1話「プロローグなんです?」
――天使と悪魔の仲良し大作戦。
この物語は、現代日本。
どこにでもあるような地方都市の、どこにでもありそうな高校でのお話。
ただひとつ違うのは――
そこに、「天使」と「悪魔」がいた、ということ。
もっとも、実際に羽が生えていたり、地獄から来たわけではない。
天使みたいに優しくて、可愛くて、笑顔がまぶしすぎる女子高生、
夜空 美来。
悪魔みたいな目つきと、無表情で誰も近寄らせないオーラの持ち主、
塩田 陸。
この二人は、家が隣同士で、幼い頃からずっと一緒だった。
小学校も、中学校も、そして今は高校も。
なぜか進学先まで同じで、今では二人して「天使と悪魔が通う高校」と噂されている。
ただ、性格は真逆。
だけど不思議と一緒にいると落ち着く。
一緒に登校して、一緒に屋上でお昼ご飯を食べて、くだらないことで笑って、時々少しだけ胸が高鳴ったりして…
だけど、それは本人たちにはまだ“気づかれていない”。
「……別に、なんとも思ってねぇし」
「え、陸って……鈍感すぎじゃない?」
周囲はとっくに勘づいているのに、当の本人たちはまったくもって無自覚。
しかもこの二人、
日常がちょっとおかしい。
例えば、美来の兄は県庁勤務だった超エリート警察官だが、
「妹ストーカー容疑」で、陸を1日6回職務質問する。
たまに陸の従姉妹(中学生)が高校に突撃してきて、弁当を強奪したり。
もうひとりの従姉妹は、電車でお昼に現れて、「キスしたじゃん」と謎の供述をしてきたり。
あげくの果てには、3年間占い詐欺をして逃げ続けているババアが、
「運命の人は8人いる」とか言い出す始末である。
そんな中でも。
「おはよう、陸」
「……ん」
登校の朝、いつもと同じように隣を歩く二人
。
それはまるで、世界がちょっとやかましくても、二人だけは静かに進んでいくみたいな、そんな関係。
恋か友情か、境界線はまだ曖昧で。
だけど確かにそこには、二人にしかわからない特別な時間があって――
これは、
天使と悪魔のような幼なじみが、
笑って、怒って、時々ドキドキして、
ちょっぴり未来に近づいていくお話。
そう、これは――
『天使と悪魔の仲良し大作戦』、はじまりの物語。