエルの城に住まわせてもらっている恩返しも兼ねて、陛下に尽くそうと思い立ったんだ。…それに、アイリスさまをこの手で守りたかったから」
「生まれは?」
「ここから馬車を使っても二日はかかる辺鄙な田舎村だ」
「この国にはどうして?」
「オレの過去をほじくってどうするつもりだ?」
「別にどうもしないよ。仕事柄聞いてみたくなっただけだから、不快に思ったならこれ以上は聞かない」
と、浦辺はすまなそうに手を上げた。
ロイスは仕方なさそうにフゥ…と吐息すると、遠い過去を懐かしむように薄暗い天井を見上げた。
「今も言ったように、オレが生まれた村はここから馬車で二日はかかるかなり遠い場所にある。そこでオレは騎士の父と心優しい母の元に生まれ、貧しいながらも幸せに暮らしていた。ところがあるとき、女中のフローラーが馬車に乗って村に訪れたんだ。村へ来た彼女はどこにも立ち寄ることなく、オレたちの所へ来た。…そして、両親は彼女にオレを託したんだ」
「託したって…。養子に出されたのか?」
「そうじゃない」
「それじゃあ、どうして彼女にキミを?」
「それは今でも分からないし、両親とどんな関係だったのかも検討が付かない。ただ、別れ際に母親が悲しそうな表情でオレを抱き締めたから、やむを得ない事情によるものとだけは察せたよ」
ロイスは、記憶の片隅に収めていた当時を振り返った。
フローラーとともに村を離れる際、父親は無言だったが彼の頭に手を乗せ「元気でな」と表情で励まし、母親は二度と叶わぬ再会を嘆くように力を込めて幼い彼を抱き締めた。
フローラーの横に座りながら背後を振り返ると、両親はずっと馬車の後ろ姿を見届けていた。互いに誰か判断が付かないほどの距離まで離れても、両親は馬車が見えなくなるまでその場を動かずにいたのを、ロイスは今でもよく覚えていた。
「馬車に二日間揺られ、オレはグリンメル王国に足を踏み入れた。貧困層で占められていた集落で育ったオレにとって、国王が統治する王国はまさに別世界だった。要塞を彷彿とさせるレンガの建物、女性や子どもたちのハツラツとした笑い声、覇気に満ちた露天商の掛け声が溢れる街並みだけでオレは虜になったのに、到着してすぐ連れられたのが陛下のいるオスニエルの高貴な城だったから開いた口が塞がらなかった。フローラーは陛下にオレを紹介した後、ご令嬢のアイリスさまと引き合わせたんだ。そのときになって、母親の病死で寂しさを募らせた彼女の遊び相手になるため、オレは城に招かれたと知ったんだ」
「それじゃあ、彼女と知り合って随分と長いんだな」
「まあな。幼い頃からいつもそばにいたから、アイリスさまは未だにオレを騎士としてではなく、幼馴染みとして接するんだ。城にいる間も、彼女は時折オレの所へ来ては他愛のない話をしたり、からかったりして楽しんでいる。それが気に入らない隊長からうつつを抜かすなと叱責を受けると、彼女は輪に入ってなだめてくれた。それでも、暇さえあれば性懲りもなくオレの所へ寄って来ては、あの可愛らしい童顔でこれ以上ないほどの笑みを向けるんだ。ホントに自由奔放なお嬢さまだよ」
と、ロイスはこぼしつつも口元は嬉しそうにほころんでいた。
静寂に支配された地下牢でパチパチと切なげなメロディを奏でる松明の炎をボンヤリと見つめながら、ロイスは物語の続きを語るかのように再び口を開いた。
「騎士団に入隊する機会は思いがけない形で舞い降りた。ある夜、アイリスさまの就寝を見計らった一人の騎士が、彼女の部屋に忍び込んだんだ。欲情した騎士に襲われ、彼女は大きな悲鳴を上げた。駆け付けたオレが騎士を引きはがすと、そいつは剣を抜いて斬りかかってきた。オレは無我夢中でそいつから剣を奪い取ると、それで相手の喉元を突き刺した。鮮血が迸る王女の部屋でオレが立ち尽くしていると、ロディル隊長が入って来て問い詰めた。
興奮のあまり声が出せないオレに代わって、アイリスさまが事の経緯を説明してくれたんだ。後日、オレは隊長から『騎士団に入らないか?』と誘われた。恐らく死んだ騎士の穴埋めのつもりだったんだろうけど、オレは躊躇なく首を縦に振ったよ。陛下への忠誠を形として示したかったのもあるが、なによりアイリスさまを危険から守りたかったからだ。その使命感を旨にオレは騎士団に入隊したが、それが苦痛の始まりだった」
「よくある新人へのいびりか?」
「そんなのはまだ生やさしい方だよ。あのとき、隊長に連れられて年上の隊員たちがいる控室に入った瞬間、彼らは嫌悪と憎悪をないまぜた顔でオレを迎えたんだ。本来、憲兵騎士団に属するためには隊長から課せられる試験をクリアするのが条件だったが、アイリスさまの一件で推薦されたオレは無試験の一足飛びで入隊した。きっと、それが気に食わなかったんだろう」
「でも、推薦したのは隊長なんだろう。彼はなにもしてくれなかったのか?」
「…その隊長ですら、彼らと同じ表情でオレを見つめていたんだ。そこで、オレはようやく気付いたよ。隊長がよそ者のオレを虐げる目的でスカウトしたとね」
「あの男のやりそうなことだな」
と、浦辺は吐き捨てた。
「途方もない絶望感と疎外感が全身を駆け巡ったよ。でも、気を取り直したオレは委縮する心を奮い立たせて名を名乗ってから、騎士として誠心誠意尽くす所存だと宣言した。それがあってから、先輩の騎士たちはオレを仲間として認めてくれたんだ」
「その状況で勇気を振り絞れたのはたいしたものだよ」
「………」
「ロイス?」
「…いや、両親以外の人に褒められたのは数年ぶりだったから、なんかくすぐったくなって」
「王女には?」
「褒められるより慰められることの方が多かったな」
と、ロイスはおかしそうに苦笑した。
「堅苦しいときより、今の方がいい顔してるよ」
「よせよ。…そういえば、アイリスさまにも同じことを言われたっけ」
「それは、彼女がキミのことを想っているのさ」
「そんなことは…」
赤みを帯びたロイスの顔を松明の炎がより赤く染める。
「素直になれよ。キミもアイリスのことが好きなんだろう?」
「………」
ロイスは火照った顔を冷ますように額を鉄格子に当てた。心もとないにも関わらず、それだけで顔全体の熱が冷めたような気がした。
かすかに高鳴りつつあった胸の鼓動が収まったところで、ロイスはつぶやくように口を開いた。
「いつも思っているんだ。あんな状況で声を出せるほどの勇気が振り絞れたのは、彼女の存在があったからこそだって。彼女を守りたい…その意志なかったら、オレはあの場で挫折していたかもしれない」
「だったら、もう悩むことなんてないじゃないか」
「え?」
「分かっているんだ。キミが未だに国王とロディルに従うべきかどうかで悩んでいるって」
「………」
「ロディルという男は、精神的にキミを追い詰める目的で騎士団に誘ったんだろう。そんな性悪な男にこれ以上従う意味がどこにある? 無論、そいつと結託して裏事業に手を染める国王にも従う理由があるかと聞かれたら、ボクはないとしか思わない。キミを騎士道の道へ誘うきっかけを与えたのは、ほかならぬアイリスなんだ。
だったら、一途に思う彼女のために尽くすのが正解じゃないかな。昔、聞いた言葉に『男はついていく人で決まる』って言葉があってね。寄り添う相手によって、自分という存在意義を見いだすことが出来るんだ。キミがついていくべき人はただ一人、心の底から想いを寄せているアイリスじゃないのか?」
「アイリスについて行く…」
ポツリとつぶやくロイスに浦辺は苦笑を浮かべた。
「キザなことを言ったけど、今の言葉はーー」
と、浦辺は言いかけた途端に激しく咳込み口に手をやった。
「ウラベ!」
慌てて駆け寄ったロイスはハッとした。
浦辺の手のひらが血で赤く染まっていたからだ。
ロイスが呆然とする中、浦辺は再び咳込み吐血した。
床に落ちた血を見て我に返ったロイスは、浦辺に肩を貸して立ち上がらせた。
気力を失いつつある浦辺を運んで、ベッドの上に横たわらせる。
横になってもなお、浦辺は苦しそうに咳込みながら体を上下に揺らした。
「ウラベ、おい、しっかりしろッ」
ロイスが呼びかけるも、浦辺はただ咳をする以外反応を見せなかった。
「クソ! どうしたらいいんだ…」
ロイスが困惑顔を浮かべながら途方に暮れたとき、地下牢の扉が開く音が聞こえた。
ハッとしたロイスの顔からスーッと血の気が引いた。アイリスの処刑を終えた国王たちの魔の手が、ついに自分たちに降りかかってきたと思ったからだ。
しかし、現れたのは国王と隊長ではなく、閉まる本棚から間一髪抜け出したテオだった。
〈ごめん、ウラベ。待たせたけど助けに…って、どうしたの?!〉
テオはベッドに横たわる浦辺を見て血相を変えてから、そばに立っているロイスを睨んだ。
〈なにをしたんだッ〉
「誤解するな、オレはなにもしていない」
〈ウソを吐くな。さっきまでボクたちのこと全然信じなかったくせに。あいつらの仲間だからウラベにひどいことをしたんだろ?〉
「だったら、どうしてオレまでここに閉じ込められているんだ?」
〈………〉
「さっきのことは謝る。だから、彼を…ウラベを助けてやってくれ。彼はキミが助けに来るのを信じてずっと耐えていたんだ。頼む」
と、ロイスは必死に訴えた。
切羽詰まった様子のロイスを見てもテオは半信半疑だったが、ベッドの上で苦悶の表情を浮かべている浦辺を放ってはおけず、魔法で鉄格子の扉を開錠すると中へ入った。
テオは横目でロイスを警戒しつつ浦辺に近付き、彼の名を何度も呼んだ。
しかし、テオの呼びかけにも応じる気配はなかった。
〈なにをされたの?〉
「魔導士のレインに侵蝕魔法をかけられたんだ。それほど時間は経っていないが、さっきよりもあきらかに衰弱している。魔法の力が着実に進行しているみたいだ」
〈父さんが言ってた。侵蝕魔法を人間が受けた場合、その日のうちに命を落とすって〉
「なんとか助けられないか?」
〈もちろん、助けるさ〉
テオはベッドに前足を乗せて立つと、絶えず咳を繰り返しながら震える浦辺の胸元に顎を乗せた。
そして目を閉じ、囁やくように詠唱魔法を試みた。
肌寒い冷気に包まれた地下牢の空気に一瞬わずかな温もりが帯び、まるで深い森の中にいるかのような爽やかな風がどこからともなく吹き始めた。
やがて、浦辺の口元と手に付着した血がまぶしいほどに光り輝いた。
ロイスが見守る中、血痕は跡形もなく消え憔悴していた浦辺の表情も元の穏やかな顔に戻った。
テオがベッドから下りると、浦辺はゆっくりと目を開いた。
「大丈夫か、ウラベ」
「…ああ、もう平気だ」
ロイスの手を借り、浦辺はベッドから起き上がった。
「テオ、ありがとう。来てくれると信じていたよ」
〈もう手遅れかと思ってドキドキしたけど、間に合ってよかった〉
テオは安堵の息を漏らして浦辺にすり寄った。
ロイスもホッとすると、二人の前で深々と頭を下げた。
「二人とも、すまなかった。あのとき、必死の説得も聞かず疑ったばかりにこんなことになってしまって、慚愧にたえない思いだ。許してくれ」
〈ホントだよ。最初から信じていればウラベだってこんな目にーー〉
「テオ、もういいんだ」
と、噛み付くテオを浦辺は制した。
「さっきも言ったけど、キミは騎士として任務を全うしただけだ。当然の行いだから、咎めるつもりなんてない。それに、さっきボクが血を吐いたときは心配してくれたしね」
〈そうなの?〉
「そうだよ、テオ。彼はもう味方だ。だから、許してやろう」
〈ウラベがそう言うなら…〉
と、テオは仕方なさそうに言った。
「ありがとう。…それで、これからどうする?」
「もちろん、アイリスを助け出す」
「でも、彼女はきっともう…」
と、ロイスは表情を曇らせた。
〈それなら心配いらないよ。さっき、アイリスがロディルたちに連れられて部屋から出て来るのを柱に隠れながら見たから。どこへ行ったかは、ボクがニオイを辿ればすぐ分かるよ〉
「だけど、オレたちが行けば隊長は必ず妨害するはずだ」
「だろうね」
「…まさか、本当に隊長と一戦をまじえるつもりなのか?」
恐る恐る聞くロイスに浦辺は躊躇なく頷いた。
「相手の実力がどれほどかよく知らないけど、キミがそこまで恐れるあたり確かに凄腕なんだろう。だからと言って、このまま引き下がるわけにはいかない。アイリスを救出しなきゃならないし、無鉄砲な自分は果たし状を叩き付けてしまったからね。今さら後には引けない」
「でも、魔導士のレインはどうする? ヤツは魔術を駆使するんだぞ」
〈それならボクに任せて。攻撃魔法は正直自信がないけど、守護魔法でアイリスを守ることは出来る〉
「任せて大丈夫か?」
〈もちろん!〉
と、テオは胸を張って言った。
「それじゃあ、決まりだ。ボクはロディルをなんとかするから、ロイスはテオと協力してアイリスの救出に入ってくれ」
と、言う浦辺にロイスはしばらく考えてから首を振った。
「アイリスはこの子だけに任せて大丈夫だろう。オレはウラベに手を貸すよ」
「いいのか? 以前まで上司だった男と闘うことになるんだぞ」
「だからさ。前までの惨めな自分を断ち切る意味も込めて隊長…いや、ロディルとは決着を付けたいんだ。テオ、いいよね?」
〈ボクはいいよ。一人でだって、アイリスを守ってみせる〉
と、テオも引き締まった顔で頷いた。
勇ましい面々だな、と浦辺は心強さを抱きながら闘志を燃やした。
「…ところで、さっきなにを言いかけたんだ?」
と、ロイスが思い出したように聞いた。
「『男はついて行く人で決まる』って言葉かい?」
「そう、それ。その言葉はナントカと言いかけただろう?」
「あれは、好きな映画からちょっと引用して…」
「〈エイガ?〉」
ロイスとテオがともに首を傾げた。
「…まあ、今はいいじゃないか。それより、急ごう」
と、浦辺は頭をかいてから二人を急き立てて地下牢を出た。




