19話「揺れる心と真実の扉」
誘拐騒動の混乱が収まった翌日、優斗は警察署で重い空気の中、机に向かっていた。何度も未来の無事を確認し安心したはずなのに、彼の心はまだ落ち着かなかった。
「こんなこと、二度と起こさせてはいけない……」
彼の胸に去来するのは、兄としての責任感と、警察官としての使命感。だが、同時に苛立ちも感じていた。
「未来が勝手に出かけて、どれだけみんなに迷惑かけてるんだ……」
優斗の頭には、未来が祖父母と過ごす間に起きた小さな出来事や、学校での噂話がぐるぐると巡っていた。
一方、学校では未来が姿を見せたことで騒動は一段落したものの、噂話はまだ尾を引いていた。
「未来って本当に天使みたいに優しいけど、時々無鉄砲なんだよね」
「そうそう、あの時の騒ぎ、まじで大変だった」
そんな声を聞くたびに、未来は胸の奥が少し痛くなった。
その日の放課後、優斗は未来と屋上で話をした。
「美来、今回のことで本当に心配したんだぞ」
「うん……ごめんね、優斗兄ちゃん。でも、あの時は祖父母と一緒にいただけで、危ないことなんてなかったよ」
未来の穏やかな笑顔に、優斗の気持ちは少し和らいだ。
「でも、これからはちゃんと連絡を取り合うんだ。何かあったらすぐ知らせてくれ」
「わかった!」
その時、校舎の廊下から陸と真白が声をかけた。
「お疲れさま。美来、大丈夫だったみたいだね」
「うん、無事だったよ」
みんなで笑い合うその光景は、まるで何事もなかったかのようだった。
しかし、優斗の心の奥底にはまだ一抹の不安が残っていた。
「これからも、家族みんなで守っていくんだ」
そう自分に言い聞かせながら、彼は未来を見守り続けることを誓った。




