10話「転校生と秘密の写真!?陸、美来の子供時代がバレる!?」
月曜日の朝ーー
2年B組の教室には、週初め独特のけだるい空気が流れていた。
それでも、先週の文化祭の余韻は色濃く残っており、話題に花を咲かせる生徒たちの表情はどこか明るい。
そんな空気の中、担任の先生が教壇に立つ。
「おはよう。今日はみんなに紹介したい生徒がいます。今週からこのクラスに入る転校生だ」
教室がざわめいた。
転校生。
この学期のタイミングで?
どういう事情?
誰?男子?女子?
可愛い?イケメン?タイプ?
生徒たちの視線が集中する中、ゆっくりと教室の扉が開いた。
「はじめまして。河白紗良です。よろしくお願いします」
スラリとした長身に、整った顔立ち。
長い黒髪を後ろでゆるく結び、制服も完璧な着こなし。
どこか浮世離れしたような雰囲気に、一瞬教室が静まり返る。
(えっ、モデルさん?女優?)
そんな空気が一瞬で流れたが、紗良はにっこり微笑んで、
「陸くん、久しぶり」
――その一言で、空気は完全に変わった。
「えっ……?」
「……誰?」
教室全体の目線が、一斉に陸へと向いた。
「……し、河白……紗良?」
陸は固まっていた。
美来も目を見開いたまま、言葉が出てこない。
「あれっ、覚えてない?小学校のとき、同じクラスだったじゃん。“いっしょに秘密基地つくった仲”なんだけどなぁ~?」
「う、うわ……マジか……」
「えっ、えっ!?小学校のとき!?しかも“秘密基地”!?」
騒然とする教室。
中でも最も反応が大きかったのは、もちろんこの2人
――
「な、なによその少女漫画展開はッ!!」
「りっくん!?えっ!?私が知らない過去が!?なんか出てきた!?」
真白と菜乃葉である。
なんでいる……
ーー
休み時間ーー
あまりに反応が大きかったため、白河紗良は注目の的になっていた。
だが、彼女はそれを楽しんでいる様子すらあった。
「やっぱりね、陸くんって昔から変わってないね。優しくて、ちょっと抜けてて、でも……大事なとこは見逃さない」
「ちょ、ちょっと待って。なんでそんな昔の話――てか、秘密基地って、もう忘れてたぞ俺」
「ふふ、私は覚えてたよ。あのときの約束もね」
「約束?」
教室の隅、美来はそのやりとりをじっと見つめていた。
(約束……? 子供のころの、陸の“特別”ってこと?)
心がざわつく。
さらに、休み時間の終わりぎわ――
紗良がポーチから、1枚の写真を取り出した。
「ほら、これ」
「うわ、マジか。懐かしすぎる……」
その写真には、小学生の陸と、長い髪をポニーテールにした少女――そしてもう1人、少し小柄な女の子が写っていた。
「これ……美来じゃね?」
「え?」
陸の言葉に、美来が歩み寄る。
そして、写真を見るなり、顔が一瞬で赤くなった。
「な、なにこれっ!?これ、私と陸……と、あなた……!?うそ、なんで……」
「私の宝物。ちゃんと、残してたんだよ」
紗良は微笑んだまま、すました様子で言う。
だが――
その場の空気はもう、穏やかではなかった。
「ちょっと待って。じゃあ紗良さんって、りっくんと昔からの知り合いで、美来先輩とも面識があって、それで……写真まで持ってるの!?」
真白が問い詰めるように言った。
「うん、そう。私、昔から陸くんのこと――大好きだったから」
その瞬間。
教室に「ざわっ」という空気が流れた。
ーー
放課後ーー
陸、美来、真白、菜乃葉の4人は、裏庭のベンチで小さな会議を開いていた。
「……で、あの子、何者?」
「いや、ただの小学校のクラスメイト……のはずなんだけどなぁ……」
「“のはず”ってなによ!」
「……正直、覚えてるような、覚えてないような」
美来は、まだ顔が赤いままだった。
「でも、確かに、私も覚えてる。昔、陸と一緒に遊んでた子。……でも、それが今、転校してきて、しかもあんなに堂々と“好きだった”とか言うなんて……」
「うぅぅ……新しい刺客登場しちゃったじゃん……真白、ピンチ……!」
「いや、お前はいつでもピンチじゃね?」
「うるさいっ!」
そのとき、美来がふとつぶやいた。
「……あの約束って、なんだったんだろう」
「え?」
「小学生のとき、私と陸、そして紗良の3人で……“なにか”を約束したって。
思い出せないけど、たぶん……それが全部の“始まり”だったんじゃないかな」
夕暮れの光が、4人を照らしていた。
静かに、しかし確実に、物語の“過去”が今へとつながっていく――。




