表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

2話「目つきが悪いせいで、また、職務質問された件について」


「……だから、俺は何もしてないって言ってんだろ」


 朝7時20分。

 駅前のパン屋の前で、塩田しおた りくは腕を組み、ため息をついていた。


 その目の前で、

 制服の警察官が2人。

 しかもそのうちの1人が、見覚えありすぎる顔。


「ほう? じゃあ、なぜ朝っぱらから女子高生を尾行していた? …お兄ちゃん、許しませんよ?」


「いや、ただ隣に住んでるだけだって。毎日一緒に登校してるだけ」


「「だけ」で、毎日一緒に登校する理由にはならないでしょ。ふむ、そろそろGPSでもつけるべきか…」


 陸はその場で頭を抱える。

 


「夜空さん、あなた職権乱用って言葉知ってる?」


「家族の安全を守るのが警察の義務だからな」


「じゃあもう……妹から離れろよ」


「いや、それは無理だ(即答)」

 


 この男、夜空よぞら 優斗ゆうと

 美来みくの兄にして、現在は実家の近くの警察署に勤めている。

 もともとは県庁勤務だったエリート警官だが、「妹と距離があるとか死ぬ」と言って、辞表片手に上司を脅し、優秀だった為、仕方なく、地元へ戻ってきたという伝説を持つ。


 しかもなぜか、陸にだけ異常な敵意を燃やしている。


「ふぅ……今日も無事、陸の身辺調査終了。」


「それ言っちゃってるよね!? 公私混同が過ぎるんだけど!?」


 そのとき、


「おはよう、陸。あれ……お兄ちゃんまた?」


 やわらかな声と共に現れたのは、制服姿の少女。

 長い黒髪をふんわり結び、ほんのり甘い香りが風に乗って漂う。

 


 夜空よぞら 美来みく

 この町の高校に通う、2年生。

 通称「天使」。


 理由は簡単で、ただそこに笑顔があるだけで、世界がちょっと優しくなる気がするからだ。


「お兄ちゃん……また陸に絡んだの?」


「誤解だ、美来。これはあくまで正当な警察の職務だ。犯罪の匂いがしたら、動く。それがプロというもの」


「……で、何の犯罪?」


「……妹に近づきすぎ罪」


「はいはい、もう行こ、陸」


 美来が手を引いて歩き出すと、陸も慣れた様子でついていく。

 

 背後では、優斗が小さく「妹を守るため、俺は今日も闘う……!」とつぶやいていた。


「……毎朝これ、ほんとどうにかしてくれ」


「えへへ、でも私、陸と一緒に登校するの楽しいよ?」


 にこ、と笑う美来に、陸は言葉を詰まらせた。


 ……こいつが無自覚で天使なところ、本気で困る。


(だから誤解されんだろ、俺)


 そんなことを思いながら、二人は歩き出す。

 いつも通りの朝。

 だけど、どこかほんのり甘くて、にぎやかで。


 今日もまた、天使と悪魔の仲良しな一日が始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ