表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

14話「受験戦線異状アリ!?従姉妹コンビ、一時撤退宣言!」



 朝の昇降口ーー


「ちょっと聞いてよ、りっくん……!」


 バンッ!と勢いよく昇降口の扉を開けて飛び込んできたのは、私立制服の小悪魔・塩田瑠美。


 そのすぐ後ろから、電車の遅延と戦ってきた少女・白間真白が、肩で息をしながら到着する。


「はぁ、はぁ……やばい……受験がマジで……シャレにならんかも……」


「え? なに?今さら?」と陸と美来。


「今さらってなに!? 真白ちゃん、塾の模試で英語の点数、四捨五入したら5点だよ!?」


「え、それ普通に四捨五入の意味ないやつやん」


「でもリスニングは解いたし!」


「黙っててくれ真白……マジで」


 真白は床に突っ伏した。


 屋上に移動した一行。今日のお昼も、屋上には天使の笑顔と地獄の弁当攻防戦が広がっている――はずだった。


 がーー


「……今日は、お弁当、ないの?」


 美来がぽつりと聞く。


「うん……ちょっと、塾が夕方からあるから、その準備とかでさ」


 瑠美が笑顔で言ったその言葉が、ふわっと風に乗って流れた。


「私も。電車で移動してきてる時間がもったいないって、先生に怒られちゃって。来週からは、昼休み来るのもやめて、って……」


「……そっか」


 美来の笑顔が、ほんの少しだけ翳る。


「でね、りっくん……」


 瑠美がふっと距離を詰める。


「私たち、しばらく来れないから、チューの予約しとこうかなって――」


「予約制かよ」


「え!? じゃあ私もなにか言っとく!!」


 真白が慌てて立ち上がると、風で飛びそうになったプリントを必死で押さえながら叫ぶ。


「りっくん!! 受かったらまた、ここでお昼一緒してね!!絶対!!」


「……ああ。お前ら、受かってから言えよな」


 その言葉に、2人はどこか吹っ切れたような笑顔で頷いた。


「バレンタインで気合い入れすぎたから、神様に“1ヶ月バチ当てます”って言われたんじゃないかなぁ……」

「それ自業自得じゃない?」と美来が突っ込む。


「じゃあまたね、美来ちゃん、りっくん!!」


「「受かったら、また来るから!!」」


 2人は勢いよく屋上のドアを開けて、手を振って去っていった。


 静かになった屋上。


「……ちょっと、さみしくなるね」


「うん」


 2人で黙ってお弁当を食べながら、どこか穴が空いたような時間が流れた。


 が――


「っていうか、今日のおかず、いつもよりちょっと豪華だよな」


「えっ、えへへ……その、2人がしばらく来れないから、ちょっとだけ頑張ってみた、の」


「……そうか」


 陸は、おかずの卵焼きを一口。


 そしてふっと笑う。


「俺、今のくらいがちょうどいいかもな」


「え……?」


「騒がしいのも悪くねぇけど。こうして、美来と2人きりってのも、落ち着く」


「~~~~っ」


 美来の顔が、冬の冷たい風と関係なく、真っ赤に染まる。


「……ちょ、ちょっとだけ照れるから、そういうのは……反則だよ……」


「反則?じゃあ、俺退場?」


「ち、違うっ!! あの、その……ベンチ!ベンチの下の雪、払ってないから退場!」


「雑な追い出し方だな……」


 ――従姉妹たちの去った静かな屋上で、

 少しずつ距離を縮めていく、天使と悪魔のふたり。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ