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第二話 「僕は今を心から好きだと思う」
僕は猿なんだそうだ。そして、ともすれば猿以下なんだそうだ。
「人の真似ばかりでオリジナルが無い」らしい。
足と手が冷たい。それに比べて顔は暑くて、鼻と目は痛い。
僕は何も持たずに生まれてきてしまった。
人生最大の忘れものだろう。取り返しのつかないミスとはこのことだろう。
最初に僕を猿と呼んだ人が、何を持って生まれてきたかは知らないけれど、きっと、何かを持って生まれてきたんだろう。
そうだ、僕は何も持たずに生まれただけでなく、何も持てずに生きてきてしまったんだ。
暗くて涼しい公園では、頭がはっきりとしてくる。誰の声も聞こえないのはとても心地がいい。
今、思えば、
僕は誰かに似ていると言われたことはあるけれど、僕に似ている人の話は聞いたことがない。僕の真似をする人の話も聞いたことがない。
僕という人間は、世界に一人の人間だと思っていたけれど、どこにでも一人はいる人間だったんだ。
そんなことも分からずに、今まで、生きてきたんだなあ。
よく、頑張ったなあ。
瓶の中には3回分残っている。残しても、捨てられるだけだ。
朝が来ないように、もう、寝てしまおう。