13話「従姉妹襲来リターンズ!バレンタイン・リベンジ大作戦!」
2月14日ーー
世間では“愛”とか“勇気”とか“糖分過多”が飛び交う、アレな日である。
校門前ではすでに騒がしい声が飛び交っていた。
「おい、塩田のやつ、チョコ50個は軽く超えてるってマジかよ……」
「なにそれ怖い」
「いや、返してくれるとき全部“同量の現金”だから、逆にありがたいって話」
「カカオ=通貨かよ」
――そんな中、今日も“彼女”はやってきた。
「お兄ちゃーん♡」
「……って誰がお兄ちゃんだ瑠美。職員室送りにされたいのか」
「えー、りっくん冷たいぃ〜。せっかくチョコ持ってきたのにぃ?」
にっこり笑う小悪魔――塩田瑠美。
私立中に通う中3、陸の母方の従姉妹、言動すべてが混乱を招く。
そのすぐ後ろからは、もう一人の従姉妹、白間真白がフーフー言いながらやってきた。
「はぁ……っ、電車遅れたっての!ほんとなんだからね!?りっくんのチョコが冷めちゃう……!」
「冷めてもチョコはチョコだと思うが」
「そういうことじゃないっ!!」
屋上でいつものように陸と美来が弁当を広げようとしていたとき、扉がガチャと開いた。
「お兄ちゃん(仮)!チョコ持ってきたーっ☆」
「りっくんっ!お弁当じゃなくてこれ食べてっ!!」
2人の少女がダッシュで突撃。
手にはそれぞれ――手作りのチョコレート。
「いや、校則……」
「わたし達、中学生なんで高校の校則関係ないでーす♡」
「屋上立入禁止……」
「職員室で校長先生に『チョコを渡す聖戦です』って伝えたら、なんか許してくれました♡」
「……うちの校長、たまに騎士団長みたいな顔するよね」と美来がぽそり。
「はい、じゃあ2人とも、一斉に渡すのは禁止ね」
「「なんで!!?」」
「バトルロイヤルになるだろ。落ち着け、まず順番を決めよう」
「え〜じゃあ私が先! ほらりっくん、あーん♡」
「いや手渡しでいいから」
「ちぇー。じゃあ食べてみて?」
陸が仕方なく口に入れると――
「ん。普通にうまい」
「やった♡」
すかさず真白が突っ込んできた。
「私も!見て!こっちはココア生チョコとホワイトチョコの2層!かわいい缶入りだよ!」
「……あ、うまい。普通に店に置けるレベルだな」
「そりゃそうでしょ!?あたしが夜なべして作ったんだから!!」
「中学生に夜なべはやめとけ」
そのやり取りを美来は隅っこでおにぎりをもふもふ食べながら、微妙な顔で眺めていた。
――そしてついに。
「じゃあ、わたしも……はい、これ」
美来はそっと差し出す。
可愛らしいラッピングに、ハート柄のリボン。
「手作り?」
「う、うん……ちょっとだけ失敗したけど……」
陸がそっと口に運ぶ。
「……」
「……ど、どう……?」
「……美味い」
「っ……」
頬がぽっと赤くなる美来。
その様子を見て、瑠美と真白が同時に叫んだ。
「この空気はズルいぃぃぃ!!」
「青春フィルターかかってるぅぅぅ!!」
「え、え、なになに!?私、なんかした!?」
「美来、マジで気づいてないの!?」と真白。
「え、えええ……?」
「りっくんがどれだけ君のチョコに特別な反応したか、分かってる!?」と瑠美。
「えええええええ!?」
美来は顔真っ赤にしてわたわた。
陸は少しだけ耳を赤くしながら、
「……まぁ、お前のは……手間かかってる感じが、してた」
「~~~っっ!!!」
美来は限界を迎えて、お弁当箱を手にして走り去った。
「ま、待って美来ーっ!!」と陸も慌てて後を追う。
「……やっぱこの2人、イベント全部持ってくよね」
「うん。完全に主人公とヒロイン」
ぽつんと残された真白と瑠美は、チョコの缶を握りしめながら肩を落とした。
でも、2人ともどこか笑っていた。
「まぁ……来年も来るか」
「うん。またリベンジしに来よう」




