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水に沈むトンネル

当時、お付き合いをしていた彼氏とドライブデートをしていた時のことです。


星を見に行くために、山道を車で走っていると小さなトンネルが左側に見えました。

彼は「あー、これトンネル抜けると近道だな。」と言い、急に左折しトンネルの中へ。


そのトンネルは、軽自動車がギリギリ通れるような狭くて小さいトンネルです。

雨が降っている訳でもないのに、トンネルの中は湿気っていて、水が滴っていました。


トンネルの中を走っていくと、先にあかりは見えるのに全くトンネルを抜ける気配がありません。

車内でかけていた音楽は次第におかしくなり、ジジッ…ヴーッ…ジジジ…ザーーッとノイズまじりになっていきました。


私はその異様な空間にパニックになり、「ねぇ!近道って言ったじゃん…もう10分もトンネルの中だよっ!?」と声を荒らげました。

すると、彼は急にブレーキを踏み、私の方をゆっくり向くと「あはははは!あははは!大丈夫大丈夫、怖くないよ!」と狂ったように笑いかけてきた。


私は何かがおかしいと思い、車を降りようと急いでシートベルトを外す。

ふと前を見ると、車のボンネット辺りまで水が上がってきていました。

このままだと溺れ死ぬ…ドアも細身の女性がギリギリ通れるような隙間しか開かない。

早く彼氏を下ろさなければ。と彼氏を助けることばかりが頭に浮かぶ。


「ねぇ!早く出るよ!狭いけど私も引っ張るからっ!はやく!」と声をかけながら彼氏のシートベルトを外し、服を引っ張りながら彼氏を正気に戻そうとするも「あははははは!あはははは!みずだ!たのしいね!」目が一切笑っていないのに、あははと無機質な笑いを繰り返す。


気づいたら病院にいました。

長時間水に濡れていたのか、体の内側から寒かったのを覚えています。


母に聞いた話ですが、ドライブの途中左に曲がりきれずに川にそのまま落ちてしまったそうです。

私は何とか車の中から脱出し、近くにいた釣り人に救助されたようですが、彼氏は車と一緒に沈んでしまったそうです。


あの不気味な夢を思い出し、あとから調べてみたところ、あの山はむかし飢饉で苦しんでいた村があり、その村人は人口を減らすための口実として、子供を山から川へ落とし、飢饉を救って欲しいと神に祈る風習があったそうです。



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