16話「消えた美来と優斗の焦り」
夕暮れが迫る駅前は、帰宅する人々の波でざわめいていた。優斗は人混みをかき分けながら、いつもならどこか穏やかで温かいその空気の中で、ただひとり冷たい不安に包まれていた。
「美来が……いない」
スマホの画面をじっと見つめ、繰り返し名前をつぶやく優斗の目は、いつもなら冷静さを失わない警察官とは思えぬほど血走っていた。朝、未来はいつも通り家を出て学校へ向かい、午前の授業を普通に受けていた。だが、午後の終わりに未来の姿が見えなくなったのだ。携帯にかけても出ない。帰りの電車にも乗っていない。何度も何度も連絡を試みるが、応答はない。
優斗は全身の血の気が引くような思いを感じながらも、必死に冷静さを保とうとしていた。警察官としての経験があるとはいえ、家族のこととなると理性を保つのは難しい。
「落ち着け、まずは情報を集めるんだ」
彼は通報用の連絡先に電話をかけ、同僚に協力を求めるとともに、未来の学校の担任にも連絡を入れた。担任の声は、予想した通り困惑と心配で震えていた。
「午後の授業の後、美来さんは教室にいませんでしたか?」
「いいえ、最後に見たのは放課後の掃除の時間で、その後は……」
声は途切れがちだった。
優斗はその言葉にますます胸が締め付けられた。美来はどこに行ってしまったのか。連絡がつかないまま時間が経つほど、彼の不安は膨らみ続ける。
学校の屋上では、真白、瑠美、そしてクラスの友人たちが集まっていた。みんなの顔には心配がにじみ出ている。
「美来ちゃん、どこにいるんだろう……」
真白が呟く。瑠美は無言で下を見つめ、手をぎゅっと握りしめていた。
「誘拐とか、そんなことないよね……?」
不安が言葉となって漏れる。友人たちは口々に未来の安否を心配し、情報を交換していた。
優斗は駅のロータリーを何度も行き来しながら、過ぎ去る車のライトや通行人の顔をじっと見つめていた。未来の姿がどこにも見当たらない。彼女が今どこで何をしているのか。想像するだけで胸が締め付けられる。
「美来……必ず見つける」
彼は何度も自分に言い聞かせた。警察官としての使命でもあるが、何よりも家族の一員としての強い決意だった。
その日の夜、優斗は自宅に戻るとすぐに美来の部屋を訪れた。未来の机の上には、まだ開かれたままの教科書と、美来が好きだったぬいぐるみが置かれている。未来がここにいる気配が消えたことを実感し、胸が熱く締め付けられた。
「必ず見つける」
優斗は決意を新たにし、翌日の捜索に備えて資料を調べ始めた。未来の学校の友人、先生、近隣住民の情報を集め、警察に届け出た失踪者の報告も再確認する。どんな小さな手がかりも見逃さないために。
そんな中、未来の祖父母が未来を連れて買い物に出かけていた事実はまだ知られていなかった。彼らは、未来の親が留守中のため、孫の面倒を見るために数日間預かっていたのだ。しかし連絡が取れていなかったため、誤解が重なり大騒動へと発展してしまうのだった――。




