九つ数えたら
これは僕が、6歳の頃に体験した怖い話です。
僕は同級生の5人と小学校の校庭を借りてかくれんぼをして遊んでいました。
その時はY君が鬼…「いーち、にーい、さーん、よーん…」Y君の声が大きく響く。
「ごー、ろーく、なーな、はーち、きゅーう「もういいよー!」」と数えている中、知らない男の子の声が聞こえました。
僕は不思議に思いましたが、深くは考えずに校庭の端にある花壇に隠れた。
僕を含む5人はY君にあっさり見つかってしまい、次の鬼を決めようとしていましたが、Y君がまだ1人見つけていないと探し始めたのです。
僕たちは、Y君も入れて6人で遊んでいたことを伝えても、Y君は頑なに猛一人男の子がいたと言い張る。
すると、何かが走る足音が聞こえ、突然Y君が校庭を出て山の中へ走り出しました。
僕の住んでいた村には、とある2つの言い伝えがあります。
九は不吉な数字であること…そして、子供だけでは山の中には入ってはいけないということ。
ふと、それを思い出した僕たちは、Y君が危ないかもしれないと感じて後を追いかけました。
しばらく走っていると、真夏の16時だというのに辺りは真っ暗。
とても半袖では肌寒い気温でした。
息を切らして、後ろを振り向くと同級生4人がいない…Y君の姿も見えなくなっていました。
僕は走るのについて来れなくなってしまったのかと思い、1人でY君を探すことに。
「Yくーん!Yくーん!どこにいっちゃったのー!」と叫びながら暗い山の中を歩き回る。
すると「いーち…にーい…さーん…よーん…」とY君が数をかぞえる声が聞こえてきました。
その声を頼りに歩いていくと、Y君が何かに取り憑かれたようにボーッとしながら、人差し指で確認しながら何かの数をかぞえているのが見える。
「Y君!やめて!もういいよ!おうちに帰ろう!」僕はY君の腕を掴み、来た道を戻ろうと引っ張る。
しかし、Y君は石のような重さでびくともしない。
「ごー…ろーく…なーな…」「やめてよ…数えなくていいから!帰ろうってば!!」「はーち…きゅーう」
九と数えた途端、Y君が消えました。
僕の掴んでいた腕を残して。Y君が…消えました。
僕はパニックになって、Y君の腕を離し泣きじゃくりながら座り込む。
すると同級生4人と小学校の先生、母、祖母が駆けつけてくれました。
僕はY君が…Y君が…事の経緯を説明すると、「Yって誰だよ!5人で遊んでたのにもう1人いるっていなくなるから心配したんだぞ!」と言われ、思考が追いつかなくなり気絶してしまった。
ひとつ ふわりと しっぽがゆれる
ふたつ みちへと さそわれる
みっつ くらい やまのなか
と聞いた事のない歌が聴こえてきて、目を覚ますと自宅の布団の中でした。
隣には祖母がおり、小さな声でぶつぶつと歌っていました。
「あらあら…起きたかい…子供は七つまで神の子だからねぇ…可哀想にねぇ…。」
と僕に言い放ち、続きを歌い続けた。
よっつ かげが ふえたのさ
いつつ まわりを まわるかげ
むっつ うしろで わらってる
僕はその歌を聴きながら、また眠りについてしまった。
『九つの尻尾』
ひとつ ふわりと しっぽがゆれる
ふたつ みちへと さそわれる
みっつ くらい やまのなか
よっつ かげが ふえたのさ
いつつ まわりを まわるかげ
むっつ うしろで わらってる
ななつ ひかるめ こちらをみてる
やっつ ひびく わらいこえ
ここのつ かぞえた そのときに
しっぽに そっと つつまれた
ひとつ ふたつ かぞえたら
まっかな よるに まよいこむ