14話「受験戦線異状アリ!?従姉妹コンビ、一時撤退宣言!」
朝の昇降口ーー
「ちょっと聞いてよ、りっくん……!」
バンッ!と勢いよく昇降口の扉を開けて飛び込んできたのは、私立制服の小悪魔・塩田瑠美。
そのすぐ後ろから、電車の遅延と戦ってきた少女・白間真白が、肩で息をしながら到着する。
「はぁ、はぁ……やばい……受験がマジで……シャレにならんかも……」
「え? なに?今さら?」と陸と美来。
「今さらってなに!? 真白ちゃん、塾の模試で英語の点数、四捨五入したら5点だよ!?」
「え、それ普通に四捨五入の意味ないやつやん」
「でもリスニングは解いたし!」
「黙っててくれ真白……マジで」
真白は床に突っ伏した。
屋上に移動した一行。今日のお昼も、屋上には天使の笑顔と地獄の弁当攻防戦が広がっている――はずだった。
がーー
「……今日は、お弁当、ないの?」
美来がぽつりと聞く。
「うん……ちょっと、塾が夕方からあるから、その準備とかでさ」
瑠美が笑顔で言ったその言葉が、ふわっと風に乗って流れた。
「私も。電車で移動してきてる時間がもったいないって、先生に怒られちゃって。来週からは、昼休み来るのもやめて、って……」
「……そっか」
美来の笑顔が、ほんの少しだけ翳る。
「でね、りっくん……」
瑠美がふっと距離を詰める。
「私たち、しばらく来れないから、チューの予約しとこうかなって――」
「予約制かよ」
「え!? じゃあ私もなにか言っとく!!」
真白が慌てて立ち上がると、風で飛びそうになったプリントを必死で押さえながら叫ぶ。
「りっくん!! 受かったらまた、ここでお昼一緒してね!!絶対!!」
「……ああ。お前ら、受かってから言えよな」
その言葉に、2人はどこか吹っ切れたような笑顔で頷いた。
「バレンタインで気合い入れすぎたから、神様に“1ヶ月バチ当てます”って言われたんじゃないかなぁ……」
「それ自業自得じゃない?」と美来が突っ込む。
「じゃあまたね、美来ちゃん、りっくん!!」
「「受かったら、また来るから!!」」
2人は勢いよく屋上のドアを開けて、手を振って去っていった。
静かになった屋上。
「……ちょっと、さみしくなるね」
「うん」
2人で黙ってお弁当を食べながら、どこか穴が空いたような時間が流れた。
が――
「っていうか、今日のおかず、いつもよりちょっと豪華だよな」
「えっ、えへへ……その、2人がしばらく来れないから、ちょっとだけ頑張ってみた、の」
「……そうか」
陸は、おかずの卵焼きを一口。
そしてふっと笑う。
「俺、今のくらいがちょうどいいかもな」
「え……?」
「騒がしいのも悪くねぇけど。こうして、美来と2人きりってのも、落ち着く」
「~~~~っ」
美来の顔が、冬の冷たい風と関係なく、真っ赤に染まる。
「……ちょ、ちょっとだけ照れるから、そういうのは……反則だよ……」
「反則?じゃあ、俺退場?」
「ち、違うっ!! あの、その……ベンチ!ベンチの下の雪、払ってないから退場!」
「雑な追い出し方だな……」
――従姉妹たちの去った静かな屋上で、
少しずつ距離を縮めていく、天使と悪魔のふたり。




