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2-1 1つ目の飴

また、週に1度のお茶会の日がやってきた。


相変わらずの無表情で、

少しだけお菓子を食べるが、

美味しそうでも好きそうでもない。


「そう言えば、街に出かけたの」


「街に?」


「そう、新作の小説が出てるか、確認したくて」


「1人で行ったのか?」


「?そうよ」


「危険だ、次からは俺も行こう」


「大丈夫!街の中心しか行かないし、

 ちゃんと警備の人もいるわ、

 この国の治安がいいのは知っているでしょう?」


「しかし、危険な場所もある」


「確かに、横道の裏の裏まで行くと、

 ちょっと変わった人もいるかもしれないけど、

 そんな所行かないから!」


「本当だな?」


「本当よ」


私は首をこくこく振る。


「だいたい、同じ本好きの友人と一緒なのよ、

 ただ、この前は日が合わなかっただけ」


「できるだけ、友人とでかけて欲しい」


「そうね、その方が楽しいし、

 できるだけそうするわ」


しばらく、間を置いて尋ねる。


「ねえ、この中のお菓子では何が一番好き?」


今までこんな質問をした事がないので、

エリックはかなり驚いているようだった。


「どれも美味しい」


「どれもじゃなく、一番!」


「全部食べてないから決められない」


「うん!もう!」


私は少し怒った振りをする、すると。


「これは好きだ」


とアーモンドのクッキーを指さした。


「ええ、これね!」


私はそのクッキーを口に運ぶ。


「確かに美味しいわね、アーモンドが好きなの?」


「・・・まあ好きだが、特別という程ではない、

 と言うか今日はどうしたんだ?」


そうエリックが感じるのも無理がないと思う。


「私、もっとエリックの事を好きになる努力をしようと思って」


「俺を好きになる努力?」


私は頷く。


「一応家で決まった結婚だけど、

 やっぱり好き同士の方がいいじゃない?

 なら、私もエリックの事好きになった方が、

 いいんじゃないかと思って。

 とりあえず好きな物や嫌いな物を知る所から

 始めようと思ったの」


占い師のお婆さんのアドバイスだ、

相手に愛して欲しければ、私も好きにならないと。


そう思っていると、エリックが口元を抑えている。


「どうしたの?」


「いや、何もない・・・」


しかし、耳が少し赤いような・・・


私は嬉しくなって、そうだ!と飴を試してみる事にした。


「この前、この飴も手にいれたの、1つ食べるね」


「どうぞ」


そうして、占い師のお婆さんからもらった飴を口に含む。


『俺を好きになる努力?』


『ああ、もうメロメロだ』


ん?何か聞こえてくる?


ふと思って聞いてみる。


「ねえ、私の事好き?」


「もちろんだ」


『好きすぎる、もう堪らない!

 今日は特に俺を喜ばせてくれるな、

 いつも一緒に過ごせる時間は幸せだが、

 今、こんなに幸せなら結婚したらどうなるのだろう!』


やっぱり!口から出た言葉とは別に、

不思議な声が聞こえてくる。


この思っている事が分かる飴、本当だったんだ!


私は調子に乗って聞いてみる。


「私、可愛い?」


「もちろん」


『薄い茶色の髪はさらさらで撫でてみたいし、

 ぱっちりした緑の瞳は愛らしい、

 あの唇にキスをしたら柔らかいのだろうか・・・』


私はつい赤くなって、下を向いてしまう。


無表情の下で、こんな事考えているなんて・・・


でも、私の事が本当に好きなのか、

ずっともやもやしていた気持ちがすっと晴れた。


無表情なのも、なんとなく可愛く思えるのが不思議だ。


「いい夫婦になれるかもね」


「そのつもりだ」


『一生離す気はない、俺だけのものにして、

 ずっと閉じ込めておきたい』


閉じ込めるという言葉にぎょっとなって、

思わず言ってみる。


「年に2回ぐらいは劇に行きたいな」


「希望の演目があったら言ってくれ、チケットを取ろう」


うん、閉じ込めると言っても、

本当に閉じ込める訳ではなく、

ずっと傍に置きたい程って事ね。


「これからもよろしくお願いします」


こうして、晴れやかな笑顔で、初めてお茶会を終えた。

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